社会が主語のSDGsとそれを支える人・企業
持続可能な開発目標(SDGs)は、17の目標に加えて、それらを1段階具体化した169のターゲットから構成される。よく見ていくと、それらは相互に関連していて、それらを包括的に解決することが必要なことがわかる。社会で起こっている問題や課題はどう絡み合い、今後社会がどういった方向に進んでいこうとしているのかに、自らの意識を向けて取り組む必要があるのだ。
でも、これら17の目標が、2030年までに達成すべき目標だということは意識できているだろうか。もうあと9年半しかないのに、切迫感や焦りはあまり見られない気もする。人と人が、人と地球が、持続的に共生していくためには、もうこのタイミングで「生き方」や「働き方」を改めないと、「流石にまずい!」という国連から人類への警鐘だということが腹に落ちていない人や企業がまだまだ多く存在するのだと思う。
大機小機では、「SDGsは余剰利益の再配分ではなく、企業活動全般を通じて実現すべき目標である。利益から拠出するのではなく、売り上げや経費のなかで生み出していきたい。企業が収益活動を活発に行うほど目標に近づくという発想だ」と言い切る。「人の生き方」や「企業活動そのもの」を、「持続可能な形に改める必要がある」という本質的な取り組みだと改めて感じさせられる。まずは「169のターゲット」を熟読して、自分が日々の活動の中で貢献できることを、1つでも多く見つけて欲しいと思う。
小さな街という単位で、SDGsに真正面から取り組んでいる自治体がある。鹿児島県の大崎町だ。この街では、資源リサイクル率日本一という強みを活かした「町おこし」の取り組みを進めている。「人口1万人規模での持続可能な循環型社会の構築」という未来図を描き、行政や住民だけでなく、企業も巻き込みながら、まずは4つ程度のプロジェクトから取り組むという。
その1つの「地域内容器循環プロジェクト」では、使い捨てを前提としていた容器や包装を、リユース素材にシフトさせるロードマップを設けている。30年までには使い捨て容器を完全撤廃して、脱プラスチックを達成するという。容器・包材メーカーのみならず、食洗機メーカー、消費財メーカー、循環全体を管理するために情報通信技術をもった企業も巻き込んで進めている。
このほか「教育」「地球温暖化対策」「産地でのフードロス」などのプロジェクトを進行させる計画もある。街の持続的な発展を包括的に捉えて全体設計をおこなっているのだ。「未来図」という表現からも、町ぐるみで暮らしそのもののアップデートにトライしているのがわかるだろう。
教育プロジェクトを担う「そらのまち」代表の古川理沙さんは「行動する子供を育てると地域が変わる。学校を起点にSDGsに対する地域の温度感を引き上げたい」と意気込む。SDGsの自分事化の重要性が伝わってくる。また、これらの「実証実験の先にあるのは新しい仕事づくり」と話すのは、町企画調整課の中村健児さんだ。持続可能な社会に必要な新たな仕事内容の見極めを行なっているのだ。
ふくおかフィナンシャルグループは、「サステナブルスケール」という子会社を設立すると発表した。SDGsの達成度などを数値化できる独自の尺度を九州大学と共同で開発して、データに基づきながら、環境や働き方など幅広い項目でSDGs目標の達成を後押しするという。こうした取り組みが広がれば、自分事として危機感を持って動く企業が増えていくと思う。
ただ、一番大事なことは、当たり前だが、持続可能な社会を2030年までに、つくりあげることだ。まず大崎町のように、小さな社会でもいい、持続可能な未来の設計図を描き、ロードマップを作り、住民や様々な企業と共に、早急に歩んでいくことだ。それぞれの小さな取り組み同士で学び合い、重ね合わせ、国や国を跨いだ取り組みに広げていくことだ。
企業には、小さくても包括的なこうした活動にどう貢献していくかや、街や地域の実情に合わせてどう柔軟に対応できるかが、求められている。一企業に閉じた取り組みではなく、どれだけ社会でその取り組みが活用されたかが重要だ。SDGsの相手は、間違いなく社会や地球だ。そこに住み働くみんなが自分事として貢献すべき「未来をつくる活動」だということ忘れずに進んでいきたい。