“創造性”を引き出す職場に必要な6つの工夫。良いアイディアが出ないのは、人のせいではなく環境が十分ではないから。
皆さん、こんにちは。今回は「創造性を引き出す職場」について書かせていただきます。
テクノロジーがさらに進化・発展していく中、人間はAIにはできない創造的な思考や、斬新なアイディア力・発想力を持って、ビジネスに向き合っていくことが必要な時代になっていきます。
実際に、働く社員には創造性を遺憾無く発揮し、新しいアイディアや提案をどんどん創出してほしいと願う企業は多いはずです。様々な発想や視点が、これから起こる世の中の変化や市場環境の変化に、企業としてどの程度適応していけるかどうかを左右することになっていくからです。
働く人が創造力を発揮しながら、人・事業・組織の成長を実現していくためには、具体的にどのようなことに取り組んでいけば良いのでしょうか。
社員の創造性を引き出すために必要な職場づくりについて、考えていきます。
■働く人の創造性を引き出せない組織の特徴
引用した記事には、
とあります。仮に職場の中で、人間関係には問題がなくても、いろいろなアイディアを持ち寄って議論をしたり、一人ひとりの意見が引き出され尊重されるような場がないと、「自分が何を言っても無駄」「違う意見や考えは求められていない」「ただの労働力としてしか見られていない」などと、自ら考え、提案し、行動する機会そのものが失われてしまいます。その結果、職場での無力感や失望感を抱くことにつながり、働く意欲がどんどん低下していってしまうのです。
社員の創造性を引き出せない組織でよく起こるパターンを考えると、以下のようなものではないかと思います。
●ルールやマニュアルから解放し、とにかく“自由”な社風を作ろうとする
→社員を縛り付けるルールやマニュアルから解放すれば、社員が自発的に考え出し、自然と創造性が発揮されるだろうと考えるパターンです。もちろんルールやマニュアルで社員の行動を制限し過ぎているような自由度の低い組織では、いかに決められた通りに業務を遂行するかが求められるため、個人の工夫を生み出しにくいことは明白です。そこから解放し、自由度を高めれば逆の現象が起きると考えがちですが、それだけでは創造性が発揮されることはありません。たとえば新入社員が一連の業務を覚える前に、「自由に発想して斬新なアイディアを出して」と言われても想像力が発揮できないように、まずは一通りのやり方を習得してから、そこからの気づきや発見を生み出していくというステップが必要なのです。
●目の前に見えている情報が全て正しいという前提で物事を考える
→「実績を出している人の言うことは正しい」「過去の経験からこのやり方が正解である」などという思い込みによって、それをブラさずに物事を考えようとすると、既存の枠組みからはみ出たり、別の方法を考えようとすると思考が引き戻されます。状況によっては「前提を疑う」ことや、「過去の成功体験に囚われずに発想する」ことがないと、小さな改善ポイントにしか目が行かず、現状を打開するような大胆な改善策に思考が行きにくいことが多々あります。自分を取り巻く環境、ビジネス環境は絶えず変化しています。変化に合わせてゼロベースで思考することも大事です。
●現場の管理職に「メンバーの創造性を引き出せ」と押し付ける
→組織の創造性を高めることは、何も現場の管理職だけの仕事ではありません。アイディアが湯水のように沸いてこないのは、管理職の力量不足なのではなく、組織的に仕組みが作られていないからなのです。中長期で会社を発展させていくためにも組織の創造性を高めることが重要な経営課題の一つであり、避けて通れないことだと認識をした上で、ただ単発的にその都度必要な施策を実行するのではなく、継続的に創造性が高まる組織の基盤や仕組みを作っていかなければならないのです。
「アイディア出し会議」や「ブレスト会議」を定例化したとか、オフィス内に社員の創造性を引き出せるような空間を作ったなどはよくある話ですが、会議体一つ、働く場所やオフィスのレイアウト一つで、急に社員がこれまでになかったアイディアを出せるようになるわけではなく、組織の中での仕組み化や文化作りとセットで取り組んでいかなければならないのではないかと思います。
■これまで創造性を引き出しにくかった理由
一般的には「創造性」と言われると、今まで誰も思いついたことのないアイディアや、これまでに類を見ないほどの発明的なもの、変革やイノベーションにつながるような大々的なものとして捉えられがちです。ですが、実際には多くの人にとっての創造性とは、もっと身近で日常的なものです。日常生活の中でのちょっとした閃きや、いつもと違った視点、新しい発想、問題解決のための解決策など、身近な発想も「創造」に該当します。
「創造性を発揮しなさい」と言われても、「偉大な発明」や「誰もが発想できないアイディア」が求められているわけではなく、創造性とは、組織にとって有益なアイディア・アウトプットであり、誰もが生み出し得るものなのです。
新しいアイディアは、日常生活の中で生まれている様々な「非効率なもの」や「不便なもの」、「改善の余地があるもの」などの「問題意識」から生まれると思っています。職場においては、日々の業務に向き合っている従業員が、それまでのやり方に問題意識を持ち、課題を捉え、それを解決するためのアイディアを育てることができない組織では、成長ができないどころか、その先に待ち受けるポジティブな機会やチャンスまで逃してしまいかねないはずです。
たとえば、あらゆるレイヤーの人材育成に注力している企業のうち、「知識・経験・スキル・能力・コンピテンシー」などの側面から、目指すレベルを明確化して、不足を補うための育成プランを設計する企業が多いかと思います。そのような人材育成項目の中に「創造性」という項目は、重要性は理解しつつも、緊急性が高いものとしては位置づけてこられなかったような気がします。それよりも重要で今すぐにでも身に着けるべき能力が他にあるはずだと考えられてきたのではないでしょうか。
さらに、新しいアイディアを生み出すことは大変な作業であり、肉体的にも精神的にも非常に負荷がかかるであろうと、どうしても後回し・先送りしてしまう人も多いように思います。
まとめると、
●「創造性」を大げさに捉えすぎていた(一部の才能のある人にしか、持っていないスキルだと捉えられていた)
●企業での人材育成の際、「創造性」の重要性を認識しつつも、伸ばすべきスキルだと定義していなかった(身に着けるべきスキル・能力のうち、緊急度が高いものではなかった)
●個人が創造性を発揮することに関わる仕事は負荷が高く、敬遠しがちだった(目の前のタスクや仕事に対応することを優先しがちだった)
というような点が、これまで個々人が「創造性」を発揮するための環境構築が不十分であった理由だと考えられます。
経営を取り巻く環境の不確実性が高まる今、企業は継続的、断続的なイノベーションを求められています。そのためにも働く人の「創造性」を開花させていくことは、全ての企業にとって重要視されていく課題であると言って間違いないでしょう。
■創造性が発揮される職場にするには
記事の中には、創造性が発揮される職場にするために、以下4つが重要であると記載がありました。
創造性を発揮するには、
●「解決すべき問題に気が付く」→「どうすれば解決できるかを考える」
●「現状をより良くするための新しいアイディアを考える」→「アイディアをブラッシュアップする」→「アイディアを提案する」
というような、いくつかなステップが必要です。
このようなプロセスを日常的に意識して、実際に行動している人がどの程度いるか、少ない場合はなぜ少ないのかを考えると、それぞれの企業において「創造性」を発揮するために何が足りていないのかが明確になってきます。
創造性が発揮されやすい職場環境を作っていくにあたっての重要なポイントを具体的に挙げてみます。
1、意見を言ってもいいという空気感を醸成する
→「何か意見を言っても否定されるかもしれない」「変なことを言ったら評価が下がるかもしれない」という気持ちを多くの社員が持っていると、どうしてもアイディアを出すことに消極的になってしまいます。まずは、意見を言ってもいいのだという空気感を組織の中に作ることが重要で、実際に上がった声に対するアクションを一つ一つ実行していくことで、「意見を言えば何かが変わる」という期待感を持ってもらうことも大事なステップとなります。
2、日常的に社員が何かを発信する場をつくる
→組織の中で、社員一人ひとりが「何かを発信する場」の有無は、創造性を発揮しやすい環境になっているかどうかの分かれ道です。それは、たとえば朝礼のフリートークの場でも、定例会議の中で意見を出す機会でも、チームに送っている日報でも何でも構いません。考えていること、気づいたこと、感じたこと、やってみたいことなど、何かを発信することを前提として仕事に向き合うと、仕事におけるインプットの量と質が飛躍的に高まります。何かをアウトプットするという意識を持つことは、何かに気づいたり、問題意識を持つきっかけにもなるのです。お互いの考えを共有し合う場所があれば、相互理解が深まり、より良いアイディアへと発展しやすくもなります。
3、一つ一つのアイディアを大事に、すぐに潰すのではなく、育てていく
→組織の中で新しい意見が出てきた時に、一番やってはいけないのは「無反応」です。はなからその意見を取り入れようとしないだけでなく、何もフィードバックせず、感想すら言わない。そんな組織は少ないかもしれませんが、出てきた意見を「すぐに否定する」「すぐに却下する」という組織は意外と多いかもしれません。
新しいアイディアを“潰す”ことは簡単です。“やらない”と決めることも一瞬です。全くダメだなと思うアイディアでも、「切り口は参考になるかもしれない」「何が解決されるともっと良いアイディアになるのか」という発想を持って、肯定的に受け止めながらブラッシュアップしていくことが大事です。試行錯誤の繰り返しができる職場こそ、創造性が発揮されやすいのではないでしょうか。
4、新しいアイディアを生み出すための準備期間も、適正に評価する
→「新しいことを考えることが楽しい」「価値がある」と思わせるような職場の環境を整えることが大事なのですが、「何かを生み出すことは楽しそうなのだけど、良いアイディアが出なければ評価されない」「企画を練っているだけでは組織に分かりやすい貢献ができない」という声はよく挙がります。前述した通り、最初からすぐに完璧なアイディアが育つわけではないため、ある程度時間がかかることを念頭に、根気強く取り組んでいかなければなりません。その間の、組織の中での個人の評価体系もセットで構築しておく必要があると思います。企画したアイディア(アウトプット)の数、精度が高い状態にブラッシュアップできた数、決議されたアイディアの実行数や実行レベルなど、アイディアを生み出すことの価値を、評価体系とも連動させる形で整備しておくことが大事です。
5、自分で発案したアイディアを、実際に形にする機会を提供する
→思いついたアイディアは、実行することで初めて本当の価値を発揮します。社員が自分のアイディアを実際に試し、実現する機会を作ることで、それを繰り返す過程でアイディアの精度が高まり、社員がより成長する機会へとつながっていくのです。そして、自ら発案した意見やアイディアが形になっていく過程に面白さややりがいを感じる社員も多く、そのような人ほど、より創造性を発揮しようとさらにやる気を出し、また新しいアイディアを絞り出していくというポジティブなループが生まれます。新しいアイディアを実行する過程においては、当然失敗やリスクも伴いますが、失敗することを非難するのではなく、そこから学び次に生かすという、社員の意識や組織風土を築くこともセットで重要です。
6、これまでの創造の経験則を、パターン化する
→自分自身や、あるいは周囲の実績を出している人の経験(または思考プロセス)に注目し、それまでの成功事例をもとに具体的に型に落とし込むという作業も有効です。ある程度、発想の仕方の枠組みができていれば、それに沿って思考やコミュニケーションを誘発し、創造的なアイディアを輩出することをサポートすることができるからです。(そこに縛られ過ぎないことも大事ですが。)個々人の創造的な活動を後押しするためにも、創造の経験則を知り、それをパターン化・共通言語化することで、チームや組織の中で、アイディアの種に気づきやすくなったり、コミュニケーションを通して共創しやすくなったりするはずです。
■テクノロジーの進化とどのように向き合って創造性を高めるか
こちらの記事には、今話題の生成AIについて、「これまでとは異なる用途で活用が広がっていく」とあります。その活用の仕方については議論が分かれるところではありますが、技術の進化に合わせて、新しいものを排除するのではなく、社会が変わっていく必要があるのです。
記事の中には、
・自分のアイデアを深めるときにはChatGPTなどを使って『壁打ち』することは有効
・見落としていたものが見えてくる壁打ちツールとしての価値は高い
という内容がありました。ChatGPTのようなツールは、人間の創造性を奪うツールではありません。むしろ活用の仕方次第では、人間が新しく発想することをサポートし、アイディアを磨き、よりスケールさせるようなものになる可能性も十分あります。
AI技術が今後より一層発展すれば、ゆくゆくは人間の頭の中にあるアイディアがそのままアウトプットされるような時代もくるかもしれません。とはいえ、インプットもアウトプットも全てAI任せにするのではなく、それぞれができることを模索し、それぞれが知見を積み上げていくことが重要なのではないかと思います。
これからの未来を予測した時に、少なくとも「人間が担う仕事が大きく変わる」という点は間違いありません。人間には人間ならではの能力の発揮の仕方が求められるようになります。その能力の一つが、解決すべきことに目を向け解決案を考えたり、あらゆる人の思いや発想を統合し、より良いものへと昇華させていったり、単なる「正解を導きだす」だけではなく、多様な知識や経験をもとに新しいアイディアを生み出すというような、人間ならではの「創造性」ではないでしょうか。本当の意味の創造性とは何なのかを、人間が突き付けられる段階に来ているのかもしれません。
急速に普及が進むAIの技術を活用しながら、生産性や創造性を高めていく必要性が認識されている今、もちろんそのリスクなども加味した上で、前向きに活用を進めていくことが有効なのではないかと思います。