「0円」で会社を売ります
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「0円」で会社を売ります

と言ったら、どんな風に思われるんだろうか?
そんな事を考えたくなるニュースにいやあ、朝から驚きました。
実は、MOTIONGALLERYを創業してしばらく経っていた時に、あくまで空想のシュミレーションではあるけど0円であの人に会社をバイアウトしてみたらどうなんだろう?と考える事で、良い方向に物事がすすんだ体験があったので、0円バイアウトについて考えてみた。

まさかのスクープ

正直、メルペイによるOrigami買収がニュースになってから、僕はかなり記事になっている以上に、いろいろある話だろうなと、有る種悲観的に見ていたけど、流石にこんなディールだったとは思いもしませんでした。

メルカリ傘下でスマホ決済を手掛けるメルペイによる同業のOrigami買収を巡り、買収額が「0円」だったことが日経クロステックの取材で2020年2月5日までに分かった。Origamiは資金調達の道を探っていたが有力な出資元が見つからず、メルペイの傘下に入る。大手の相次ぐ参入と大型還元施策により、スマホ決済市場の競争は激しくなっており、淘汰の時代に突入した。

複数の関係者が明らかにした。Origamiは当初、複数の企業に資金投入を打診していたが、色よい返事を得られなかったという。その間も財務状況の悪化に歯止めがかからず、単独での事業継続を断念。メルペイの傘下入りを余儀なくされた。

具体的には、Origami側が既存株主から株を買い戻したうえで、メルペイに実質的に0円で譲渡するという枠組みだったようだ。メルカリは2020年1月23日、子会社のメルペイを通じてOrigamiを買収すると発表したが、買収額を明らかにしていなかった。Origamiはこれまで累計88億円を調達してきた。中でも後期に出資した企業は、出資時より割安な価格でOrigamiに株を売却したとみられる。

このスクープは、本当にすごい記事!よく探ったなああ。すごいなと思いながらも、同時に、死人に鞭打つのはやめて〜とも思いなんか辛くなった。

企業価値は417億円

これまでの報道を軽く振り返ってみる。

最初の頃は、どちらかというと「ビッグディールが成立した!」という受け止め方だったと想う。

これまでもメルペイは加盟店開拓に関する協業などのために、他の事業者との連携は密にとってきた。オリガミの買収交渉のスタート時期について、メルペイ広報は「(2019年)11月以降、業界全体の動きが加速していった」と説明する。
「11月」とは、言うまでもなくヤフーとLINEの経営統合発表のことだ。キャッシュレス決済の巨大プレイヤーどうしが1つのグループになることによる「業界再編」が急速に進む中で、メルペイ、オリガミはさらに一歩踏み込んだ「協業」を模索し、それが今回の買収に至った。

やはり、オリガミの企業価値は417億円であるというひとつの評価がついていたこともあり、3桁億円もする企業を買収するのだから、それはメルカリ社も大きな賭けに出たな、ヤフーとLINEの統合が(WEWORKの影響が最もでかいとは思うけど)、超絶熾烈化しているキャッシュレス決済市場の決着をいち早くつけないとリスクが高くなりすぎていることでのPAYPAYがLINEPAYを飲み込もうとしている背景も考えると、それにメルカリが対応すべく同じく合従連衡に向かったという見方が支配的だった。

だけど、僕が当時思っていた感覚としては、PAYPAYとLINEPAYが一緒になる事って、レギュラークラスがバリバリ揃っているのに、毎年やたらFA戦線に参加する巨人軍みたいだなと思っていたので、とてもこの報道に違和感がありました。
つまり、足りない戦力補強というよりは、敵陣で活躍するくらいなら自軍のベンチ、みたいなイメージしか統合シナジーがわかなかった。テクノロジーや愛着とかが差別化ポイントではなく、資金投下量だけが外部性ネットワークを強化するマーケットであるから。

「ヤフーがZホールディングス化して、いろいろな種類のサービスを傘下に置けるようになった。そうなると、求めるのは『グループとしてリーチが最大になること』。なにも、統廃合する必要性はない。決済に関してもそうで、PayPayとLINE Payの併存は十分にあり得る」

このコメントも、まさに技術的にも運用的にも統合するシナジーが無いという事の現れだと思います。

それこそ、ヤフーBBと全く同じ絵図を描いていて突き進んでいて、しかも再現してきていたものの、WEWORKの問題で資金投下量の調整が必要になる&LINEという親しい資金投下量で戦えるプレイヤーが残存しているという誤算により、ヤフーBBの再現とはすんなりいかなくなり、であれば自陣に取り込むという判断になったはずで、事業シナジーとか相互補完とかそういう事では無いはず。
であれば、メルペイ✕ORIGAMIも同じだよねと思いました。

オリガミは地方の個人店舗など、中小事業者のネットワークを持っており、中規模の事業者に強みのあるメルペイにとっては、相互に補完関係のあるビジネスだった。

資金投下さえすれば獲得できるのに、この強みが相互補完になるのかなあ・・?
そんな風に思っていたら、このスクープがNEWSPICKSから。

「買収価格は非公表」に感じていたハッピーエンド

2019年11月のLINEとヤフーの経営統合発表で、焦るメルペイが買収を持ちかけたのではなく、窮地に陥ったオリガミ側が支援を求めたという形だ。くしくも、話を持ちかけたのは2019年11月頃のことだったという。

この記事を読んで、やはりそういうことかと、自分の感覚がそんなにずれてなくてよかったと思いました。(だからなんやねんというはなしですが)

財務的にも厳しいと言われていて、実際の公表データでもそれが伺える内容だったので、しっくり来た。

「買収価格は非公表」である以上、3桁億円の企業価値からはかなり乖離した金額でのバイアウトだろうけど、あまりに下手な金額なら投資していたVCやCVCも首を縦に振らないだろうし、買収額は非公開は武士の情けだね、でも創業者にも買収額の一部のお金が入って、ナイストライだったんだなあ、良かったよねと思ってました。その時は・・・。

先見性があったOrigami

Origamiの創業は2012年。
MOTIONGALLERYを僕が創業した翌年に、彗星のごとく誕生した印象があります。

僕がお金に四苦八苦していた時に、サービス発表前から多額の資金調達が先行してリリースされ(うろ覚えですが、まだまだスタートアップの調達規模が今程でなかった当時に、ものすごい異質な額のお金をファーストラウンドで集めていたはず)、「なんじゃこりゃ、すごい、お金の悩みがなくてうらやましい!」と思ったのを今でも覚えています。他社の資金調達ニュースで今でも強い印象に残っている数少ないニュースでした。

サービス発表されると、その中身は当時シリコンバレーで話題になっていた、おしゃれECサイト「Fab」のクローンでした。ん!?こんなんでなんでこんなに集まるの!?と驚き詳しくみてみると、創業者の康井さんのご経歴が、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズでM&Aアドバイザリー業務に従事し、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルDCM Venturesで働かれていたというのを見て、「あ、これはビジネスモデルとか以上に、人に投資がついたんだな」とまたもや羨ましくなりました(笑)。なんとなくエスタブリッシュメント側の期待を背負う人材としては適任だなと感じてました。

こういう事書くと怒られちゃいそうだけど、結構日本のスタートアップって、山師ぽい人が幅利かせてるなあと感じる事が多く「とりあえず、嘘八百カマしてから考える」みたいな、自分のこれまでの仕事観からするときつい業界だったので、こういうエスタブリッシュメントな人がスターになってIPOなりM&Aなりで実績つくってくれたら日本のスタートアップのエコシステムも多様になっていくのかなと期待もありました。

Origamiは、いい意味で、展開するサービスや業界への思いとかではなく、純粋に儲かるトレンドの所にベストプラクティスを持ち込んで成果を上げるスタイルの会社なのだろうなと思っていたし、それは僕の現在の会社とは真逆なスタイルだけど、本当はお金目的なのにやたらビジョンや美談を繰り出す言行不一致な人たちよりよっぽどいいなと有る種の共感を持ってました。

実際、「Fab」自体が傾いたなあーと思っていたら、いつのまにかOrigamiは日本でいいち早くキャッシュレス決済にピボット(事業転換)していて、うーむなるほどという感じでした。

ただ、中国で流行り始めた時期にいち早くキャッシュレス決済を次の戦場に選ぶのは妥当な判断だとはおもいつつ、インフラ事業に近いからまさにソフトバンクのお家芸が炸裂するんじゃないのとも思いました。機が熟したらソフトバンクグループが、YAHOOBBでやった事と同じことが展開されて、資金力勝負にしかならない市場な気がするけど、そこはどう考えているんだろうか?と。

今改めて考えると、むしろバイアウトの狙い先をソフトバンクグループに定めて、先んじて展開していた位の戦略性や先見性がOrigami陣営にあったんじゃないかと思います。思いたい。

モデムを無料でバラ撒いていた時代から、会社が無料でバラ撒かれる時代に・・・?

しかし、こういう話は、詰まるところ本当に時の運なんじゃないかなと思います。
決してOrigami陣営が何か失敗したとか足りなかったとかそういう風には思えません。

ただ、市場に与えるインパクトは大きい模様。

過熱気味だった国内ベンチャーキャピタル(VC)などのスタートアップ投資が修正局面に入っている。スマートフォン決済のOrigami(オリガミ、東京・港)がメルカリに「身売り」したためで、事業モデルや収益性を厳しくみる必要があるとの声が上がる。選別の姿勢を強めながらどうリターンを得ていくか、VCにとり今まで以上の知恵比べとなる。
日本のスタートアップ投資は18年にメルカリが上場して過熱していたが、揺り戻しつつある。19年に洗濯物自動折り畳み機のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが破綻。そしてオリガミが行き詰まったからだ。

拡大局面だった時は、
「いいから赤字を掘れ!掘りつづけろ!赤字を目一杯掘ってからのホッケースティックを描けないやつはチキン!」
みたいな言説ばかりがはびこっていて、僕みたいに大事にゆっくり育てますとか言っているとバカにされていたのに、ここに来て急に、「赤字と売上の増大」がもてはやされていたところから「まずは黒字から」と論調が変わってきています。

はやく急成長して現金化することが命題のVCとしても、まさにソフトバンクのものすごい歴史的な短期間での成長をお手本にして、「無料でバラ撒いてマーケットを制圧し、後から利益を上げる」モデルを推奨していたのだと思いますが、それが再現できるのは、一部のインフラ事業でしかなく、そしてそんな市場があれば当然ソフトバンクが制圧するという難しさをまたもや実感しました。

でも論調が変わってきているのはそれだけではなくて、
WEWORKの事案やキャッシュレス決済戦争をみると、ソフトバンクですらもそのモデルの再現が難しくなって来ているような世界の変化を敏感に察知しているからかもとも思います。

無料でモデムをバラ撒いて、会社が成長してグローバルなビックな企業生まれていた時代は、今から考えると消費者にも起業家にも夢があってよかったなあ。
そう考えると、人生を賭けて全力で取り組んだ会社がものすごい企業価値をつけたのにも関わらず0円で売られる時代って辛いなと悲しい気持ちに一瞬なりました。

0円でも会社を売れたことは素晴らしいこと。マジで。

それでもOrigamiはナイストライだと思うべきです。
前述しましたが、しっかりと経験をグローバルで積んだエスタブリッシュメントな感じの人が、事業機会に狙いを定めてしっかりと稼ぎに行こうとするチャレンジが成功することで、もっと日本のスタートアップのエコシステムが豊かになる。その前例をつくったことは間違いないと思っています。

そして、冷静に考え得ると、0円であっても売却できた事は素晴らしい事であり、失敗ではないと思いました。
いや、もちろん成功ではないかもしれないし、投資家サイドからすると甘っちょろいこと言うなと言われそうだけども、売却できたことと破綻で終わることってかなり大きな違いがありますよね。昨年末からは、識者が予言していた通り、著名なスタートアップの破綻のニュースがちらほら出始めていて、その中には創業者の失踪みたいな記事までありましたが、そう考えると0円であっても売却することは、まだ経営者の責任を果たしたとみるべきかもしれない。

特にOrigamiの場合は、2018年12月期の当期純利益が−25億円と巨額になっている為、買収価格が0円であっても、引き受ける側の企業のリスクはとても大きい。そのリスクの価値があると判断されるところまで持って行ったという事に、すごいな、僕には出来ないんじゃないかとマジで思います。

ちなみに、冒頭に書いた「0円であってもあの人に会社をバイアウトしてみたらどうなんだろう?と考える事で、良い方向に物事がすすんだ体験」は、直感的に良くないな、目指すビジョンは絶対共有できないだろうな感じるディールを持ちかけられ、でも自分たちだけでは実現できなそうな成長をするにはこの毒饅頭を食うべきなのかなあともやもやしていた時、「そもそもお金持ちになりたくで始めた事業じゃないしな」という原点に立ち返って考えようと思い、リスペクトしていたとある人に、もし仮に0円で会社を譲ったらどうだろうかとか考えてみたら、案外思考がシンプルになった経験がありました。「ここで我々の投資を受けなければ会社が成長できませんよ」「その時の責任ってどう考えますか?」みたいな類の事を言われて悩んでたけど、0円でなら誰かは引き受けてくれるだろうし、その人ならきっと僕が実現したかったフィロソフィー部分を完遂してくれるなあと考え、であれば、この話を断って本当に成長チャンスを逃すことになって困っても、問題ないやと思いきれました。その判断は間違ってなかったなと今強く感じています。

今話題のコロナウイルスがきっかけで、世界的なリセッションがまた起こるかも知れないし、それとも関係なく、スタートアップ業界の調整局面に入って、0円バイアウト事例がこれから多発していくかもしれないですが、それはそれでナイストライである、そういう認識が広がればいいなと思います。

と思っていたらの追記<2月7日>

と思ってエントリーを書き終わった〜!と思っていたら、そのわずか数時間後にこんなスクープが・・・。

うおおおお。。これは厳しいな。。
完全に、僕の見立てはあまちゃんでした・・・。

売却価格0円であっても当期純利益が−25億円もの会社をメルカリに背負ってもらえるところまで持っていったのは評価してもいいかもとか思ってたんだけど、
ここまでの内容のディールなら、完全に経営破綻でしかないから前言撤回します・・・。

なんでこのタイミングでこの事実が明かされたかを考えると、メルカリ側が事実を明かさないと実質被害に繋がるレベルの、風説が市場に広がってたのかな。
「どうやらシナジーが思い浮かばない大赤字企業を、金まで出して買ってしまい、リスクが高まってるぞ」的な。

メルカリとしては、バイアウトの前に大幅にコストカットしてP/Lへの影響なくした状態に整えてもらい、且つ0円でB/Sにも影響ないようにするなら、信金とかとORIGAMI が結んだ業務提携などの破綻処理をしてあげるよって感じなのかな・・・。わかんないけど。

メルカリは優しいなと感じたけど、やっぱハードシングスだな起業は。との思いに切り替わるニュースでした。

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大高健志@MOTION GALLERY

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