信じることの大事さ
今日のテーマは「信じること」です。
幸福な社会を論じる際に、私が最も影響を受けた著者に小林秀雄がいます。
私の高校時代には、小林は国語の教科書によく取りあげられていました。
私も教科書で知りました。
小林は、その本質を突いた深い論考によって、
20世紀の日本を代表する知識人と言われています。
私は、社会人になり、結婚して、子どもができる中で、
小林秀雄とはご縁がなくなっていました。
ところが40代になって、突然、また読みたくなったのです。
皆さんへのお勧めは、講演のCD『信ずることと考えること』を
音声で聞くことです(小林秀雄講演第2巻[新潮CD] 、
これを文字に起こしたのが『学生との対話』ですが、
まず肉声を聞く方が遙かに迫力があり、しかも分かりやすいです)。
未来は常に予測不能です。
予測可能だと思っているならば、それは残念ながら甘い考えです。
重要なことを必ず見逃しています。
未来が予測不能ならば、どんな態度で仕事をし、生きればよいのでしょうか。
小林は上記の「信ずることと知ること」という講義の中で、
予測不能な変化に向き合う主体は常にあなたであることを突きつけます。
小林は集まった若者に対し訴えます。
「信ずるということは、諸君が諸君流に信ずると言うことです。
知るということは、万人の如く知ることです。
人間にはこの二つの道があるのです」。
まさに知識や情報を知りそれを適用するという「知る」と、
予測不能な未来に向き合う「信ずる」という二つがあり、どちらも必要だが、
両者はちゃんと区別しなければならないことを強調したのです。
大事なのは、知ることが信じることより望ましいのではない、というのです。
なぜなら、未知の未来に向かって進む時、知り得ないことが
常にあるからです。
そこでは、信じることしか、原理的にできないのです。
小林は、この「信ずる力」が低下していると警鐘を鳴らします。
講演では声に一段と力が入り、
「信ずるということは責任を取ることです。
僕は間違って信ずるかも知れませんよ。
万人の如く考えないのだから。
僕は僕流に考えるんですから、もちろん間違うこともあります。
しかし、責任はとります。それが信ずるということなのです。
信ずるという力を失うと、人間は責任をとらなくなるのです。」
幸せとは、今日この1日を、前向きに生きることです。
前向きに生きるとは、未来は未知であり、予測不能であっても、
信じて前に進み、加えて、信じて前に進む人を応援することです。
その時に、あなたに求められることがあります。
それは、自分が信じたことの結果に責任をとるということです。
信じることや信じる人を応援する風土がなくなるというのは、
無責任な人や組織につながるのです。
小林の時代よりも、現代は、信じる力が低下していると私は思います。
それは無責任な組織や社会になっている恐れがあるのです。
そのような社会にはしたくないと思います。
私は、いろいろな場で、あなたが自らを信じて行動し、
道を切り開くための指針を提供してきました。
それは、自ら責任をとって人生を生きるということと
表裏一体だからなのです。
(ご興味あれば下記のサイトを参照ください)