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高齢者のオンライン社会参加を促すために

自分の両親にzoomの使い方を教えた。正確には2段階のステップを踏み、まずzoomのオンラインのミーティングやウェビナーに参加する方法を教え、それに慣れたところで、第2のステップとして、zoomのミーティングを自分が主催する方法を教えた。両親は遠隔地に住んでいることもあり、また最初のステップを教えたのが緊急事態宣言期間中だったこともあって、zoomが曲りなりに繋がるまでは電話を使って行なった。

きっかけは、緊急事態宣言で外出がままならないうえ、高齢者の新型コロナウイルス感染による重症化リスクが言われる中で、両親それぞれの趣味やアクティビティへの参加がままならなくなり、寂しいと漏らしていたからだ。せめて各種のオンラインイベント等に参加できれば、多少なりとも寂しさや社会とのつながりの希薄感を弱められるのでは、と思ったのだ。

両親は80歳前後とかなり高齢ではあるのだが、現役の頃から仕事でタイプライターを使っていたためにキーボード操作に親しんでいたことから、パソコンは早いうちから利用していた。メールのやりとりも、携帯電話よりむしろパソコンを利用していた。そういう両親にとっても、zoomのようなデジタルツールを使えるようになるには非常に多くのハードルがあるということが、教えてみて改めてわかった。

zoomに関して言えば、パソコンで使うには、WindowsにせよMacにせよ、デフォルトブラウザが対応していないところに大きなハードルがある。このため、対応するブラウザをダウンロードしてインストールするというところまでを、電話を使って遠隔で指示して完了するまでが大きな苦労であった。

また、仮にスマホやタブレットで使おうとすれば、アプリをダウンロードしなければいけないというハードルがあり、こちらもパソコンより簡単とは言いきれないところがある。

さらに、zoomが使えるようになった後でも、オンラインイベントの参加権は、PeatixやEventRegistなどのオンラインチケットサービスを通じて配布されることが多い。zoomに加え、こうしたオンラインチケットサービスにもサインアップしてログインするという操作が必要になる。この、サインアップしてログインする操作が、様々なオンラインサービスで、それぞれ異なる方法やパスワード設定のルールで求められることも、高齢者にとっては理解しにくく、利用を始めるための大きなハードルになっている。

もともと、高齢者がオンラインのサービスやツールを使うことについては、非常に大きなハードルがあるということは誰もが認識していたことだとは思う。そして、それを分かってながら半ば仕方がないものとして放置されてきたのは、オンラインサービスが、あくまで「サブ」のもの、副次的なものであるという建前だったからだろう。

しかし、新型コロナウイルスの問題が発生することによって、社会の多くの行事や様々な施策はオンラインを通じてのみ、あるいはオンラインをメインとして行われることになりはじめている以上、高齢者がオンラインのサービスやツールを使えないということを、これまでと同じように看過することはできなくなっているはずだ。まして、我が国は今後高齢者の割合が一層増えていく超高齢化社会を迎えようとしているのであるから、なおさらである。

こうした中で、いかにして高齢者のオンラインの社会参加を促し、また独居者も多い高齢者が社会から孤立せずにつながりを保ち続けていくかという点で、オンラインのサービスやツールの利用に対するハードルを下げることは非常に大きな、かつ喫緊の課題になっていると思う。高齢者にとって理解しやすく使いやすいサービスやツールのあり方にしていかなければならない。

直近では、国勢調査がこうした課題に直面している。

民間でも地方自治体と連携した取り組みが始まっているが、高齢者の参加をどのように促していくか、という点について、明確な対策は読み取れないことが多いように思う。

一方で、社会がオンラインに依存する割合が高くなれば高くなるほど、なりすましの問題や本人認証などの問題、オンラインのセキュリティを確保することが同時に非常に大切になってくる。

テレワークの普及で企業に対する不正アクセスの問題が表面化したが、これは何も企業に限った話ではなく、個人においても同様のリスクがある。

しかしこのオンラインのセキュリティを強化することと、高齢者がオンラインのサービスに参加しやすくするということは、少なくても現状は二律背反する問題となっている。もちろん、使いやすくて安全性も高いサービスを開発していくことが理想なのだが、一足飛びにそうしたものが実現するとは考えにくい。

こうした中で一つ実現できないかと思うのは、ログイン情報を悪用した犯罪に対する保険制度を創設できないか、ということだ。もとより、パスワードは各サービスごとに異なるものを設定することが推奨され、各サービス事業者は各社のセキュリティポリシーに沿ってパスワード設定のガイドライン(最低限の文字数・桁数など)を定めることになる。しかし、このことが先ほど書いたように高齢者にとって利用のハードルになるのであれば、ある程度パスワードの設定方法等を標準化し、高齢者に対する利用のハードルを下げていく一方で、万が一パスワードが悪用されるなどして損害を被った場合に、その経済的な保障する保険を創設できないだろうか。

その費用は、もちろんそれによって恩恵を受ける各ユーザーも一定の負担をするとともに、同時に、ログインさせることによってビジネスを行っている各事業者に対しても応分の負担を求めることができないだろうかと思う。例えばGAFAと呼ばれているIT の巨大企業たちは、いずれも顧客にログインさせることによりデータを手にし、利益を得ている。しかし現状は、彼らがパスワード情報を流出させるなどの過失がない限り、ログイン情報悪用のリスクはユーザーが一方的に負う形になっているのではないだろうか。

そこで、ログインさせることによってビジネスをしている事業者が、そこから得ている利益から一定の保険料を負担をすることによってログイン情報の悪用による経済的損失をある程度カバーすることができ、オンラインサービスを利用する人のハードルが低くなるのであれば、こうした事業者にとってもプラスがあるのではないかと思う。

もちろんその費用は最終的にユーザーに転嫁されるのかもしれないが、何らかの形でログインさせることによって利益を得ている事業者に、こうしたリスクをの一部を応分に負担する仕組みができないものかと思う。これは消費者保護法制の問題として取り組むべき課題かもしれない。

例えば、個人負担分を考えると、千万単位の高齢者が一人月額数百円程度の保険金を負担するのであれば、それだけでもこの保険の市場規模年額は2-3桁の億円になる。もちろん、それによってカバーしなければいけない想定の損害額とこの保険金額が見合うものなのか、保険商品として成り立つかどうかというところについては精査が必要だ。また、戸籍をはじめとする個人情報など、発生した損害に対し金銭的補償がそぐわない、お金では取り返しがつかない性質のものについては、分けて考える必要はある。

いずれにしても、高齢化社会そしてオンライン化が進む社会にあって、いかにして各種の社会機能のオンライン化をスムーズに実現できるかということは、いわゆる「一億総活躍社会」の実現にとって大きな課題になるはずだし、ひいてはそれが、COVID-19だけでなく将来起こりうる未知の感染症に対する社会的な備えにもなるはずだ。

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