見出し画像

グローバル化で日本企業だからと言って日本人が中枢にいられるとは限らなくなる

グルーバル化と経営幹部の国際化

ファーストリテイリングが2030年をめどに、外国人管理職を8割に引き上げ、執行役員の外国人比率も4割にすると発表した。ファーストリテイリングは、今や日本を代表する世界有数のファストファッションブランドだ。海外でも高い評価を得て、ファーストリテイリングのブランドである「ユニクロ」は欧米とアジアを中心に事業展開を広げている。

ここ30年間で大きく成長してきた日本企業の多くがグローバル展開に課題を持つ中、ファーストリテイリングは稀有な成功例の1つだ。しかも、海外の事業会社をM&Aすることを海外戦略の中心に据える企業が多い中で、ファーストリテイリングの海外戦略の中心は独自ブランドである「ユニクロ」の直接投資だ。同社も海外ブランドのM&Aをしていないわけではないが、それでも自社独自の「ユニクロ」と「GU」を中心として海外比率を伸ばしている。

人材育成のグローバル化と日本の独自性のジレンマ

事業がグローバル化すると、同時に人材のグローバル化も必要になってくる。単純に英語などの語学力も求められるが、それ以上に必要なことは海外現地の市場と顧客の声を拾い上げ、同時に世界規模で意思決定を下すことができる広い視野が必要だ。俗にいう、 "Think Globally, Act Locally(グローバルに考え、ローカルに活動せよ)"ということだ。

この観点から言うと、人材構成は多国籍なほうが好ましくなる。人員構成に多国籍かつ多文化を内包することで、 様々な国や地域の市場と顧客のリアルな声を意思決定に反映させることができ、なおかつ特定の国に偏らないグローバルな視点での戦略的思考が可能となる。特に、本社の中枢に近いポジションになればなるほど、このようなグローバルな考え方は必要となる。そのため、ネスレやユニリーバなど、グローバル企業として有名な企業ほど、経営の中枢が多国籍化していく。

しかし、人材マネジメント上、悩ましい問題が出てくる。グローバル化によって日本の既存従業員に対して、「長期的な貢献が出世に結び付く」というインセンティブを働かせることが難しくなる。グローバル化が進むことで、本社の中枢に行くほど、国際的な環境でのビジネスの経験が求められる。
だが、日本国内でキャリアを歩んできた既存従業員の多くは国際的な環境でのビジネス経験がない。そうなると、国内から抜擢して国際的なビジネス経験を積ませる必要があるが、そう都合よくポジションがあるわけでもない。加えて、日本本国から送り込むにしろ、実力として海外現地法人の現地従業員よりも優れた能力を発揮しなくてはならない。

これが国際的に評価が高く、ブランド力のある企業になると海外現地法人の現地従業員が日本本国の幹部候補生よりも優秀なことがままある。実際に、日本でもグローバル企業のなかで、経営幹部候補の選抜を行ったときに日本の候補生が残らず、海外の経営幹部候補の評価が高くなってしまったという声が出ている。つまり、日本での事業経験だけではグローバル企業の経営幹部として十分な能力を身につけることができない。

加えて、日本の商慣習ではグローバル標準とは異なる点がいくつもある。例えば、長期雇用に対するインセンティブを重視する傾向、新卒採用を好む、ゼネラリスト志向の人材育成、遅い昇進・昇格、会社の意思が優先される異動などだ。これらの特徴は日本国内だけで事業を行っているときには問題ではないのだが、多国籍環境となったとたんに好ましくない状況が生まれる。

そのため、グローバル企業の本社ではグローバル標準に合わせるように変更が加えられていくわけだが、そうしてビジネスの常識ともいえる商慣習が変わると日本国内だけでしか事業経験がないと不適応を起こしやすくなる。同じ企業なのに、グローバル本社と日本国内の事業部では異なるカルチャーと常識で運用されることになる。それはあたかも、日本国内の事業部が海外現地法人と同じような形になってしまう。

それでは、日本国内の事業部もグローバル標準に合わせれば良いかというと、それも難しい。グローバル標準に合わせないというのは、日本独自の商慣習が日本国内の事業部の優位性の源泉として機能していることがよくあるためだ。急にグローバル標準に合わせようとすると、現場が混乱してしまう。少し前に、社内公用語を一律で英語にして大きな混乱を社内に招いた企業がいくつもでたが、似たような現象だ。

加えて、製造業では特にみられるが、この特異な日本の商慣習を源泉とした日本の事業部がグローバル全体でも競争優位の源泉を生み出しているケースがある。優れたモノつくりが事業の屋台骨として機能しているときなどだ。

事業のグローバル化によって、変革をしなくてはならない。経営層をはじめとした、外国人従業員比率の引き上げは変革の1つだ。一方で、日本の独自性が生み出す競争優位も維持しなくてはならない。このジレンマを抱えながら、最適な人員構成と人材育成の戦略を作り上げることが、日本企業のグローバル化にとって大きな課題となっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?