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大人の「めんどくさい」が子どもの魂を殺している。 #保育教育現場の性犯罪をゼロに

「加害者の個人情報や職業選択の自由を守るために、子どもを性犯罪のリスクに晒し続けてしまうのですか…!?」

「そんな…!」

ある省庁の会議室。官僚の方と話をしていて、口をついて出てしまった。

この国は少子化の克服だなんだと子どもを増やす議論はノリノリでするくせに、なんで子どもを大切にしようって議論になるといつもこうなってしまうんだろう。


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先日、ベビーシッターマッチングサービス大手企業の登録シッターが派遣先の子どもに対する強制わいせつ罪で立て続けに逮捕されるという事件がありました。


私自身、保育事業を運営するNPOで働いていること、そして何よりひとりの親として、今回の事件は本当に衝撃を受けました。まったく他人事ではありません。二度とこんな悲しい事件が起きないよう、何かしなければと思いました。

企業のあまりに杜撰な運営体制が明らかになる一方で、調べてみると、民間の努力だけではどうしようもない問題があることがわかりました。

そのひとつが、現在の法律では過去に性犯罪を犯した者でも保育・教育現場で普通に働けてしまうことです。

性犯罪、特に小児わいせつは極めて再犯性、常習性の高い犯罪です。にも関わらず現在は前科者が保育・教育現場で働くことに対して規制がありません。ベビーシッターマッチングサービスは、性犯罪の温床になっているのです。

私は、英国のDBS(Disclosure and Barring Service)のように性犯罪の前科やその疑いがある者は子どもと関わる仕事に就けないようにしなければならないと思います。


日本はなんでこんなことになってるの…? 当件を問題視して長く活動されている政治家の方にお話を伺うと、加害者の「個人情報の保護」や「更生の機会」が規制を作る妨げになっているということでした。加えて、憲法22条の「職業選択の自由」に抵触する可能性がある、とまで。

野田聖子議員を中心とした議員有志は性犯罪の前科がある者を子どもに関わる職業に就くことができないように規制を作ろうとしてくださっていますが、これがボトルネックとなって前に進みません。


でも、加害者の個人情報や職業選択の自由を守るために、幼い子どもたちを「魂の殺人」とまで言われる性犯罪のリスクに晒し続ける、、、そんなバカなことが本当にあるのだろうか?


納得できなかったので、本件の関係省庁の官僚各位にお話を伺ってみました。すると「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下、行政機関等個人情報保護法)」第45条の存在が浮かび上がってきました。

そもそも、行政機関等個人情報保護法は第四章(第12条)で個人が行政機関の保有する自分の情報にアクセスできる、としているのですが、この45条で例外を設けていたのです。

要約すると、例え自分自身の個人情報であっても、刑罰などに関するものについてはアクセスできない、というものでした。

第四十五条 第四章の規定は、刑事事件若しくは少年の保護事件に係る裁判、検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が行う処分、刑若しくは保護処分の執行、更生緊急保護又は恩赦に係る保有個人情報(当該裁判、処分若しくは執行を受けた者、更生緊急保護の申出をした者又は恩赦の上申があった者に係るものに限る。)については、適用しない。


この法律があるから、英国のDBSのように保育・教育現場への就労にあたって無犯罪証明書を提出してもらうことを義務付けようにもできない、と。なにせ本人であっても自分の刑罰に関する情報にアクセスできないのだから。


ここで冒頭のシーンになります。

なんでこのような条文が存在するのか…!? その場ではっきりしなかったので法律の注釈書(コンメンタール)で調べてみると、このように書いてありました。

「実際には、就職等の場面で、事業者が本人に(刑罰の)開示請求させることが考えられるため、本人に対する開示もしないことにしている」


趣旨はわかる。わかるけど、じゃあ子どもたちはどうやって自分の身を守ればいいの? 大人が、社会が守ってあげないといけないんじゃないの?

ふと隣をみると8ヶ月になる娘が気持ちよさそうにお昼寝をしていました。この子はなんて社会で生きていかないといけなんだと、とても悔しい気持ちになりました。


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でも、だとしても納得できないことがあります。里親の登録制度です。

弊会代表の駒崎のこちらの記事にあるように、里親は児童福祉法(第34条の20)でその欠格事由が明記されています。禁錮以上の刑に処せられた者や、児童買春・児童虐待を行った者等です。


都道府県等は里親の登録にあたり、里親希望者が欠格事由に該当しないことを宣誓書により確認した上で、当該里親希望者の本籍地の市町村に対して、犯歴情報の照会を行っています。

犯歴に関する個人情報なのに、普通にアクセスしています。厚生労働省からの通知で、その照会方法まで具体的に指示がきているではないか。

なんでベビーシッターはダメなんだ…?


そうやってモヤモヤしていた7月2日(木)のこと。

参議院厚生労働委員会で、田島まいこ議員が加藤厚生労働大臣に本件を質問してくださいました。先に述べた里親制度のことを引き合いに出しつつです。

「まさにこれが聞きたかったの!」というど真ん中ストライクの質問。国会答弁で一番興奮した瞬間かもしれません。


ここで加藤厚労相は犯罪歴照会の制度検討に前向きな発言をしたのですが、個人的には特に下記の部分が重要だったと思っています。

少々長いですが引用します。

そうするためには保育士や里親のような1つの免許制度とか許可制度、認可制度等がベースになっていて、それの取り消しとか認可にあたって確認する必要性があるということがまず前提になるのだろうと思っているのであります。

ベビーシッターはご承知のように、単なる届出と言うことになっている、しかも事後での届出も可能と言うことになっていますので、今の議論というのはそういった制度そのものも含めてどう考えていくべきなのかということにもつながっていくのだろうと思っております。


里親とベビーシッターの個人情報取り扱いに関する違いは、免許制度とか許可制度だと明言したのです。

言い換えれば、ベビーシッターも里親と同じように登録制にして、その欠格事由に性犯罪の犯歴があることを法律で明記できれば、保育現場からキックアウトすることができると。

この瞬間、本件の論点は加害者の「個人情報の保護」とか「更生の妨げ」、はたまた「職業選択の自由」など複雑なものではなく、極めてシンプルに、ベビーシッターなどの保育・教育現場で働く者に性犯罪の前科があってもいいのか、という点に凝縮されたと言えます。


当答弁はジャーナリスト中野円佳さんが下記の記事でわかりやすくまとめてくださっていますので、ぜひご参照ください。


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「ベビーシッターなどの保育・教育現場で働く者に性犯罪の前科って、あってもいいと思いますか?」と聞かれた時に「いいんじゃない」と答える親ってそういないと思うのです。少なくとも、私は絶対に嫌です。

だとすると、例えばベビーシッターの欠格事由に「性犯罪の前科があること」って法律で明記しない理由ってなんでしょうか。もはや「めんどくさい」以外にないと思うのです。

「めんどくさい」で子どもの未来を奪っていいのでしょうか。私はいいわけないと思います。そんな社会でいいわけないと思います。


先述の通り、現在与党を中心とした議員有志が今秋の臨時国会に性犯罪者を保育・教育現場からキックアウトする法律を議員立法で提出しようとしています。

しかし、今のままではそれは「努力義務」に留まっており、法的拘束力はありません。でも今ならまだ変えられるかもしれないんです。


そこで改めて皆さまに心からお願いです。【 #保育教育現場の性犯罪をゼロに 】とハッシュタグをつけて、SNSで発信していただきたいのです。

私は、子どもに関わる仕事をする人が無犯罪証明書を提出することを法的義務にしたいです。その為には、議員立法を頑張ってくれている議員有志の活動を世論が支援している、とういことを可視化する必要があります。

前回の記事でも同様のことをお願いしました。その時のツイートは本当に多くの方にご協力いただき5,000リツイートを超えました。本当にありがとうございました。


また、多くの著名な方々にもご拡散いただき、本当に大きなうねりになりました。


あれからまだ1週間ですが、ついに加藤厚生労働大臣が「検討する」と国会で答弁しています。皆さまの声が、しっかり政治の場に届いています。

本当にもう一押しです。

こんなチャンスは次いつ来るかわかりません。来るとしたら、その時はまた子どもが酷い性被害にあった時です。そんなのはツラすぎます。


皆さまから頂いた声は、私が責任を持って本件を進めてくださっている政治家各位に届けます。

私はこの国を、子どもに寄り添う社会にしたいです。

どうか、皆さまの力を貸してください。よろしくお願い致します!


# 保育教育現場の性犯罪をゼロに





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