会社員時代、自分の看板で活動するために準備したこと(ゆるやかなジョブワーカー化のすすめ)
新型コロナが後押しする激動の時代、どんどん流動化していく社会の中で、組織の一員としてはなく「特定の職能を持った個人」として案件ベースで働く「フリーランス」「ギグワーカー」の働き方が一般化してくることが予想されます。
専門スキルと「個人」としてのプレゼンスが必要で、良きも悪きも等身大の自分で引き受ける業態であるギグワーカー/フリーランスは極めて不安定な働き方で、プロジェクト解散など状況によって削減しやすい人員であるため、深刻な不況の煽りを受けるケースも多々みられます。
その一方で小回りがきくため社会の変化に柔軟に対応しやすく、また自分個人を応援してくれる人が社会に点在しているため、いざという時にも「応援団」という名の独自のセーフティネットが構築されやすいという強みがあります。
自分自身は2011年に新卒入社し、ひょんなことから個人での活動を開始、2016年に会社を辞めて、今では趣味で行っていた作家活動を本業にしています。
「優秀さが求められる組織の従業員」としての立場や出世に限界を感じ、「奇妙なものをつくっている変な人」としてのキャリアをパラレルで育てはじめました。
ただ自分は慎重派のため冒険はせず、じわじわと個人としての実績をつくりながら徐々にスライド、シフトしていった記憶があります。
新型コロナの影響で働き方を見直そうと思っている方にむけて、自分個人でプレゼンスを発揮し、組織を出て食っていくまでの過渡期において行っていたこと、および「やっておけば良かった」失敗談などをご参考までにまとめてみました。
固定収入を強みに、プライベートでは純粋に好きなことをやる
会社員の強みはなんと言っても、毎月固定で確実に入ってくるキャッシュフローがあること。普通に忙しかろうが暇だろうが定額課金、これはすごい……!
フリーランスは意識的に利益をつくりにいかないとゲームオーバーになる怖さがあるため、会社員時代の方が明らかに牧歌的に好きなことを趣味として楽しめていた記憶があります。
そして楽しいことに人は集まってくるので、思わぬ形で話題になったり、プレゼンスが向上することも。
(↑会社員時代にバズったインタビュー)
収益化のプレッシャーがないぶん自由に制約なく個人の活動をやりやすく、「それで生計を立てている人にはできないアウトプットやビジネスモデル」が可能なため、意外とヒットをさっさと当てる可能性があります(誰でも無料で読めるnoteに渾身の作品を投稿してバズるパターンとか)。ズルい!羨ましい……!
まずは草の根、とにかく打席に出てみて数をうつ
上記の通り、会社員だと月々のキャッシュフローを気にする必要がないので、初期の頃は誘われたら無償の小さなイベントでもかなりカジュアルに登壇したり、小さな仕事をたくさんこなして、少しずつ認知度を上げていました。
やはりいきなり大舞台に立ったりホームランを打つのは難しいので、実戦で経験値を地道に上げていくしかないなと思っています。
(これ、いきなりフリーランスだったら下積みで辛い時期だったと思いますが、サラリーマンだったので仕事の息抜き感覚でやれて全然つらくなかったです)
自分の実績やプロフィールを徐々に更新・アップデートしていく
副業時代は個人の活動に対して長らく肩書迷子でした(社畜系アーティスト、と名乗ったり、UIデザイナーと名乗ったり、妄想監督と名乗ったり……)。個人でやってることはほぼアーティストなんだけど、本業じゃないし、どう表現したら良いものかと……
意を決して初めて「アーティスト」を名乗って人前に出ることを始めた頃に、「アーティスト様(笑)」と知人に揶揄された記憶があります。これ、駆け出しあるあるじゃないでしょうか🤔
ただ今では肩書に対して笑う人もそんなにいなくなったので(肩書と実情がだんだん追いついてきた)、自分の最新の実績とバランスをみつつ、少しずつアレンジしていくのをおすすめします。絶対に固定する必要はなく、自分の実態と照らし合わせながら軌道修正していくのがいいのかなと。
こちらについてはNIKKEI STYLEでも以前にご紹介しました("名乗った者勝ち"はやや極論ではありますが……)
お金を受け取る段階になったら副業申請するなど、社内にちゃんとスジを通す
個人活動を会社にコソコソやって、バレないようにギャラを受け取るのもできなくはないですが、個人的にはあまりおすすめしません。
適切に人事などに話を通し、上司も味方につけた方が長い目で見て長期的に活動がしやすくなりますし、「なにそれ、聞いてなかったんだけど」だと関係者の心象がかなり悪いので、なるべく早め早めで誠実に話を通していきましょう。
(私は在職中にギャラの発生する執筆案件の依頼があったタイミングで上司に相談し副業申請したのですが、おかげで平日に個人としてイベント出展する際に上司が便宜をはかってくれたりと非常に助けていただきました)
自分の場合、最初からいきなり独立していたら金銭的に相当苦労していたでしょうし、たとえ個人として何かプロジェクトが当たったとしても、会社の仕事には多くの場合において関係ないので、同僚に対して天狗になったりするのは黄色信号です(恐らくめちゃくちゃウザい)。
利益になってなくても確定申告する
本来は年間の利益が20万円を越えていない限り確定申告はしなくてもいいのですが、実は設備投資でガンガンお金が流出している年こそしっかり経費を登録して赤字を計上したほうがお得です。
完全なるただの趣味の場合は経費として計上するのはダメですが、事業化を見すえての設備投資(例えばYouTuberとして収益を上げたい人が機材を買うとか)などの場合は経費としてきっちり確定申告しておくと、給与から差し引かれる住民税などの税金も安くなります。
(私は在職中にこの事実を知らず、めちゃくちゃ損してました😭)
「よし!これから〇〇を目指して機材や設備も揃えるぞ」という年にさっさと開業届を出して青色申告(白色申告だと損益計上できないからあまり意味ない)しちゃいましょう。知人にすすめたら「給料から引かれる税金が安くなった!」と驚いてました。
※ただしタイミングによっては失業保険がもらえなくなるという説もあり、、サラリーマンが開業届を出すメリデメについてはこちらの記事を参照ください
本業で盗めることは盗む(会社の仕事は格好の教材)
自分のアーティストとしての活動での代表作のひとつとなり、国内外で賞を受賞した「デジタルシャーマン・プロジェクト」という作品があるのですが、これをつくったきっかけのひとつが「会社の仕事でPepperのアプリケーションを設計したこと」でした。当時は市場に公開される前の先端技術やデバイスに触れる機会が多かったり、周囲に優れた技術者が多く色々とヒアリングができたりする恵まれた状況だったなと今思えば感じます。
完全に独立してしまうと、組織に所属している状態と比べるとどうしても入ってくる情報が少なくなってしまいます。逆に言うと組織人というのは社内にある豊富なリソース(先端技術、情報、人)を気軽に得られる非常に恵まれた立場のため、在職中はそれを意識して「吸収したおす」ぐらいの気概でいたほうが良かったなと……。
会社員だから得られる学びに自覚的になる
先ほどの項目と似ていますが、ギグワーカーは専門性が重要な一方で、自分個人でビジネスをしなければならないため、営業・会計や価格交渉、契約の際の法務の知識など幅広い知見が必要になってくる働き方でもあります。
自分の会社員時代を振り返って、反省している点がいくつもありまして……
・アーティストとして独立するつもりだし、作品制作に時間を割きたいから社内研修とかはあまり積極的に参加しなかった
→デザイン研修とか開発研修とかもっと参加して学べる技術は習得しといた方が確実にお得だった……(給料もらいながら自分のために勉強できるなんて、こんなに恵まれたことはない)
・開発チーム所属で、営業さんとか経理・法務とかはあまり関係がないからと関わらなかった
→営業の同期や先輩たちに営業のコツを聞いたり営業同行して商談の駆け引きを学んだり、経理の方に会計の事を教わったり、法務の方に契約書の作成のコツを教わったりしたかった😂
・さっさと帰宅して個人の作業をしたいし、社内人脈とか構築している場合ではないのであまり社内で人脈を広げようとしなかった
→実は会社の中にも多彩な経歴とスキルの人がいるし、同じ会社だとカジュアルに会ってくれるし色々教えてくれるから、もっと社内の人からも学べた気がする。いま思えば是非話を聞きたい様々なプロフェッショナルがたくさんいた
そういえば「個人でずっと書いているブログで最終的に独立したいから、広告の仕組みに詳しくなりたくて広告営業やってます!」とキラキラした目で目的意識を明確に持って仕事をしていた新卒さんもいましたが、やはり退職後に起業した事業が順調に伸びていました(↓人気ガジェットブログを運営しているこの方です)
「単なる生活のためのただのライスワークだ」「いやいや通ってる」ではなく、せっかく会社組織というすごいリソースがあるのだから使い倒した方が絶対によかったなという悔いがあります。
もし「趣味」で片付けるのが難しくなってきたら、どこかで腹をくくる
自分に対して指名で仕事の依頼が増えてきて、本業の片手間でさばくのが難しくなってきた……という段階がやってきたら、もしかしたら組織に雇用される働き方でなくギグワーカー/フリーランスの生き方にトライしてもよいのかもしれません。
もしくは「スパッと退社!サヨナラ」ではなく、「正社員ではなく業務委託として会社と契約し直す」という手もこの時代にはアリだと思います。完全に会社を辞めるよりも、一社から安定収入を持てている状態で独立できるとかなり安全です。
この不透明な時代に正社員をひとり雇うことは割と負荷の高いことなので、特に規模がさほど大きくない会社ではむしろ喜ばれる可能性も。
いずれにせよ、勤務先と良好な関係を結んでおくことをおすすめします。
おすすめの書籍
けっこう前の本ですが、まだ「セルフブランディング」という言葉が流行り始める前に、その本質を平易で血の通った言葉で解説していた良本を紹介します。
私はこの本を就活中の大学時代に読んでかなり影響を受けまして、「なにものか」を目指すことのすすめという概念は今の世界を生きる上でかなり参考になるのでは。ビジネス書っぽくないビジネス書でずっと本棚に置きたい本です。
激動の時代ですが、これまでよりなめらかで、自由な働き方が社会に広がっていくのかも!?と思うとワクワクしている自分もいます。
私が紹介したことは一個人の例にすぎませんが、今とは違う働き方を考える上で少しでも参考になれば幸いです。