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円安&原油高は最悪の組み合わせ

円安&原油高は最悪の組み合わせ
 サウジアラビア石油施設への攻撃を受けて原油価格が急騰しています。直後、リスクオフムードにあわせて円高が進みましたが、その後はトランプ米大統領が日米貿易交渉の暫定合意を明らかにしたことなどを受けて円安・ドル高地合いに戻り、108円台に値を戻しています。そのため現状では「円安」と「原油高」が併存するような格好となっています。これは資源輸入国の日本経済にとってこれは最悪の組み合わせです。日本の政治・経済・社会的に円高は無条件で忌避されやすいものですが、本来、今回のようなリスクオフの原油高に対して円高で反応すること自体は「不幸中の幸い」という側面も認めるべきでしょう。

このまま円安・原油高が定着すると輸入物価経由で一般物価の上振れが続き、経済全体で交易条件の悪化を通じた実質所得環境の悪化が懸念される事態となります。もちろん円高で失われる企業収益との比較が必要になりますが、基本的にはヘッジの難しい原油高に即応して円高が進むことは日本経済にとって都合の良い部分もありました。

実質GDPと実質国内総所得(以下、実質GDI)の差(実質GDI-実質GDP)は交易利得・損失で表現されますが、原油価格が1バレル=100ドル付近にあった2011~2015年は交易損失が常態化していました。実質GDPの伸びに実質GDIのそれが追いついていない状態であり、実質所得環境の毀損を背景としていわゆる「実感なき景気回復」というフレーズが跋扈しやすい状況でした。円安と原油高の併存を放置することはその様な経済環境に近づくということであり、近々、消費増税を控えた日本にとっては尚の事、好ましい話ではないでしょう。

金融緩和では対応難しく
 日本の家計部門にとってリスクオフの円買いは原油高に対する自動安定化装置の機能も果たしていたはずですが、近年、直接投資の隆盛に応じてリスクオフの円買いが起きにくくなっていることがここで災いしたということかもしれません。こうした家計部門への悪影響を軽減するのは通貨安をもたらしやすい金融緩和ではなく拡張財政であると考えられるため、日銀よりも政府・財務省としての政策対応が注目される局面と評価できるでしょう。もっとも、世界経済の需要が減退する中、現下の原油高が恒常的なものになるかどうかは予断を持つべきではないという考え方もあります。早速、原油生産の水準が早期に回復するとの観測が浮上しており、原油先物市場などにおいては見通せる将来において安定を期待する兆しもあります。

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唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)

04年慶大経卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会(EU本部)などを経て08年10月より現職。著書に『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』。所属学会:日本EU学会。※コメントは個人的見解であり所属組織とは無関係です

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