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【企業文化は一日にして成らず!】サントリーの「やってみなはれ」を勝手に応援の巻

今週日経新聞を読んでいて一番印象に残ったのがこの記事。

この話はあっという間にビール業界に知れ渡った。記事によると、サントリーHDの佐治会長が昨年末に異例の檄文を社内に送ったという。メールの内容は以下の様な感じ。

「昨日のマケ・プランはよく考えられていたが、その上で来年(21年)はコロナ禍の中、いやコロナ禍だからこそ、サントリービール事業のステージを変えるチャンスだという気持ちが強くあります。勘と言っても良いでしょう。…常識の壁を破り、ステージを変えるチャンスや!如何(いかが)?」

「今年は大変厳しい業績になります。しかしこの『ストレス』を2年続けて味わうわけには絶対にいきません。…来年は私たちにとって、『やり返す』『やり返さねばならない』1年なのです」

何とも厳しい文面で焦りすら感じる。
この言葉に対し、この記事での論評は以下の様な感じ。

「順調に業績を伸ばしているように見えるが、実はビールを中心に大きなヒット製品は生まれていない。例えば第三のビール。キリンビールが「本麒麟」を発売したのが18年。味の良さと、当時としては珍しい赤色のパッケージの斬新さで大成功を収めた。「やってみなはれ」の言葉で有名なサントリーは発泡酒を先駆けて出したり、ハイボールを成功させたり、独自性が強みだ。しかしキリンビールが再生に向かうと19年に同じような赤い缶の「金麦ゴールド・ラガー」を投入する。しかも今年の事業戦略説明会で打ち出した新商品は、キリンがすでに昨年に投入した糖質ゼロのビール。らしくない。」

サントリーには大変失礼だが、この論評はビール業界にいる私から見ても「その通り」と感じてしまった。企業間の競争であれば競合がヒット商品を出せばそれを模倣したものを出すのは当たり前。しかし、独自性、革新性のある自社商品を出せずに模倣商品が続くとそれはやはり残念に感じるし、それがサントリーとなれば尚更寂しい気がする。

もちろん、サントリーは日本を代表する食品企業であり、業界の末席にいる私から見てもビール会社大手の中で一番独自性やチャレンジ精神旺盛な企業だと感じている。ただ正直なところ、年々そのイメージは少しずつ薄れてきている印象だ。

数年前のサントリー社内講演にて

実は数年前にサントリー社内向けに講演をしたことがある。恐縮しながら講演会場に足を運び、待っていてくれた幹部の方に、
「声をかけていただいた時にも言ったのですが、規模は違えど同じビール会社の私が御社で講演をして本当にいいのでしょうか?」
と伝えると、豪快に笑いながら
「うちはそんなこと全く気にしませんから!ガッハッハッ!」と返された。

さすがサントリー!!!
その器の大きさに感動したのを今でも覚えている。

その後に続けて私はこうも言った。
「ですが、天下のサントリーさんに私がお役に立てる話ができるとは到底思えないのですが・・・」
すると幹部の方はこう続けてきた。
「いや、サントリーも昔と違ってチャレンジ精神が弱まっていまして。。。やってみなはれとはいうものの、そうではない社員も増えてきた。井手さんのチャレンジングな活動の話を聞いて刺激を受けてほしいんです!」 

本当?と思ったのがその時の正直な印象。


その後、別のイベントでサントリーのクリエイティブ部門の幹部の方とパネルディスカッションをする機会があった。うちのビール「インドの青鬼」「水曜日のネコ」のデザインやネーミングの話になった時、その方が言った言葉が忘れられない。

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「いや~、このクリエイティブのセンスは素晴らしい。というか今のサントリーにはできないし、こういうビールを製品化できるなんて羨ましい。」
その発言に対して私は
「いやいや、サントリーさんの事例の方が遥かに凄いです。それにその気になればうちがやっていることくらいやれるじゃないですか。」
と切り返すと、
「いや、私達が井手さん達のやっていることを良いと思っても、会社が大きくなり過ぎてここまで尖ったものは世に出せないです。きっと昔だったら、やってみなはれ、で普通に世に出せていたでしょうけど。」

上記はいずれも大分前の話だが、「やってみなはれ」の企業文化が弱まっていることに課題を持たれていた様子であった。記事の佐治会長の発言も現状だけのことを言っているのではないのではないだろうか。少しずつ弱まっている企業文化を、この危機的状況だからこそ壁を破る良い機会にしたい、という思いもあったのではないか。

「やってみなはれ」の企業文化は今までの長い年月で育まれてきたものであり、すぐにそれが失われることはない。ただ、それが長い年月で少しずつ弱まっていくことはあるし、逆に言えばそれが急に元に戻るかというとそういうこともなく、やはり時間をかけて戻して行くしかない。


【企業文化は一日にして成らず!】

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文化は良くなることも悪くなることも時間をかけて形作られていくものだと思う。それを今回の記事と昔の話を思い出して感じた次第。実は私達の会社も企業文化を経営で最も重要な要素の一つとして位置づけ、スタッフへの理解・浸透に力を入れている。企業文化こそが今のうちの会社の成長の源だと考えているからだ。だからこそ、今回の記事は大企業のことでうちには関係ない、とは思えなかった。あのサントリーでもそうなのか・・・と。

サントリーにしてみれば私などがこうやって好き勝手言うのは余計なお世話だし、大変失礼な話であるのもよく理解している。もしサントリーの方がこの文章を読み、気を悪くされたとしたら本当に申し訳ないと思う。ただ、最後にビール業界の末席に属するものとして、また現役ベンチャー企業の一員として勝手にメッセージを送らせてほしい!

どうか今年は革新的なビールや酒類を生み出して、ビール業界、酒類業界を活性化して盛り上げてほしい!そしてそんなサントリーの姿を見て「やってみなはれ」の精神に憧れるビジネスマンや起業家の心に火をつけ、そうした人を増やし、世の中を変える原動力となってほしい!そして、そんなサントリーが生んだビールや酒類をお酒大好き人間の私は飲んでみたい!!!

なので頼みます!サントリーさん、「やってみなはれ」を勝手に熱望している声を受け止めてください!

チャレンジ大好き、お酒好きの現場からの声は以上です!