「少母化」の認識があるのならその先の対策の的を見誤らないで
自民党の新総裁は石破茂氏と確定した(久しぶりに午後長々とテレビを見てしまった)。
決選投票が「石破vs高市」となることは、大方のメディアも政治評論家も予想をしていたが、決選投票にいたる党員投票で、高市氏がトップをとるなど、1位抜けしたことから、決戦投票の間では、Xなどでは高市総裁を確実視する声が多かった。
が、それらの予想に反して石破氏の逆転当選となった。その差21票という僅差だった。
印象的だったのは、確定後、前総裁の岸田さんが挨拶を述べて、席に戻った時の、岸田さんと麻生さんの表情の対照的だったこと。
いずれにせよ、これで次の首相は石破さんになるわけだが、ちょっと私とは意見が違う部分もあるにせよ、こと少子化問題に関する点においては、石破氏は以前からこう言っている。
少子化問題の本質は母親の数が減っている「少母化」にある。ただでさえ少なくなっている女性人口において結婚したくてもできない若者に対する手当が必要だ、と。
私のフォロワーや記事をお読みの方であれば「あれ?」と思うかもしれないが、そうです。私の作った造語である「少母化」という言葉を使い、内容もまんま私の論説と一緒です。
とはいえ、別に石破さんと面識があるわけではない。
ご本人が私の記事をどこかで読んだのか、秘書から教えられたのかは知らないが、素直にありがたいことです。そして、課題認識としては本当にこれが正しいことで、岸田内閣の少子化対策はこの認識をことごとく無視していたからこそ的外れだったわけで。
※ただし、どうも石破さん本人は「少母化」を本当に内容をちゃんと理解した上で使っているのかもやや怪しい上に、他の誰かの作った言葉だと勘違いしているみたいで、その人も私の記事からパクッて使っているだけなので誤解のないよう。
少子化の問題は「出産対象年齢の女性の絶対人口の減少」という課題認識を提示したのは、他にもいたろうが、それをこうした形で「少子化ではなく少母化」と言語化したのは多分私が最初で、それも別に最近言ったことではなく、かれこれ7年前に作り、使っている言葉である。
初出は、まさにこの日経COMEMOの連載において2018年6月の記事である。
その後、少子化問題に言及する場合には、その都度使用してきた。連載している東洋経済オンラインにおいては、2020年1月に記事化している。その後も何度か同じテーマの記事を出した。
2020年11月には、テレビ朝日の池上彰さんの番組コーナーでご説明している。
ヤフーの連載でも「少母化」のデータを紹介している記事は数多い。
元明石市長の泉さんともその件で対談した。
おかげさまで、エビデンスを提示して、繰り返し丁寧に説明し続けてきたおかけで、一定の認知は広がったと思っている。
グーグルで「少母化」と検索して出てくるのも私の記事である。
実は、この「少母化」については、自民党(石破さんではないが)、公明党、立民党の議員にもそういう話をそれぞれ別個でお話させていただいてもいる。岸田内閣時代にも首相補佐官にお話ししている。こども家庭庁になる前の準備室段階の内閣府にもお話しているけど。
少母化のもっとも大事な点は、結婚した女性が子どもを産んでいないのではなく(第二子、第三子が生まれない問題ではなく)、第一子が生まれない=一人以上出産したという意味の母親が生まれないことであり、それは畢竟、婚姻が生まれない問題であるということである。
大体、今は90年代に比べて一人っ子自体増えていない。
自民党総裁選では、他に林さんが「不本意未婚(選択的に結婚しないのではなく、結婚したい意思があるのに独身のままの未婚の若者。2015時点で20-30代のうち5割近く存在する)」というこれもまた私が作った造語を使っているが、なんだかんだ自民党の議員さん、俺の論説を参考にしてるよね。
参考にしていただくのは光栄なので構わないが、せっかく参考にするなら、同時に今の少子化対策が子育て支援一辺倒で、この本質の問題である「婚姻減」や「不本意未婚」の解決には何ら寄与しないというところまで踏み込んでもらたいたいものである。
※子育て支援は否定しないが、それは少子化対策とは別物である。
石破さんは、経済政策として「物価高を上回る実質賃金増をして消費を増やす」ということも言っているが、ここも全く賛成である。
これも何度も書いていることだが、是非はともかく、もはや「結婚も出産も消費」と化しているからだ。消費意欲の低迷でもっとも「やめよう」と思うのが結婚なのである。それくらい今は結婚がコストの高いものになってしまった。
それもこれも、経済的不安を抱える若者が7割もいることの方が問題で、不安を抱えない上位3割の層だけが結婚している。
少子化は「少母化」問題であるとともに、中間層の経済問題であり、若者の安心が失われている問題であると、すべてがひとつにつながっている。
正直、的外ればかりの岸田内閣とは違い、正確に「的を見て射貫く」政策に転換していってもらいたいと切に願う。
今までのこども家庭庁のように、鉛筆なめなめの御用学者や公金狙いのシンクタンクを使うのもいい加減にやめてほしいと願う。
「正規雇用男性の労働時間を1日2時間減らすと、出生率は 0.3ぐらい上がって2035年に希望出生率 1.6 が実現される」とかまるで因果のない推計を得意げにしゃべられた日にはひっくり返る。断じてそんなことで出生率はあがらない。
ところで、石破総裁決定の瞬間から、日経先物が2000円も暴落しているんだが、週明けの月曜がブラックマンデーにならないことも切に願う。