約40年ぶりの中国。大げさに言えば、何もかもが変わるということを目の当たりにしたことで大変な衝撃であった。40年前にはレンガ造りで、日本の小学校から見れば実に寂しかったわが母校は、完全に近代的な建築に立て替わり、着飾ったお母さんらしき人が子供の部活を外で待っているようなハイレベルでオシャレなものになっていた。住んでいた辺りの三里屯地域は、今や六本木のような、若者が集まる華やかな街に姿を変えていた。

40年前の1978年。中国は鄧小平の指導体制のもと、市場経済への移行を始めた。四つの近代化を掲げたいわゆる“改革開放”時代の幕開けであった。幕開けといっても、移行期間を設けて徐々に適応するという生半可なものではなく、いきなり人民公社の解体、自由な経営への移行に加えて経済特区の設置、外貨導入などを展開。まさに大転換を図った。

軋轢が大きかったことからのちに天安門事件に発展してしまった犠牲もある意味仕方がなかったことかも知れない。経済的な達成度はさすがに目を見張る。1978年当時9.6億人だった中国人口は現在約14億人と1.45倍。同じく当時のGDP3645億元が現在885724億元と243倍に。この間、日本の人口は1.12億人から1.26億人の1.12倍で、GDPは204兆円から549億円の2.7倍。わかっていたことだが、中国が成し遂げたものは大きい。

しかし、中国の強さを根底から入れ替えてしまうかもしれない問題もある。目先の米国との貿易戦争だけではない。中国の出生率である。1978年には18.25%であったのが、現在は1.24%。日本の出生率は78年当時の2.1%から紆余曲折後の復調で現在1.43%だから、中国は日本にも劣後した。一人っ子政策の影響が厳しく残り、2016年に導入された二人っ子政策は功を奏せず、人口の増加ペースに歯止めをかける。中国の人口高齢化がものすごいハイペースで進むことは必至である。40年の間の大転換のまま、更に国力をあげていけるのか。

人口の多さは、ソブリンリスクに実は直結するパワーである。現在の中国の成功は、高度成長を支えた人口基盤を無視できない。労働力は相当程度AIやロボットに入れ替えられるかもしれないが、消費をするのはやはり人間だ。最終消費者が多い国はそれだけでマネーが動きうるからだ。2017年10月の中国共産党大会では習近平国家主席は2025年までに中国を世界を主導する大国に引き上げるためのロードマップを示した。中間層の拡大や都市部と農村部の格差縮小といった難問も、またも“改革開放”並みの達成度を示すのか。興味深いことこの上ない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35194910Q8A910C1FFE000/

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