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アナログに回帰する人間関係、本物のエンゲージメントとは何か?

現代では、ネットを介して簡単に人と繋がることができる。Facebookで友達登録されている数は数百人いても、その中で、本当の親友や仲間と言えるのは一握りの数か、場合によってはゼロという人さえ、いるかもしれない。

もともとのエンゲージメント(engagement)は、人と人との信頼関係や熱意を表す言葉だが、SNSマーケティングの世界では広告効果を示す指標として注目されるようになっている。エンゲージメント指標として使われるのは、SNSの投稿に対して付く「いいね」の数や、投稿内容がシェアされた回数などだが、実際のビジネスでは、もっと深い人間関係、人との関わり方が重要視されるようになっている。

最も切迫しているのが、会社と従業員との関係である。終身雇用の崩壊、従業員の非正社員化、M&Aによる企業同士の統合などにより、職場の人間関係は複雑になっている。目標達成に向けた過大なノルマや、PCやスマートフォンで常に仕事から離れられないストレスの中で、エリート社員の中でも、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥り、体調を崩したり、仕事の意欲が減退したりすることで、現場の第一線から離脱する者は続出している。

社員がバーンアウトに陥ると、仕事のパフォーマンスは13%下がることが報告されている。働く熱意を喪失した社員は、「ディスエンゲージメント社員(disengaged employees) 」と呼ばれ、会社に対して無関心、努力をしない、社内の雰囲気や人間関係を悪化させる、商品の品質が下がる、SNSで会社の不満を投稿する、社内に潜む不正の内部告発など、企業にとっても様々な悪影響を及ぼすようになる。

《エリート社員がバーンアウトに陥る主な要因》

・職場での不当な扱い(パワハラ、セクハラ、同僚からのいじめ等)
・社内で孤独や孤立に陥ること
・過剰な作業負担や販売ノルマ
・自分の役割が不明瞭であること
・上司とのコミュニケーション不足
・時間に追われるプレッシャー

「従業員エンゲージメント」を意識した職場改革を進めることは、日本企業にとっても重要な課題になっている。日本の経営者は「会社にとって従業員は大切な資産です」とよく言うが、それは建前でしかない。

IBMが世界28ヶ国で100人以上のスタッフで構成される企業を対象に行った調査では、自分がその組織で働くことの「プライド」「満足感」「アドボカシー(支持)」「コミットメント(信頼)」という4項目から、従業員エンゲージメント率を国別に測定しているが、その結果で、日本は最下位となっている。他の調査でも、日本の従業員エンゲージメントは低い結果で一致している。

日本の企業には、年功序列・学歴重視・生え抜き主義の風潮が色濃く残っており、高卒の若手社員、中途採用、非正社員の立場で努力をしても報われない組織構造になっている。

会社と従業員と関係は、報酬条件や契約体系だけで結ばれるものではなく、「この仕事が好きだから」「この仲間と一緒に働きたい」という、人間の内面にある感情が大きく左右することに、一部の先進的な企業は気付き始めており、本当の意味でのエンゲージメントを高められる職場改革を進めている。その具体策には、社内SNSやビデオチャットで職場のコミュニケーションを円滑にする方法も含まれるが、それ以上に、信頼し合えるカップルや親友のように、社員の気持ちを熱くさせられるアナログの人間関係に回帰した働き方改革が求められている。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。詳細は公式サイトをご覧ください。従業員エンゲージメントを向上させる各種サービスやツールの動向、ビジネスモデルについては「JNEWS LETTER 2019.6.14号」で特集しています。



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JNEWS編集長(井指 賢)

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