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32歳アーティストが静岡で免許合宿に参加した体験談

大学進学とともに東京に上京してからはや14年。公共交通機関の発達した東京都心での暮らしで車が必要になる場面が極めて少なかったので免許をとらずに過ごしてきてしまったのですが、
8月から東北での仕事が始まる都合で急遽車の運転が必要になり、免許合宿に参加しました。

端的に言うと「めちゃくちゃ大変だったので二度とやりたくない」ですが、喉元すぎれば体験としては非常に面白かったです。

新型コロナの影響で都心型の生活形態から切り替えるのを検討するなかで、あらためて車の免許とることを検討している方もいらっしゃるかもしれないので、参考までに教習所の体験記を書き綴ります。

なお静岡豪雨の影響をくらい、予定通りに到着できない&卒業日が早々に延びるアクシデントがありました。不穏……。

禁酒令により奪われる自由

かなり自由度の高いフリーランス生活ももう5年目に突入した自分。朝起きる時間、寝る時間も自由、毎日の時間の使い方も自由、なんなら朝から酒も飲んじゃうぜ!!というフリーダム生活を過ごしておりましたが、
そんな自分にとって免許合宿所の第一印象は一言で言うと「自由が奪われた刑務所」でした。

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まず寮の内外でアルコール飲酒禁止なのがつらい・・・(寮生がコンビニでお酒買ってるの見つかると一発退校ルール。飲食店で飲むのはなぜかセーフ)
そして寮の廊下には監視カメラが張り巡らされています。

禁酒がつらすぎて、最初の頃は毎晩のように脱走していました。

普段自分がどれだけ恵まれた環境で過ごしていたのか痛感する日々でした。

(とはいえ、一週間が経過した頃にはそんな環境にもフツーに適応してきたので、人間はどんな環境にも慣れる生き物なのだと実感。住めば都とはよく言ったものです)

入学早々に「動く凶器」のハンドルを爆速で握らされて手汗& とにかく胃の痛くなる日々

免許合宿はとにかくスケジュールが詰め込まれているので、心の準備ができぬままどんどん実習が進んでいきました。入学してオリエンテーション受けて早々にいきなり実車をゴリゴリ自分で運転することになり青ざめる。

そして慣れない車の運転では教官に怒られる怒られる。30代フリーランスになると人から怒られる機会が本当に減るのですが、免許合宿だともれなく教官に怒られまくることができ、数年分ぐらい怒られた気がします……。
とはいえ事故を起こして人の命を奪ったり何億もの損害賠償をかかえることになるよりは怒られる方が全然マシなので、ありがたい気持ちもありました。

↑教官から怒られるたびに、池袋暴走事故のことを思い出して気を引き締めていた

試験前にゴリゴリしごかれてメンタル折られそうになった鬼教官が2人いたのですが、彼らには正直感謝しております(卒業前に感謝のコメントを書いたのも彼らだった)。キツく言われたことは絶対に忘れないため試験で大いに役立ったのと、現状できてないことを直視して自分を追い込むきっかけをもらえてありがたかった。

ただ優しくするだけが教育じゃないんだな〜、と学び&教えについて気付くことが多数。自分も講師として学生さんの作品のレビューをすることもあり基本「良いところを褒める」方針だったのですが、場合によってはビシビシとできてないところを指摘する方が本人のためになることもあるのかも、と気付きました。社会人が学生側/教育される側を改めてやってみて学ぶことは多いです

「免許合宿はハーバード」作戦、そしてセンター試験ばりに緊張する仮免試験

最初は「高校生でも受かる運転免許の学科ぐらい楽勝やろ」と油断してましたが、そんな学科試験が意外と難しくて愕然。
入学してから仮免試験までのわずか一週間で学科テストに2回合格しないといけないノルマがあったので、後半に行くにつれ焦りはじめました。

「たかが免許合宿」と考えるとナメてかかって失敗するだろうと気づいたため、途中から「ここは免許合宿ではなくハーバード大だ」「ハーバードだから難しくて当たり前、猛勉強せねば」と思い込む作戦により学習モチベーションを高めました。ガラの悪い方が多めのハーバードです。

効率が悪いかもしれませんが、過去問をすべて解いて、間違えたところ/理解があやしいところを教科書でおさらいして周辺知識ごとEvernoteに全部タイピングする方法で頭に叩き込みました。実質1日の猛勉強でしたが効果を発揮し、アルコールで酔っ払った状態でもWEBテストで100点がとれるように。

合宿卒業予定日の翌日にテレビの生出演のお仕事があり、不合格&延泊は避けたかったので、前日は不安がマックス。コースを頭に叩き込むために場内マップを目視でスケッチしたりする有様。

当日は苦手なコースが当たっててヤバいと思いましたが、仮免前の授業でしごいてくれた鬼教官のおかげでドツボにはまることなく無事に運転終了。
合否が発表されるまでの生殺し感がすごかったですが、どうにか一発でストレート合格できました!

学科試験は無駄に100点をもぎとりました。仮免前が社会人になってから一番ガチ勉強した気がします。まじで大変だった……。

多様性のありすぎる合宿生(含・前科者)

教習所は本当に色んな人がいて面白かったです。東京のインテリ界隈がいう「多様性」と、免許合宿における「多様性」は別物だと感じました(東京のインテリ層がいう「多様性」ワールドに登場する人々には、ヤンキーとかは暗に含まれていない気がする)


「多様性のためには積極的な自己開示やオープンさが重要」というのがこれまで聞いてきた多様性に関しての言説でしたが、ガチで多様性がありすぎてバックグラウンドや価値観がバラバラな場合は逆に自己開示をしすぎず素性を探りすぎず、当たり障りのない会話が求められることを実感したりもしました。闇の多様性ライフハック。

さらに教習生活では干支ひとまわり分ぐらい年の離れている女の子たちと仲良くなり、一緒にケーキ食べに行ったり夕日に向かって走ったり花火したり大学生の夏休みのような日々が……。

また、なんと同じ寮で暮らしている教習生になんと前科者の方もいました。「人に偏見を持たないようにしなければ」というスタンスで参加していた合宿生活でしたが、とはいえ話してみて「この人なんかおかしいな」と危機察知したら逃げるのが正解と学んだ免許合宿でした。

一瞬で気力体力を持っていく高速教習

仮免に通ってからは学科も実践的な内容が多くなり、また路上教習がメインになったり応用的な授業が増えてやや楽しくなりました。
緊急救護など、複数の教習生でグループで取り組む授業も増えるので、教習生同士でゆるく連帯感も生まれるように。

路上での運転は思った以上に開放感があって楽しかったのですが、高速教習だけは手汗ビッシャビシャになって無言で運転しました。ハンドルを気まぐれにグルンと回すだけで死ねると考えると背汗。

帰還してからは、誇張ではなく生きている喜びを実感しました。

妙に寂しくなる卒業前の日々、そして釈放へ

あれだけ解放されたかったムショ(合宿)の日々も、残り3日ぐらいになってくると寂しい。教習所で謎のテーマソングが流れるたびにジーンとしてしまう解せぬ現象が発生しはじめました。

卒検当日にかぎって眠れずまさかの睡眠不足で危機的状況でしたが、レッドブル&緑茶&コーヒーをドーピングして眠気を吹き飛ばしてどうにか一発合格。縦列駐車も迷わず一発でキメました(これも卒検前日にしごいてくれた鬼教官のおかげ)。
蓋を開けてみれば仮免も卒検もストレート合格できて本当にホッとしました。

「ただの学生」として過ごす日々の新鮮さ

色々とあったハードな合宿生活でしたが、「アーティスト」という普段の肩書き抜きで、ただの免許学生として過ごす日々はかなり新鮮で面白かったです。

通常業務のように「登壇者と学生スタッフ」、「ゲスト講師と学生」みたいな立場で若い人と関わるのと、同じスタートラインで車の運転を学び始める学生同士という立場で関わるのは全然違うので、本当の意味でフラットな付き合いができた気がします(干支ひとまわりぶんぐらい離れた女の子たちとは、今でもちょくちょくLINEしてます)

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若い世代の女の子のInstagramの使い方、思い出づくりへの貪欲さ、エモさを重要視するメンタリティ、ビジュアルコミュニケーション力の高さなど、ずっと一緒にいることで肌感で学べることが色々あり、若者マーケティング的な視点でも気付くことが多かったです。
なんてことない日常風景からエモいインスタストーリーを大量に生産しており、みんなある意味でめちゃくちゃクリエイティブ。
「インスタ映え」をバカにしちゃいけないと思いました、そこには彼女らなりの美意識とプロ意識がある。

また、「自分には絶対にムリだと思っていた苦手分野が短期間でできるようになる」という体験も大人になってから非常に価値のあるものだったように感じます(若い時みたいな急成長、というのをめったに感じないので)

だいたいの人が若い時に取るであろう免許を大人になってから取るのはマイノリティですが、大人は大人なりにタフながらも学ぶことは多いので、もし興味があるなら参加してみるのをオススメします!

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