研究の社会実装は進むのか
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研究の社会実装は進むのか

新城健一(ホオバル取締役、Holoeyes取締役兼CSO)

ワクチン接種率

「ワクチン接種完了率、日本が米を逆転 19日時点で」という記事がありました。

徐々に進んできたかのように思えるワクチン接種。ワクチンや治療薬の研究開発が進む中、接種促進のための研究も行われています。いくつかのメディアに取り上げられていたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ご紹介します。

リマインダーの内容が、ワクチン接種率向上に、どれほどの意味があるのか、という行動経済学の研究です。

登録者は、リマインダーを受け取る群(受信群)と受け取らない群(不受信群)に、4:1の比率で無作為に割り付けられた。受信群にはリマインダーの内容によって行動が変わるかを調査するために、さらに2つの要素を追加した。

1つめは「心理的所有感を誘発するメッセージ(UCLA Health:(参加者の名前)さん、COVID-19ワクチンがUCLA Healthで入手できるようになりました。uclahealth.org/scheduleで予防接種の予約をして、今すぐ接種を受けてください)」、もう1つは「ワクチンの有効性に関する2分間の動画メッセージ」で2要素の組み合わせによって4群に無作為に割り付けられた(基本リマインダーのみ:1万8,629、所有感メッセージ:1万8,592、有効性メッセージ:1万8,757、所有感+有効性メッセージ:1万8,627)。1回目のリマインダーから7日以内に予約・接種した人等を除いた6万7,092例を対象に2回目のリマインダーを送付した。全群において年齢、性別、人種のバランスがとれていることを確認した。

主な結果は以下のとおり。

・1回目のリマインダーによって、受信群の不受信群と比較した予約率は6.07%、接種率は3.57%上昇した。2回目のリマインダーによって、各1.65、1.06%上昇した。
・1回目のリマインダーでは予約・接種共に所有感メッセージが有効だった。一方で、有効性に関するメッセージには効果が見られなかった。
・受信群と不受信群の初回接種率の差は8週間後でも続いていた。

(原文論文)https://pmc.carenet.com/?pmid=34340242

結果として、すべてのリマインダーでプラスの効果が得られ、特に、心理的所有感を誘発するメッセージが有効だった、とのことです。

未来のリマインド

未来は、現在の行動によってつくられます。思い描いた未来を現実のものとして社会実装するためには、作る人だけではなく、使う人が必要です。ワクチンをつくる人だけではなく、それを接種する人がいて、初めて社会に実装され、未来が現在となります。

現在の行動=未来を作り出す行動。何を、どのようにリマインドするか、という研究は、未来を左右することかもしれません。これを、多くの人を特定の行動に誘うためのコミュニケーション技術としてのみ見ると、情報発信者が特定の目的のために恣意的に用いるということが想像されます。そうではなく、本質的価値とは別の事情や理由によって二の足を踏んでいる状況を変える、その後押しのひとつとして捉え、適切に活用していきたいものです。

研究の社会実装

いまから11年も前、2010年にダニエル・ピンクが提唱した動機付け「モチベーション3.0」(原著は2009年発刊)では、次のように書かれていました。モチベーション1.0は、生理的動機付けであり、「生きるために頑張ろう」というもの。モチベーション2.0は、外発的動機付けであり、「インセンティブがあるから頑張ろう」「怒られないように頑張ろう」というアメとムチです。そして、モチベーション3.0は、内発的動機付けであり、「楽しいから頑張る」という自分の内側から湧き上がるものです。ここで過去のものとして書かれていたモチベーション2.0は、心理学的には数十年前に限界があるものとして論文かされていたにもかかわらず、社会の中では、いまだに、2021年の現在でも、根深く残っています。

世界の本質を探る様々な研究がなされているにもかかわらず、その知見を社会実装に活用しない状況も根深いものがあります。様々な研究により、人の本質、世界の本質を知る、その解像度は日々高まっています。そうした知見を、もっともっと、社会実装に繋げていくことが必要なのかもしれません。

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新城健一(ホオバル取締役、Holoeyes取締役兼CSO)
サービス多様性爆発カンブリアナイト_主宰。(株)ホオバル取締役_新規事業創出支援、ホロアイズ(株)取締役兼CSO_医療VR、ミスルトウ_コンテクストデザイン、(社)ライフロングウォーキング推進機構_理事、(社)医療リテラシー研究所_理事、学芸大こども未来研究所_教育支援フェロー