「働き方」はどこからきて、どこにむかうのか?
こんにちは。ナラティブベースのハルです。いよいよ今週の水曜に迫った「働き方を考えるカンファレンス2021」(わたしも午後のエンゲージメントがテーマのセッションに参加します!)に向けて、「#この5年で変化した働き方」をテーマに過去5年の変化を振り返りつつ、次の5年を考えてみたいと思います。
まずは、大昔の村にタイムスリップ!
突然ですが、質問です。
これは、ナラティブベースが昨年開催した「ナラティブ・チームビルディング講座」のワークショップで用意した問いです。履歴書も面接も就職もなく、ただ周りの人との関係性だけで役割分担をするような「とある村」にタイムスリップしたら…、あなたはどんな役割を担ったでしょうか?これはある意味「働く」上での素っ裸の自分に原点回帰するような問いです。あなたが周りに自然と差し出してしまうものは何ですか?
「働く」の語源には諸説ありますが、「はた(側にいる人)」が「らく(楽)」になるように自分の得意ごとを差し出すという意味からきたという説もあるようです。つまり昔の働き方は、仕事よりも関係性が先にありました。ところが、今の私たちの働き方はどうでしょうか。経験を提示し、契約を結び、仕事を得てから関係構築をしていきます。関係性よりも仕事が先にあることが一般的です。わたしは、今の働き方に変化が求められている理由は、この「逆の順番」の働きづらさに限界がきているからではないかと考えています。
ここ5年で整った「ツール環境」と「個人の意識」
少し昔に話を飛ばしすぎたので、この5年に話を戻しましょう。この5年の働き方の変化は、この原点回帰「関係性が先」を取り戻すためのお膳立てが急激に進んだ5年だったのではないかと感じています。
まず、お膳立て【1】。5年前と言えば、ちょうどビジネスチャットツールで今や定番となったSlackが日本に上陸したころです。Slackがそこまでのツールと違ったのは、社内外や部署間がシームレスにつながりオンラインでの関係性構築やコラボレーションがしやすいという点が挙げられると思います。ナラティブベースでもSlack以前とSlack以降では、コミュニケーションの量も質も変わりました。それまでは、プロジェクトごとに別の建物(ツール)に移動して会話するような感覚でしたが、同じ建物の中で壁もなくわいわいと人が集うような働き方になりました。
その他にもZOOMなどの会議ツールや、Google Apps(現Google Workspace)などのクラウドツールの使い勝手が格段と上がり、だれとでもどこででもつながれ協業できる、関係性構築のためのツール環境はこの5年で申し分なく揃ってきた印象です。ナラティブベースは10年以上フルリモートであらゆるツールを使ってきましたが、この5年の充実は目に見張るものがありました。
そして、お膳立て【2】。もう一つ5年で変わったと感じるのは「個人の意識」です。
この5年で組織論が変わりました。ロバート・キーガン氏の「成人学習・職業発達論」、フレデリック・ラルー 氏の「ティール組織」などが登場し、自己開示や自分の全体性(会社だけではない多面性)を仕事に持ち込むことが成長や成果に結びつくといった考え方が、「普通」の考え方になりました。そこまではひたすら個人の事情は成果の足をひっぱることで開示しない方が得策とされてきた基調が、逆転しはじめたのはこのころです。
「ティール組織」がベストセラーとなった2018年頃、ナラティブベースでも、働き方を自らつくる意識を高められないか?と手法を探っていました。その中の一つの試みとして、「はたらくをつくるワークショプ」という一般公開型のワークショップを開催し、会社員、フリーランス、経営者、公務員など、様々な職業の方が参加する実験的な場作っていました。覚えているのはこのあたりから自分を開示しつながりなおすことが「働きづらさ」を解消するかもしれないという雰囲気が、個人間にも漂い始めてきていたこと。
実際ナラティブベースでも、メンバーとして新しく入る人の自己開示がスムーズなシーンが増えていきました。(10年前は「個人事情や想いを話してください」というのはかなりハードルが高く、「ごめんなさい」が先に出たり「プライベートの話なので」など極端に萎縮して恐る恐る話す人が多かったのです。皆さんも身に覚えがありませんか?)
変われない「企業の意識」と経営者・管理職の二極化
【1】関係性構築のツール環境が整い、【2】個人の自己開示意欲が高まる一方、この5年、うまく変わって来なかったのは「企業の意識」です。
個人の事情やナラティブ(背景を含んだ物語)は企業にとっては合理性をひっくり返す非合理の塊(かたまり)、急に開示が進んでも困ってしまうのは当然です。しかし昨今、コロナ禍によるリモートワーク促進で、少しずつ多面性開示や関係性重視は浸透しつつあります。
企業が変わるヒントのひとつに、ナラティブベースが2020年の4月(東京が初回の緊急事態宣言下にあった際)に25社の経営者・管理職対象に実施したインタビューの結果があります。急なリモートワーク率引き上げに対し、うまくいく組織/うまくいかない組織でそれぞれ何が起きていたのかを分析しました。
ここでわかったのは、うまくいく組織では、経営者や管理職が、その企業のルールや既存の「仕組み」と、そのベースにある社員の「意識」をつなぐために自らの判断で臨機応変な言動を行なっていたことです。つまり自らが組織のクッション役となり、個人の状況を把握、判断し、組織の仕組みやルールと整合性をとって関係性を維持していく、いわば揺れを吸収し建物の耐震性を上げるような役割をしていたのです。
逆にそのような臨機応変な対応ができず、仕組みやルールのせいにしたり、個別事情を軽んじたりする態度で関係性を傷つけてしまうのが、反対のうまくいかない組織の特徴でした。
次の5年のテーマは、企業は「関係性」を優先できるか?
この事例では、その名の通り「緊急事態」の下であり一部の対応でよかったのですが、組織の働き方としては、これが経営者・管理職だけでなく、全体に及んだ形になるのが理想です。それが自分軸で臨機応変に判断できる人の集合体、いわゆる「自律型組織」と呼ばれるものです。
当然ですが、「関係性」を考慮し判断するには、相手の顔が見え、背景が理解できている必要があります。でもご存知の通り、人は関係性構築できる人数に限界があります。そうすると自ずと、分散型の小さな組織の連合体といった体制が必要になってきます。組織の組み替え、チームビルディングしやすい単位の再考が必要です。今は従業員のエンゲージメントスコアが計測できるようなサービスもありますが、既存の組織の大きさ・体制に合わせているからこそ計測や見える化が必要になっているようにも感じます。「近く」「感じられる」範囲で関係性が構築された方が、自己開示が進む安心した場が作れるはず、わたしは常にそう考えています。
さて、このような流れを追ってみると、5年後10年後には、今よりももっと分散された組織で、それぞれが相手の背景を把握しあった関係性の中で自分軸で判断し働く。チームリーダーはさまざまな事情や想いを汲み取り働き方を組み立てる、そんな姿が見えてきそうです。
あながち、最初の問いが「大昔の話」には聞こえない気がしてきませんか?
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いよいよ今週2/24(水)となりました!
「働き方を考えるカンファレンス2021 『働くのこれから』」
ナラティブベース代表 江頭の登壇セッションは、
15:15〜16:00 ROOM A です。