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ド短期で売上高めるにはエクストリームユーザーの行動パクるのが1番説

「コロナ禍」で売上を増やすには?

「コロナ禍」という異常事態に突入してから3年目、制限に次ぐ制限でガタガタだった日本経済も少しずつ復調の兆しを見せています。

一方で「K字回復」と表現されるように、復調の傾向は業界・業種で状況が全く異なるようです。「コロナ禍」で大幅に市場が縮小した産業もあれば、むしろ大きく成長した会社もあります。

例えば、日本フードサービス協会によると21年の外食産業の市場規模は19年比で83.2%に縮小しています。親の仇の如く様々な制限が課された居酒屋カテゴリに絞って言えば19年比で26.8%、なんと4分の1です。ただし、ファストフードカテゴリに絞って言えば19年比で101.8%に拡大しています。「テイクアウト」のおかげですね。

2020年の春を境に、今まで欲しいと思っていたものが不要になったり、逆に不要品が必需品になったり、価値は大きく変わりました。私の場合、直ぐ思いつくのがスーツです。リモートワークが定着してスーツは「ま、いっか」と欲しいランキング上位から圏外へ飛んで行きました。

人の行動や心理が変化すると、売上も変化するのだと今更ながら当たり前のことに驚いています。1円の売上は消費者が作っているのだ、と忘れかけていた事実に改めて気付くのです。

「欲求」が変われば「行動」は変わります。「行動」が変われば「売上」は変わります。「K字回復」とは、外的要因によるパーセプションチェンジが起こした結果だとも言えそうです。

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例えば、全日本菓子協会によると21年の「せんべい」の市場規模(小売金額ベース)は19年比で72.0%に縮小しています。さらに「チューイングガム」は81.2%に縮小しています。コロナ禍という「欲求」の変化が、行動に繋がり、売上に影響を与えたと考えます。(「チューイングガム」はコロナ前から縮小傾向にありましたが)

すなわち、売上を増やすも減らすも「消費者」次第なのです。当たり前のことをドヤ顔で文章にしてどうするんだって話ですが。

消費者とメーカー(企業)の関係性を、ざっくり図で表現してみます。(実際には、広告モデルは消費者がお金を払っているわけでは無く、該当しない場合もありますが、細かいツッコミは無しで!)

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喉が渇いたから飲み物が欲しい消費者がいる。飲み物をつくるメーカーがいる。飲み物を提供する代わりに、お金をいただく。そういう関係です。もし物・サービスを「欲しいと思った消費者」が減れば、「欲しいものをつくるメーカー」が手にするお金(売上)も減ります。逆もしかりです。

「コロナ禍」という異常事態における需要と供給の関係で考えれば、需要自体が減衰して市場が縮小していると同義でしょう。

では、売上を増やすには?

真っ先に思い浮かぶのは、自分たちメーカーの作れるものを欲しいと思った消費者が減っているなら(認知度が100%で無いのなら)、それを欲しいと思う消費者を見つけることでしょう。

しかし、消費者は物・サービスを買っているように見えて、実際にはジョブを解決するため、価値・ベネフィットを得るために行動しています。ドリルが欲しいのではなく穴が欲しいのであって、もっと言えば新生活を楽しむための良い感じの棚が欲しいのです。

先ほどの図をアップデートします。

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「欲しいと思っていたものが不要になった」のも、実際には「消費者にとって価値を感じなくなった」「ベネフィットが不要になった」のです。

すなわち「欲しいと思う消費者を見つける」とは、「コロナ禍」で価値を感じなくなった消費者が増えたけど、商品を知らなければ、従来の価値を感じて買ってくれるのではないか? という無茶な発言をしているわけです。

そんな都合の良い話、もちろん転がっていません。

しかし、メーカー側が考えてもいなかった消費者にとっての価値やベネフィットを実装することで、新規顧客を開拓できる可能性はあります。


エクストリームユーザーとの出会い

日本の製造業が生産現場を効率化させるために行っているカイゼン活動が「1を100にする」ものだとすれば、デザイン思考は「0から1を生み出す」手法。新しい事業を生み出すベンチャーが使いやすいやり方だ。
デザイン思考では、アイデアがまとまる前から試作品を作り、たたき台にする。試作品づくりに慣れたデザイナーがプロジェクトの初期から開発に深く関わるため「デザイン思考」と呼ばれる。

「エクストリームユーザーとの出会い」に対する期待の声をちょくちょく聞きます。仮説構築のための定性調査において、エクストリームユーザーとの出会いをメインに据えた企業も多いのではないでしょうか。

エクストリームとは「極端な」「異質な」という意味合いで、エクストリームユーザーとは「コアユーザーから離れた極端なペルソナユーザー」とでも言えるでしょうか。

端的に言えば「変わったお客様」です。

世の中には「変わったお客様」は少なからずおられます。2019年からフジテレビ系列で放映されている「ウワサのお客さま」も「変わったお客様」が登場する良い番組です。(最近はスーパー爆買いか食べ放題ネタばかりで面白く無いのですが)

例えば、想定外の使い方をしている、メーカー非推奨の使い方をしている、ちょっと変わった目的のために使っている人が「変わったお客様」です。

私の場合、クノールのカップスープ(コーンクリーム)はお湯で溶かさず、粉だけで食べています。ハッピーターンの粉を「魔法の粉」「合法粉」と持て囃す前から、私は「粉」に着目していました。(ドヤ)

ちなみに、カルボナーラはチーズの代わりにクノールのカップスープ(コーンクリーム)を入れると、美味しいんだよ!!

他にも、6歳の頃からチキンラーメンはお湯をかけずに、そのまま食べていました。公式が後から追いかけてきて「0秒チキンラーメン!」と宣伝されましても「もう四半世紀やってまんがな」という心境です。

ドリンクバーでバーテンダー気取ってジュースを混ぜていたら、親から「飲み物で遊ぶな!」と怒られました。しかし今や公式が後から追いかけてきて「モクテル!」と宣伝されましても「もう四半世紀やってまんがな」という心境です。

すなわち、エクストリームユーザー=変な人の変な行動とも限りません。時代が変わって、それこそ「コロナ禍」のような外的要因の変化で「サブ」が「メイン」に入れ替わることも起こり得ます。

エクストリームユーザーの特徴は「メーカー側が想定していなかった使い方を通じて、ジョブを解決している」「商品・サービスが提供する価値を、違う用途に用いている」ところです。

すなわち、先ほどのイラストで言えば「価値」「ベネフィット」を消費者は受け取っているのだけど、メーカー側の想定とは違う「価値」「ベネフィット」なのです。

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さぁ、困りました。お湯で溶かさない、麺のまま食べる、飲み物で遊ぶ。メーカー側からすれば「なんでそんなことするの?」って感じでしょう。

しかし、変わった行動には背景や理由があります。「欲求」です。行動は常に欲求が突き動かしているからです。

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なぜお湯で溶かさないのか? より濃厚な味を、舌で味わい続けられるからです。液体だと流れてしまいますから。飴のようなものです。

なぜ麺のまま食べるのか? ベビースターラーメンがあるじゃないですか。

なぜ飲み物で遊ぶのか? ドリンクバーは無限の組み合わせで無数の味が作れるからです。遊びます。作って楽しい、飲んで楽しいです。でも、ジュースって元来、そういうもんじゃないですか。

行動を見るのではなく、欲求を見る。欲求を見れば「意外と普通」かもしれませんし、実は「普遍的な価値を持った欲求」と感じるかもしれません。そして「普遍的な価値を持った欲求」は大勢に支持されるかもしれません。

すなわち、メーカー側が考えてもいなかった、少数の消費者が感じていた価値やベネフィットを実装することで、それを「新しい」と感じた大勢の消費者が再び購入してくれる(購入頻度が高まる)可能性は十分にあります。


エクストリームユーザーは都市伝説か?

もし、欲求・行動に大きな違和感が無いなら、行動自体を追認しちゃうのがもっともド短期で売上が上がる方法ではないでしょうか。欲求を満たす行動自体を「公式」が認めてしまう。

欲求も行動も見るのが上手いのは日清食品さんです。先程の0秒チキンラーメンしかり、10分どん兵衛しかり、東西でどん兵衛の味が違うとバレてから積極的に「西日本」「東日本」と言い出した気がする。行動自体を「公式」が追認するのも上手い。

しかし、世の中の企業の大半は日清食品さんではありません。

少数、せいぜいn=1〜5のエクストリームユーザーを発見しても、99%言われるのが「それって、どれくらいの価値があるの?」「実際、市場規模はあるの?」です。

まず、もしn=200もいたら、それはエクストリームではありません。コアユーザーであり、目に見えるニーズです。

行動を見るのではなく、欲求に置換して下さい。そして、その欲求を定量調査にかけて、支持されるか確認すると良いでしょう。例えばこんな感じ。

Q.クノールのカップスープ(コーンクリーム)はお湯で溶かさず、粉だけで食べる。初めて聞きますか? 面白いですか?
Q.より濃厚なカップスープを、まるで飴を舐めているように舌で味わい続けられる新商品。買ってみたいですか? 何円なら買いますか?

「面白い」「買ってみたい」のノルム値は60%でしょうか。

もはや「誰にも知られていないけど、広告宣伝すれば一気に使われる新しい価値のある商品」なんて無いのだと感じています。既存の商品・サービスに新しい価値を組み合わせて選んでいただくことが、売上をド短期で高める最短ルートではないでしょうか。

氷点下のスーパードライは、冷凍庫で缶ビールを冷やす行動をメーカー側が見たからだ、という都市伝説を聞いた記憶があります。いや、エクストリームユーザーから売上を高めた行為自体が都市伝説だという話すらあります。

しかし、改めて思うのは、「売上」とは1人1人の財布から「興味がある」「面白そう」「買ってみよう」と選んで頂いた対価です。エクストリームだろうと何だろうと「知られていないけど価値ある欲求」があったとして、購入頻度がその欲求の規模と相関を示すこと自体に違和感は無いはずです。

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