
タイパを求め失敗を恐れる消費者 ネット文化がリアルに波及
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
最近なんとなく思っていたことが記事になっていたので紹介したいと思います。それは「本のタイトル、長くなってない?」というものです。
ベストセラー本の書名が長くなっている。2023年までの直近5年の上位30冊は平均10.3字で、1960年代に比べ2倍近くに達した。単語中心の簡潔な書名の文芸書から、文章とみまがう説明調の実用書やビジネス書へと売れ筋が変化。近年は大量のウェブ情報の中で埋没しないよう長いタイトルを付けたSNSやブログ発の書籍が多くなった。活字の世界にネット文化の流儀が定着している。
出版科学研究所の年間ランキングをもとに調べた。文芸書がベストセラーに目立つ1940〜60年代は平均5字前後だったが、財テクやゲーム攻略法などのハウツー本が顔を出す70〜80年代に延び始めた。短期の変動はあるものの、デジタル化が進む2000年代に入って更に伸長。近年も安達裕哉著「頭のいい人が話す前に考えていること」(23年7位)、大野萌子著「よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑」(21年7位)などが上位に並ぶ。
なんとなく感覚的に思っていましたが、実際にデータでもこの傾向が見られるとのこと。かつてはビジネス書であれば著名な経営者の本がベストセラーの常連でしたし、文芸書でも賞を受賞したものなどが主流でした。
最近ではSNSの浸透もあり読者の好みが細分化。編集者もネットの小説投稿サイトやブログなどから新人を発掘して書籍化することも多くなり、知名度のない著者の作品をどう手に取ってもらえるかに腐心することになりました。また、流通も書店がメインだったころは棚に並べて表紙とタイトルにより世界観を訴求できましたが、スマホで読むことが多くなった現在においてはタイトル名と見出しが読むかどうかを決める判断材料となります。
読み手の感情、共感を呼ぶもの。個人の生き方に関わるものが多くなったのも近年の傾向だそうです(例:『君たちはどう生きるか』)。最近手に取ったものでおもしろかったのが、以下の本です。これも「好きを言語化する技術」だけではピンと来なかったと思いますが、続くリードの部分で好奇心と共感が生まれました。
同様の傾向はリアルな商品にも波及しているように感じます。例えば、コンビニにあるパンやスイーツ類です。
やみつきになる!スパイス香るカレーパン(セブンイレブン)
発酵バターが決め手!ふんわりメロンパン(ローソン)
等々、以前であればただのカレーパン、メロンパンだったものが、どういうものなのかをパッと見で理解してもらうために非常に説明的になっています。この流れの究極系とも言えるのが、ドン・キホーテのPB商品でしょう。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」のPBの商品名がとてつもない長さになっている。7月発売の商品は、昨年までの最高記録の2倍で300文字を突破。奇をてらっているのかと思いきや、そこには確たる戦略が。製法、味わい、担当者の開発物語……。消費者の興味にひっかかりそうな情報を余さず盛り込み、売り場で視線を奪っている。
「ターゲットに刺さるキーワードがない」「商品名は名が体を表していないとダメ」「他の商品でも使い回しできるような凡庸な文言だ」「シズル感が足りない」――。
情報過多の時代となり、自分に合うものがどれかわからない。商品購入で失敗したくない。という思いが、人々を検索に誘います。SNSでは「#」(ハッシュタグ)が多く利用され、特定のジャンルでの情報を見つけやすくする効果を生んでいます。
日本語学を専門とする法政大学の尾谷昌則教授は「『商品名のハッシュタグ(#)化』が起きている」と指摘する。例に挙げるのが04年に開設された自作小説の投稿サイト「小説家になろう」だ。投稿者が閲覧数を稼ぐために小説の内容や設定、登場人物の特徴など本来なら「作品紹介」に書くべき内容をタイトルに盛り込むようになり、長文化していった。
「個人が何でも検索する時代。企業側は最も効率的に特徴をアピールできるチャンネルとしてタイトルを利用するようになった。SNSで他人から見つけやすくする『#』の機能が長い商品名にはある」(尾谷教授)
ネット文化が生み出した文化は、リアルの世界にも影響を与えています。気づけば世界はハッシュタグに覆われているのかもしれませんね。
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タイトル画像提供:チキタカ(tiquitaca) / PIXTA(ピクスタ)