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非正社員をやる気にさせるインセンティブとリバース・メンタリング

 非正社員率が高い会社では、正社員との待遇格差が、社内の人間関係を悪くして、モチベーションの低下を引き起こしていることがある。

そこで、アルバイトやパート社員に対しても、数万円程度のミニボーナスを支給している会社もあるが、大切なのは、会社側がスタッフに対して感謝の気持ちを示すことであり、経営者や幹部社員と食事をして、仕事やプライベートの話ができる機会を設けることだけでも、モチベーションの向上に繋がることが報告されている。

また、アルバイトやパートで働く人達の多くは、最初は顧客として、その会社に好感を抱いて勤めるケースが多いため、自社商品の現物支給や割引特典を与えることも、非現金ボーナスとして効果的だ。

東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、正社員数が 3,400人、非正社員(準社員)が19,000人というスタッフ体制より運営されているが、正社員の平均年収が775万円(平均44歳)であるのに対して、“キャスト”と呼ばれる準社員の時給は1,000円前後という格差がある。

しかし、キャストに対しては各種の特典が用意されている。「キャスト・トレーニングパスポート」は、仕事がオフの日に、プライベートで入場できる無料パスで、年に数枚が定期的に発行される。その他にも、新規のアトラクションがオープンする前に体験できる「キャストプレビュー」、幹部社員や上司がキャストへの感謝の気持ちを込めて、パークを貸し切りにして行われる「サンクスデー」などがある。

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東京ディズニーリゾート・キャスティングセンター

【内発的動機を引き出すリバース・メンタリング】

ボーナスとして賞金や賞品などを与えることは、外的刺激によって従業員のモチベーションを引き出す手法だが、それが逆効果になるケースもある。

これは「アンダーマイニング効果」と呼ばれるもので、自発的に努力を継続していることに対して、金銭などの報酬を与えられると、やる気が失われてしまうことを指している。たとえば、自発的に勉強をしている人に対して報酬を与えると、逆に、勉強がしたくなくなることがある。その理由は、報酬を貰うことにより「自主的な勉強」ではなく、「他人に勉強をやらされている」という心理状態に切り替わってしまうためとみられている。

そこで、外的刺激を使わずに、内発的なモチベーションを誘発させる「リバース・メンタリング」という手法も研究されている。これは「人は“教えること”に喜びを感じる」という習性に着目したものだ。経営者や幹部社員は、若い社員を指導することが常だが、これでは若手の内発的なモチベーションは高まらない。そこで、上司の立場でも、部下から学ぶ機会を定期的に設けるのがリバース・メンタリングのやり方だ。

たとえば、SNSの使い方については、幹部社員よりも20代の若手社員のほうが得意で詳しいことから、彼らを“先生”として、社内の勉強会を開催することにより、普段の仕事では乖離していた両者の格差を埋めることができる。若手社員は、上司を教える立場になることで、内発的なモチベーションが高まり、得意分野の学習を熱心にするようになる。

この方法は、 ゼネラル・エレクトリック社(GE)が、2010年頃から最初に採用したものと言われ、当時のCEOが、最新のITビジネスに対応できる社風を作るため、約600人の上級幹部に対して、インターネットのスキルを教えてもらえる、若いメンター(先生)を社内で作ることを指示した。

幹部社員が持つ知識だけでは、時代の変化に対応できないが、それを解決する方法やアイデアは、20~30代の若い社員が持っていることが多い。同時に、若手社員が抱えている悩みや不満を幹部社員が聴くことにより、世代と役職の壁を越えた交流が活発になり、社内の士気を高めることに結び付く。

人間が“心の満足”を抱く源泉は、金銭的な条件だけではなく、「人から愛されたい」「人の役に立ちたい」「人から褒められたい」「人から必要とされたい」というように、『人との関係』が基礎になっている。経営者は、そうした心の声に耳を傾けることが、新たな報酬制度を組み立てる上でのヒントになる。

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