変調の兆し:英国総選挙
英国では2025年1月までのタイミングで総選挙が行われる。これらの見通しにつき、今月以降、より情報が集まることになる。
政府が具体的な投票日を確認、発表するのはしばらく先と見られるが、我々は来年5-6月か10-11月のどちらかのタイミングが濃厚であると考えている。一部メディアでは政府が春の実施に傾いていると報じているが、経済環境の悪化を考えるとむしろ来年後半が妥当ではなかろうか。
世論調査によると労働党の過半数獲得が最有力シナリオであり、記事の通りである。この人気度合いがそのまま示されるかの試金石が10月に行われる三つの補欠選挙となる。ひとつ目の10月5日ラザーグレン、ハミルトン・ウェストにて行われた補欠選では、労働党がスコットランド民族党から議席を奪った。続く10月19日のミッド・ベッドフォードシャーとタムワースは保守党が地盤だけに労働党の勢いがはっきりすることになろう。
選挙の焦点になるのはまずは財政責任。トラス政権の際の失敗がまだ後を引くこともあり、堅実な財政を優先することは必至。労働党の影の財務相であるレイチェル・リーブズ氏は最近、現保守党政権の財政目標を着実に反映する財政ルールを打ち出しており、保守党・労働党の別はない。争点となるのは次の三つ。第一にグリーン政策。保守党指導部は持続可能性に関連した目標の一部を撤回することで、気候変動対策に対する昨今の反発を支持につなげようとしてきた。労働党はより野心的なグリーン政策を推進すると考えられる。第二に再分配。メディアの報道によると保守党の政策綱領にはいくつかの減税案が盛り込まれる可能性がある。労働党も党大会で同様に減税を打ち出すとは考え難いが、一部の増税可能性の排除は考えられる。第三に対EU関係の緊密度である。労働党は保守党よりも親EU的なスタンスをとると見られる。もっともEUへの再加盟や単一市場を模索することはないであろう。
経済状況を鑑みた総選挙への布石がどうなるか。見届けたい。