「当たり前」にはデザインの余地がある、と当たり前でなくなったから思う
ほんの10年前まで、父の好きなトンカツが2週に1度は食卓に並ぶのが当たり前だった。子どもの私もそのルーティーンを楽しみにしていたけど、実家を巣立ってから当たり前にトンカツを食べることはなくなった。
家族の形が変わるにつれて食卓の様子も変わってきた、平成の30年間。共働き世帯や単身世帯が増え、自炊に割ける時間は減っている。
スープ作家の有賀薫さんによる「家庭料理の新デザイン」というゼミ。今夜は全3回のうち初回がピースオブケイク社(東京・港)で開かれた。
有賀さんは「変わる家族の形に合わせて家庭料理も変わっていくべき」と指摘する。たとえば2人家族で食材を使いきれないなら、カット野菜を積極的に使ってもよい。無理なら自炊にこだわらず、中食でも外食でもよい、とする。
自分に最適な食事のフローを新デザインする、というのがこのゼミの趣旨だ。
有賀さんにとって料理で大切なことは「(そこに)あること」だという。なければ当然、飢え死にしてしまう。コンビニに行けばいつでも小腹を満たせる時代に、食べられなくなることへの危機感を持ち続けるのは難しい。
ところが、食べられることが当たり前でなくなる日は突然訪れる。私は24歳の時に膵臓の手術をして以来、身体が油分の多いものを受け付けなくなった。
子供のころ当たり前に食べていたトンカツが、今の食事フローに加わることはなくなった。
「食べられる」という当たり前のなかに様々な選択肢があって、デザインが成立する。油物を食べられない、仕事で時間がない…など制約のなかで家庭料理をデザインし、食事フローを最適化する作業は上手くいくのか。
第2回(3月7日)に続きます。
※有賀さんの「家庭料理の新デザイン」はNサロンの1期生のみ参加できます。
※1期生の参加申し込みは締め切っております。2期生の募集は続報をお待ちください。