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行政×イノベーション:名古屋発、新たなスタートアップエコシステム

名古屋駅から2駅、鶴舞駅から徒歩5分程度という立地にSTATION Aiが誕生した。

STATION Aiは中部圏のスタートアップを育成するために愛知県が主導した巨大プロジェクトで、私もオープニングイベントで登壇してきましたが、その巨大さ、豪華さに圧倒されました。日本においてスタートアップ育成施設としては圧倒的な設備になってると思います。

オープニングイベントでは多くの人で賑わっていて、様々なパネルディスカッションが各フロアで展開されており、中部圏のスタートアップ関係者が勢揃いしていた。
ちなみに私が登壇したセッションは「次のトレンドはこれだ!シード・アーリー投資戦略最前線」というタイトルでジェネシア・ベンチャーズ田島氏、iSGS佐藤氏、mint白川氏と熱いディスカッションをしてきました。その内容も好評頂いていたのでどこかでレポートなり動画とか出ると嬉しいなと思っています笑

ANOBAKAとしても3年前から愛知県内のスタートアップ育成プログラムである"AICHI STARTUP BRIDGE"を運営しており、この地域のスタートアップとの関わりも深かったので感慨深いものがありました。

今回のSTATION AiはフランスのSTATION Fにインスピレーション受けてプロジェクト着想に至ったと聞いています。

フランスのSTATION FはFree Mobile、Kima Ventures、Ecole42などの創業者である伝説的なフランスの起業家であるXavier Niel氏が30億ユーロ(4800億円)もの私財を投じた巨大施設である。フランスだけでなくヨーロッパ最大のスタートアップ拠点である。MetaやMicrosoftをはじめとしたビックテックや行政、巨大企業主導のアクセラレーションプログラムが数多く用意されており、フランスを起業大国に成功に導いた中心的存在である。個人的にフランスという国は保守的なイメージで経済的、テック面でパッとしない印象があった。それが短期間で起業大国として評されるまでになったのはこのSTATION Fの影響が大きかったはずである。

国主導のスタートアップ育成といえば、岸田前首相による「スタートアップ育成5カ年計画」の策定を想起される方も多いと思う。政権の目玉政策としてスタートアップ育成が注目されたことは業界に長くいる身からすると隔世の感があり、非常にいい方向性であったと思う。石破政権の所信表明演説でもこの方向性は尊重されており、官民をあげて結果にこだわっていかなければならないフェーズとなっている。


私は10年ほどスタートアップ投資の仕事を生業としてきたがスタートアップの育成においては”コミュニティ”、”競争”、”仲間”などソフト面が非常に重要だと思っている。マネーはコモディティ化しているし、コワーキングスペースなど施設は飽和状態である。
起業家同士の横のつながりの中でノウハウ共有やアライアンスの加速、孤独になりがちな経営者のメンタルサポート、視座の高さを刺激し合うなど起業家を支えるコミュニティの力
一方「同時期に起業したライバルには負けたくない」という切磋琢磨した環境により起業家を奮い立たせる競争の力
一人じゃやれることは限られているがビジョンに共感するメンバーを増やし、組織としてより大きなことをチャレンジできる仲間の力

ANOBAKAではそういったソフトパワーを非常に重要視しており、例えば年に一度投資先の経営者を集めた宿泊型の合宿であるANOBAKA SECRET CAMP開催している。これは施策としてはコストと労力が非常にかかっているものの、昼の時間から夜中まで至る所で起業家同士がディスカッションしている様子を見ると開催の疲れも吹き飛んでしまう。この合宿後に「合宿で会った◯◯社と業務提携しました」「同じ悩みを持つ者同士のLINEグループができました」みたいな報告を沢山受けるが、これが起業家育成のソフトパワーだと信じている。

名古屋に新たに誕生したSTATION Aiは施設としては申し分ないし、専用ファンドも用意していると聞いています。あとはソフト面の充足がラストピースである。このSTATION Aiに数多くの起業家が常に熱いディスカッションを交わすコミュニティが生まれ、いいライバルと競争の中でお互いを高め合い、それに共感する仲間がどんどん集まる。そんな状況になればSTATION Aiは大成功すると思う。逆にここからスタートアップの成功事例が出てこなければ、「これだけお金をかけてダメだったらどうすればいいのか」という失望が蔓延し、逆コースになってしまうリスクも存在する。大きな施設だからこそ振り子のようにその失望も大きくなってしまう可能性がある。行政主導のスタートアップ育成の試金石とも言うべきこの大きなチャレンジにおいて関係者の皆さまは今まさに試行錯誤しているところだと思うので、このようなソフト面の充足を最大化してほしいし、個人でもそれに貢献できれば幸いだと思っている。


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