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テレワーク時代のメンタルヘルスケアを考える

昨今、在宅勤務という選択肢が広がる中、従業員のメンタルヘルスケアに力を入れる会社が増えている。

オフィスに出社しなくなったことで電車通勤の負担が減ったり、直接人と顔を合わせずに済むようになったりと、かえって体調が安定するようになったという声もある一方で、在宅勤務が長期化することでストレスが溜まり、さらに、これまではオフィスで顔を合わせていたことで分かっていた体調不良のサインに気づきにくくなっているという側面もある。

コロナ禍への対応が長引く中、会社にとってもメンタルヘルスのケアは、安全配慮義務の観点からも無視できない問題になっている。

今回は、多様な働き方が混在するサイボウズで、どのような考え方、方法で心の健康をケアしているのか紹介していきたい。

セルフケアをチームでサポートする体制づくり

「自立(心)」を重んじるサイボウズにおいて、最も重視しているのは、自分自身で自分の健康を管理する「セルフケア」である。

どんなに会社(チーム)側からのサポートを手厚くしたところで、結局のところ、人それぞれ心と体は違うし、さらに働き方もバラバラなサイボウズでは、健康のあり方もまた100人100通りだ。

よって、1人ひとりが自分自身で自分の心と体の状態を正しく認識し、自分にマッチしたケアの方法を見つけ、選択していくことが重要になってくる。

とはいえ、何のサポートもなく「うちの会社はセルフケアを重視してるんで、自分1人で頑張ってください」というわけではない。

自分自身の健康状態を認識するためのツールを用意したり、チーム側に選択肢を増やしたりと、チームとしてセルフケアをサポートできることは沢山ある。

社内の健康に関する施策全体をみているのは、人事労務部の「すこやかチーム」というチームで、「多様な働き方のもと、社員のセルフケアをサポートできること」「どんな状況、立場の人もチームワーク良く健康的に働ける状態を整えること」をミッションに掲げ、健康施策を推進している。

同チームが中心となり、各拠点(50人以上)ごとに設置された、すこやか推進委員会(衛生委員会)や産業医、各職場の人材マネジャーと連携、また、健康保険組合や社外の健康管理システムを利用するなど、多面的なサポート体制を構築している。

自分自身によるセルフケアと、それを支えるチームからのサポート。

ここからは主にチームからのサポート部分について、サイボウズの取り組みを「クローズ」と「オープン」という観点に分けて説明していきたい。

閉じているから、安心できる

大前提として、健康に関わる情報は非常にセンシティブなものであり、本人の健康に関する情報を取り扱う際は、限られた関係者内で対応を進めていく必要がある。

サイボウズでは、クローズに健康について相談できる窓口として、前述したすこやかチームに相談できる健康相談窓口や、健康保険組合のメンタルヘルス相談窓口、また外部機関の専門家に気軽に自身の健康状態をチャットで相談できるようなサービスを提供している。

要するに、本人に安心して相談できる窓口を選択してもらえるよう、複数のチャネルを用意しているというわけだ。

また、各部門のマネジャーと連携する際も、公開範囲を限定して面談記録を共有、意見交換できるアプリケーションを活用することで、閉じた環境での情報共有を徹底している。

あらゆる情報がオープンになっているサイボウズだからこそ、逆に、個人のプライバシーに関わる健康情報の取扱いには細心の注意を払うようにしている。

オープンに問題を議論できるチームづくり

一方、(サイボウズらしく?)メンタルヘルスケアに関して、オープンにとりくんでいるものもある。

オープンといっても、健康に関する個人のプライバシーを開示させるというようなものではなく(そもそもできないし、絶対にやってはいけない)、本人が抱えているもやもやを早い段階でチームが把握し、それがもし、チームで解決できる問題であれば改善していく、というイメージだ。

チームの問題を可視化する取り組みとして(意図してやっているというよりは自然にそうなっているものもあるが)、以下の3つを紹介したい。

1.定期的なサーベイ
2.グループウェア上のコミュニケーション
3.場づくり

まず1つ目の「定期的なサーベイ」について、ある程度の間隔を空けて行う「全社アンケート」や、個人が高頻度で回答(任意)できる「Cybozu Condition Survey(パルスサーベイ)」が例として挙げられる。

Cybozu Condition Survey(パルスサーベイ)は、週に1回本人に通知が飛び、内容は3つの設問と自由記述欄が1つという簡単なものだが、毎週定期的に回答すれば、自分でそれをグラフ化し、コンディションの好不調の波を可視化できるようになっている。

また定期的なサーベイで出た意見(どちらも記述内容を全社公開にするか、限られた人だけに見えるようにするか自分で選択することができる)をもとに、全社的な健康に関する課題意識や、コンディションの推移などを可視化し、制度の改訂や新規の施策につなげている。

最近では、年に一度の実施が義務付けられているストレスチェックについて、チームごとの分析結果を産業医と一緒に見る勉強会を実施することで、チームで問題を議論するような取り組みも始まっている。

2つ目の「グループウェア上のコミュニケーション」について、サイボウズでは常日頃から業務に関係するしないに関わらず、さまざまなコミュニケーションがオープンに行われている。

たとえば、日報(個人が1日にやったことを自由に記録するスレッド)や分報(個人がツイッターのように思ったことを思った時につぶやくスレッド)などで「最近、ちょっと体調悪いな……」など、自身のコンディション状況についてのつぶやきも多く見られるため、比較的早い段階で、チームメンバーやマネジャーが異変に気付くことができる。

また、業務上のコミュニケーションの殆どがグループウェア上で行われていることもあり、平時より明らかに書き込みの量が減少しているなど、アウトプット面での変化に気づきやすいという側面もある。

日報や分報でのつぶやきは強制ではなく、任意で行っているものだが、働く時間や場所が柔軟になることで、チームメンバー同士の様子が見えにくい状態になると、こうした書き込みも貴重な情報の1つになってくる。

最後に「場づくり」についてだが、心の健康を維持するにあたってチームの協力を借りる際に重要なのは、自分が抱えているもやもやをチームに吐き出せる環境である。

もやもやを溜め込んだままにしていると、チームとして対策も打つことも難しいし、最悪の場合、それ自体が心の調子を崩す原因になってしまうこともある。

そのため、サイボウズでは定期的に社内でもやもやしていることについて、オープンに吐き出して議論する場(主にオンライン)が設けられている。

「金銭報酬」や「キャリア」など、特定のテーマで場が設定されることもあれば、「マネジャー」という特定層で人が集まる場合もある。

また、入社した直後で不安の大きいキャリア入社メンバーについては、オンボーディング研修の中で、「もやもや共有ワーク(似た悩みを抱えた各本部の同時期入社メンバー同士で、社内のフレームワークに沿ってもやもやを共有し、お互いに助言しあうワーク)」をカリキュラムに入れている。

しかし、どんなに「場」をつくったところで、「このチームは自分の抱えているもやもやを吐き出しても大丈夫な場所なんだ」という安心感がなければ、結局、悩みは共有できない。この安心感をどうすれば生み出していけるかという部分については、サイボウズ内でも模索している最中である。

ただ、少なくともこうした「場」を意思をもって作り続けること自体が、「サイボウズは、個人がもやもやを共有することに前向きなチームだ」というメッセージに繋がっていく部分はあるかもしれない。

健康はすべてに優先する

ここまで、チームサイボウズのメンタルヘルスケアに関する取り組みをいくつか紹介してきたが、あくまで、サイボウズが最も重視しているのは「セルフケア」の考え方である。

多様な個性を持つ1人ひとりが、100人100通りの健康を実現するためには、1人ひとりが自分自身の心と体の状態について関心を持ち、自分が健康に働けるような選択をし続けていくことが肝要だ。

そこでもしも、チームの中に選択肢が少ないのであれば、チームで選択肢を増やせないのか、1つずつ議論する必要があるだろう。もちろん、結果的に現状のチーム体制では受け入れられないということもある。

なぜそこまでコストをかけて、チームで個人のセルフケアを支援するのか、と疑問に思う方もいるかもしれないが、「健康に働くこと」は、組織で活動するうえで、一番に優先されるべきだとぼくは考える。

組織とはあくまで、人間1人ひとりがより豊かに、幸せに生きていける社会をつくるために生まれたものであって、組織のために人の健康が害されるようなことはあってはならない。

どこでも仕事ができる人が増え、やもすれば、今までよりも「働きすぎる(働かせすぎる)」ことが起こり得る時代だからこそ、「組織の成果よりも、人の健康が優先される」ことは常に心に刻んでおきたい。

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