テレワーク or 対面ではなく、デジタルを活用した働き方のアップデートを目指そう
やっぱり対面が良いで戻る人びと
日本生産性本部の調査によると、テレワークの活用は半減し、実施率は15.5%にまで下がっているという。コロナ禍で世界中で一気に広がったテレワークだが、パンデミックの収束と共にテレワークの動きも止まってしまった。このこと自体は、ある程度は見通せたことだろう。急激に広がったものだから、その揺り戻しとして対面への回帰があることは見通せたことだ。
しかし、このまま「テレワークよりも対面が良いよね」と言って、コロナ前に戻ってよいかというとそういうわけではない。そもそも、テレワーク自体、コロナ禍とは関係なく、「働き方の柔軟性を高める」「働き方のデジタル化を進めて国際競争力を身に着ける」という狙いがあったはずだ。特にグローバル企業では、2015年頃から、テレワーク可能な職種では導入を進めてきた背景があった。
コロナ前で諸外国は日本にダブルスコアを付けている
そもそも、テレワークの実施率はコロナ禍であっても日本は高水準とは言い難かった。内閣府の調査では、日本のピークは32.2%だ。コロナ前の2019年12月が10.3%なことを考えると3倍になっている。しかし、2021年5月のEuro foundが2020年2月に公表した調査によると、コロナ前のEU27ヶ国のテレワーク実施率は22.7%と同時期の日本の倍近い数値だ。
最も高いのはエストニアの47.3%で、次いでオランダの36.5%、フィンランドの33.1%となる。これらの国々は、コロナ前の段階なのに日本のコロナ禍のピークよりもテレワークの実施率が高い。
アメリカでは、2010年には連邦政府による「テレワーク強化法」が成立していることから、コロナ禍での普及率は85%と非常に高い値となっていた。
「やっぱり対面が良いよね」が将来への見えないリスクになる
日本国内で日本人に対してのみサービスを提供し、ビジネスが国内で完結しているのであれば、「やっぱり対面が良いよね」でテレワークから対面に戻ることは大きな問題はないだろう。部分的に、子育て世帯や介護世帯の従業員にのみ認める形式でもよいだろう。しかし、そうではないのならば、「やっぱり対面が良いよね」で済ませてしまうにはリスクが大きい。なぜなら、グローバルビジネスにおいて、働き方の常識が異なる相手と事業を行うことは余計なコストがかかり、コミュニケーション上のリスクも大きくなるためだ。
たまにニュースで、米国の有名経営者が「対面に戻れ」と指示したという記事が紹介されるが、これはテレワークの普及率が8割を超えている国で起きていることだ。たかだか15%の国で起きていることとは背景が異なる。
すでにテレワークは世界でビジネスを行う上で当たり前になろうとしている潮流の1つだ。それを踏まえたうえで、対面か、テレワークかを白黒で考えるべきではない。頭を使うべきなのは、いかにテレワークを活用して、人材の質を高め、生産性を向上させるのかという共存ありきの考え方である。
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