アドレスホッピングと織田信長

住むことに対して、新しい動きがみられます。それは、生き方そのものの転換にもつながる動きなのかもしれません。アドレスホッピング、Living Anywhere、織田信長、コミュニティについて書いてみます。

アドレスホッピング

住宅に対して、新たな事業者の参入が活発化しそうです。

一方で、定住しない生き方。新しい暮らし方の形として注目され始めています。特定の場所に囚われることのない生き方。

かつて、土地建物を所有することを人生の大きな目標のひとつとされてきた時代がありました。いつかは一戸建ての家を持つ。そのために、都心で働きながら郊外の土地を購入し、家族とともに暮らすための家を建て、数十年のローンを組み、その返済のために毎日何時間もの通勤時間を費やしてきました。

リビングエニウェア

一般社団法人Living Anywhereが提唱する、「自分らしくを、もっと自由に」という生き方があります。

様々なテクノロジーによって水、電気、食料、通信、医療、教育、仕事など、人にとって必要不可欠なものが地球上どこにいても手に入る世界でアップデートし、ライフラインの限界から解放された本当の意味での自由な生き方の実現を目指すプロジェクトです。

一般社団法人Living Anywhere

同社団法人のサイトには、そう書かれています。

場所に囚われない

場所に囚われないことの価値について、以前、織田信長について書かれた本の中で読んだことがあります。

  • 褒賞として土地を与えることは、その土地に縛られる形をつくる

  • 与えられた土地を守ることに注力し、新たな挑戦を阻む姿勢をつくる

土地を持ち既得権益が生まれることで、そこに安住することを求めてしまう。それが、攻めの姿勢から守りの姿勢へと人を変えてしまう。攻めの姿勢があったからこその褒賞が、更なる攻めの姿勢を後押しするのではなく、守りの姿勢へと変えてしまう。

「一所懸命」からの脱却。つまり、一つの場所に命を懸けるような生き方から脱却することが重要である、というような内容だったと印象深く覚えています。

場所だけではない

土地が褒賞として適していないとして、何が褒賞として考えられたのか。そこに、茶道という世界観、その世界観を共有する茶人コミュニティ、そのコミュニティ内で珍重される茶器が活用されたのだそうです。

コミュニティへの参画、価値観の共有、その価値基準を体現するプロダクトとしての茶器。これが、褒賞として与えられたといいます。

コミュニティとは、ソフトウェアとしての生きる場です。仕事のコミュニティも、友人のコミュニティも、家族というコミュニティも、同じです。趣味のコミュニティは、まさに、この茶人コミュニティと同じものと言えるのではないでしょうか。

居心地の悪い場所から抜け出す

アドレスホッピングやLiving Anywhereの思想は、物理的なハードとしての生きる場所を渡り歩くことを意味するだけではなく、こうしたソフトウェアとしての生きる場所であるコミュニティを渡り歩くことも含んでいると思うのです。

ひとつのコミュニティにしか属していなければ、どんなに苦痛でも、そこから逃れることが難しくなります。

子どもたちが家庭以外の昼間の時間に属するコミュニティとして、通学している学校にしか属していないとしたら、そこの居心地が悪かったとしても、逃れる術がないと思ってしまうかもしれません。学区によって決められてしまった場所、行くことを定められてしまった場所。そんな風に、自分の意思と関係のないところで決定され、強制された場所。牢獄に入るようなものかもしれません。

3つのコミュニティを持つ

僕自身、中学時代は、そうした感覚を持つ状況に身を置いていました。しかし、幸いなことに、学校以外のコミュニティを持つことができました。

その体験は、いまだに自分のコミュニティに対する姿勢の根幹ともなっています。それは、少なくとも3つのコミュニティに身をおく、ということです。

フリーランスとして長く仕事をし続けられたことも、この姿勢によるところが大きいと考えています。

  1. 仕事の上でも、3つ以上の異なる人たちとの仕事をする

  2. 仕事以外でも関係するコミュニティを3つ持つ(仕事、家庭、友人、その他)

何も特別なことではないかもしれません。しかし、意識的に、こうした形に身をおくことで、居心地が悪いと感じたときに、すぐにそこから距離を置いて、別の場所でのびのび過ごすことができます。

アドレスホッピングには、こうした形をよりダイナミックに実現する可能性を感じています。もちろん、ホッピングすること自体が強制されてしまうと、それはそれで窮屈かもしれません。

大切なことは、ホッピングしたいときに身軽にできる、という。その準備段階なのかもしれません。


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