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小池都政8年で滅茶苦茶減ってしまったもの


東京都知事選挙が近づいてきましたが、現職の小池都知事はまだ正式に出馬表明していない。一部では「出馬しないのでは?」という論もあるが、まあ出るだろうと思う。

というのも、もう小池氏の女性初の首相という目はないからだ。本来ならば、国政復帰して9月の総裁選に打って出るという戦略があったはずで、そのために八王子選挙の応援などもあったのだが、そもそも総裁選まで総選挙が行われない雲行きになった。首相になれないその他大勢の国会議員におさまるよりは、東京都の大統領である都知事の方がよっぽど権力ありますから。

さて、小池氏が出ようが出まいがどうでもいいのだが、この8年間の小池都政において、少子化対策という面においてどれだけ成果があったのかについて触れたい。

先ごろ、人口動態統計の2023年概数が発表されて、全国の出生率は1.20、東京都は0.99となったことが゜ニュースで報道されたが、長期的な東京都の出生率の推移を見てみよう。

なんということでしょう。
小池氏が都知事になってからというもの、東京都の出生率も出生数もダダ下がりです。

一応、擁護すれば2020-2022年はコロナ禍があったという面もあるが、それ以前の2016-2019年にかけてもダダ下がりである。なんなら、この30年間でせっかく出生率最高値の時に都知事になったのに、彼女が都知事になった途端に出生率・出生数が下がり始めている。

少子化対策に成果をあげたどころか、悪化させただけの知事である。

勿論、8年間の都知事時代に、小池氏はそれなりに少子化対策はいろいろとやっていることは事実。その中には、特に国のように子育て支援ばかりではなく、早くから「結婚支援」に着目した点は評価できる。

これの延長線上にあることだが、つい最近官製マッチングアプリの導入も発表した。

独身証明書の提出など、マッチングアプリで問題となっている「既婚の恋愛強者男によるヤリモク」防止のようなことは検討されているようだが、とはいえ、実施業者は民間のマチアプ業者のタップルであり、基本的なシステムは普通のマチアプと変わらない。

この東京都のマチアプについては、一部評価する声もあがっているようだが、私はまったくそうは思わない。

その理由は、マッチングアプリのようなデジタル上のマッチングシステムというものは、きわめて新自由主義的構造がゆえに、利用者の利用受益には大きな格差が生じるのが必然となるからだ。

まず、使用者側が条件検索の上選択できるという前提から、たとえば男性であれば経済力、女性であれば年齢等が問われる。システム上そんな制限はなくても、利用側がそう条件検索するからだ。 結果起きるのは、アプリの中では現実社会以上に厳しい条件競争の中に巻き込まれ、男性の場合、経済力中間層以下はほとんど恩恵を受けなくなる。稼げない男などお呼びじゃないからだ。

加えて、今回のマチアプが源泉徴収票の提出などもあるようで、これももう「金を稼ぐ男しか参加できない」だけのものになる。

それでなくても、東京の出生率の減少は婚姻の減少であり、婚姻の減少は中間層の男が結婚できなくなったことにある。東京23区で、6年以内に子を産んだ世帯年収の中央値は1000万円を超える。つまり、結婚して子どもを持つ半分以上が1000万以上ということだ。
勘違いしないでほしいのは東京は年収が高くていいねという話ではなく、東京においても中間層は結婚できなくなっている。

まあ、それでも高年収の未婚が結婚していくようになるのならいいではないか、という話もあるのだが、ここに不都合な事実がある。

大体、高年収の男は同時に恋愛強者でもある。身も蓋もない話をすれば、10代のうちから恋愛強者の男は概してその後年収が高くなる。

それは、容姿がよく、コミュ力があるからだ。大手企業の面接などは、ほぼ面接官の印象で決まるようなもので、容姿とコミュ力という恋愛でも効力を発揮する力は企業の面接でもウケがいい。結局、恋愛も就職も就職後の昇給も人当たりで決まる。

さて、そうした経済強者でもあり、恋愛強者でもある男は別にアプリなどに頼らなくてもモテるし、出会いの機会もタワマンのホームパーティーに呼ばれまくりで苦労しないのだが、そもそも特定の彼女がいないわけでもない。

よくよく考えれば、そういう条件の良い男を女が見逃すわけはない。大学時代からホールドされているケースも多い。

結果的に、その彼女といずれは結婚するつもりかもしれないが、かといってたまには遊びたい。そのために合コンやホムパに参加しているのだ。要するにヤリモク。

別にアプリなど使用しなくても恋愛相手(セフレ)には困っていないが、なまじアプリがあることで出会いの幅が広がり、部屋のソファの上で簡単にひっかけられるのだから、街でのナンパより、さらには、わざわざ出かけていく合コンより楽だ。

すでに民間のマチアプで起きているのは、そういう恋愛強者男の強者総取りパターンで、その獲物になるのは恋愛弱者女性である。それは誰がアプリを使っているかの調査で明らかである。恋愛強者女性はアホらしくてアプリなんか使わない。

そして、同じく当初はアプリを使っていたが、全然マッチングされないのでアホらしくて使うのをやめたのが恋愛弱者男性である。

なぜ恋愛弱者男性が相手にされないかというと恋愛強者男性が総取りしているからである。
考えてみてほしいのだが、恋愛弱者女性の前に「金も顔もある」恋愛強者男性があらわれればなびいてしまうだろう。しかし、それは「私だけ」ではなく大勢の他の弱者女性にも同じことが起きている。

なまじ、恋愛強者男性といい感じになった経験があると基準が狂う。それ以下の男性があらわれても「見劣り」するわけである。かくして、恋愛強者男は何人もの恋愛弱者女性をとっかえひっかえできる。それがマッチングアプリの構造である。

男女で恋人がいる率に10%もの開きがある(男<女)のも、男が複数の女と付き合っているからに他ならない。

独身証明書を出そうがなんだろうが、マチアプとはそういう構造から逃れられない以上、これで根本的に婚姻数が増えるなんてことはない。

婚姻でマチアプ比率が高まっているなどという統計の読めないなんちゃら基礎研究所の某が東京都の婚活イベントで講演とかしているわけだが片腹痛しでしかない。アプリ結婚の比率が高まるのは総婚姻数が減っているからで、アプリが婚姻増の救世主になることはない。むしろ、余計に金のある男だけが結婚できる結婚格差を拡大するだけだろう。

東京都の婚活事業にマチアプ業者が躍起になって参加したがるのは、そうした構造に気付いた「都合のいいお客さん」である恋愛強者男性が離れ、事業として成立しなくなっているからだ。事実、マチアプ市場は停滞している。いみじくもタップルが発表しているが。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000044116.html

マチアプ業者にしたら、BtoCでは儲からないので、行政の公金頼みになるということだ。
それでも「結婚したいけどできない不本意未婚」が減るのであれば公共の利益にもなるというものだが、前述した通り、多分不本意未婚には恩恵はない。単に公金がマチアプ業者に流れて、業者と業者に頼まれた御用有識者が儲かるだけだろう。もしかしたら政治家の企業献金にもつながるのかもしれない。

まあ、いずれにしても、小池氏が都知事になってからというもの、東京の婚姻も出生もダダ下がりであることは事実である。政治はプロセスではなく結果がすべてなので、この領域に関してだけ言えば、俺は現知事を評価しない。

とはいえ、他の候補者もろくでもなくてですね、腹が減ってフードコートにでかけていったのに、食いたいメニューを提供する店がひとつもないという状態で途方に暮れている感じ。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。