仮面舞踏会はもうやめませんか?
前回の「いつまで数えるのでしょうか? | 記事編集 | note」でTwitterに投稿した(*日常的にTwitterはしないのですがCOMEMO記事は都度投稿しています)ところ、何人かの方からの反応があり、その中で「これは同意できる方向です。 水野氏にお願いしたいのは、そのようにお考えなのであれば、今後も折に触れてこの旨を情報発信して頂きたいのです」とご要望をいただきましたので、私の著書の主旨でもある「コロナ禍が生み出した社会のゆがみへの提言」の一つをしたいと思います。実際のところ、COVIDの現況としては「流行の兆し」であることは相違ありません。
そんな状況の中で本日以下の記事が目にとまり、未だに過度のCOVID不安を抱いている方々がこのような思考転換をできるようになれば、多くの情報で視界不良となった日常生活ロードを進むための道標となるのではないかと考えたところです。
私がこれまで幾度となく発信し続けてきたことの一つとほぼ同様のことをご理解し、わかりやすい例えとして記事になさっているのです。「以前は車で移動していた」のは当然ながら発生当初は得体のしれない病原体であり、感染すれば重症化するリスクも低くはなかったことから「不安を感じて身を守る手段」としては当然のことです。しかし現在では高齢者であってもADL(Activities of Daily Living:日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のこと)がしっかりとできる方であれば重症化することはほとんどなくなり、さらに治療薬が使えるようになったことからわずかな重症化の回避も可能となっているのです(Viruses | Free Full-Text | Real-World Experience of the Comparative Effectiveness and Safety of Molnupiravir and Nirmatrelvir/Ritonavir in High-Risk Patients with COVID-19 in a Community Setting (mdpi.com))。したがって感染する確率はかわらなかったとしても重症化する確率は格段に下がっており、不安を強く感じる必要性も以前よりかなり低くなっているのです。さらに「不安を強く感じすぎると、逃げの姿勢になって適切な行動が取れなくなることがある」ということもきわめて重要なことで「危険の程度を評価すること」を怠ってしまっては自分自身の問題だけではなく周囲へ影響を及ぼしてしまうこともあるわけです。
まさにここ最近は気温の上昇が著しく「危険な暑さなので命を守る行動を」というような報道もありますが、COVIDの流行は5類に移行したにもかかわらずメディアや新聞記事等でいまだ大々的に取り上げられるものの、熱中症の話題は「命にかかわる重大な健康被害」であるにもかかわらず、日経の記事を検索してみましたがここ数日は見つかりませんでした。
さらに申し上げたいのはこれだけ気温が上昇しているにもかかわらず、炎天下でマスクをしている人たちがいまだに少なくはないことです。ここ数日で気分が悪いといって受診した女子生徒数名は症状から熱中症が疑われましたが「まさか屋外でマスクはしていないよね?」と聞いたところ「しています」と答えました。私は保護者の方に「マスクはしない方が良いですね」とアドバイスしたところ、「私は外しているんですけど・・」と仰ったので、本人に向かって「屋外では絶対にマスクはしないでください」と注意しました。もはや「個人の判断」では健康被害が回避できないレベルです。
引用記事にあるように「危険の程度を評価すること」を怠ってしまっては自分自身の問題だけではなく周囲へ影響、すなわち医療機関への負担、看病する家族などに迷惑をかけてしまうこともあるわけです。気持ちがわからないわけではありませんが、一時のはずかしい気持ち云々よりもどうか「命を守るふるまい」をしてください。
このような適切な行動を取れなくするかのように不安を募らせる記事がいつまでもつきまとうことにも問題がある印象です。これはメディア側の問題だけではなく様々な方面に忖度をして応じる有識者の態度にも問題があると言わざるを得ません。本職の方々に外野からとやかく言うことではないことは承知のうえですが、私はこのような目的の取材については「もういい加減にやめたら如何でしょう」とか「不安を煽る内容にするつもりはありません」等々お答えすると、「検討させてください」と保留にされた後は音沙汰がなくなり、その数週間後にはオファーをいただいていたメディアに他の有識者がコメントしていたりする訳です。当たり前のことですが・・。
なぜこのような不安を募らせるような書きぶりをするのか疑問を感じざるをえません。自身で検証してみると以下のような感じです。
①現状は第9波になっていると判断することが妥当だ
波の数なんかどうでもよいのです。大事なのは他の人に感染させないために体調不良であれば仕事をしない、どうしても外出するならばその時だけはマスクをする云々であり、判断したところで何も意味はありません。
②問題は「5類移行」に伴い、全国の感染者数が把握できなくなったこと
5類移行は社会機能の維持や経済活動の再開としてきわめて重要な判断で数多くの議論を重ねたうえでの結論であり、全国の感染者数が把握できないことが問題ではなく、発熱しても仕事をし続けたり咳をしていてもマスクをしていない人が真の問題です。実際に医療機関なのに「高熱でありながらマスクをしてこない人」「自身で検査をして陽性であっても最後まで申告をしない人」など、皆様からしてみれば信じられない患者さんがいるのです。炎天下の中でマスクをし続ける人も信じられませんが・・・。
③実態が見えない感染の波でも現在のCOVIDの病態からすれば不安が募ることはほとんどありません。夏かぜの実態が見えない感染の波であった場合、不安が募るばかりでしょうか?インフルエンザは遅ればせながらほぼ収束しています。
④『第9波』の入り口に立っているのに感染者数が定点把握になってしまったので実数が毎日発表されていた頃に比べて本当の逼迫感が伝わりづらい。
現場におられない識者の方には本当の逼迫感は伝わらないでしょう。常時現場にいれば毎日発表だろうが定点だろうがその状況はわかりますし、そのような人物にコメントを求めなければこのような不安だけが前面に出る記事になってしまいます。
⑤感染力が強くなったり新たな症状を引き起こしたりする可能性があります。
オミクロン株が主流になって亜系統に変化したとはいえ病態生理に大きな変化はありません。インフルエンザだって突然新型インフルエンザが発生するかもしれない訳で、そればかりを気にしていたらいつまでたっても前には進みません。不明確なことをいま強調する必要性があるのでしょうか?
⑥手遅れになる前にいま一度、基本的な感染対策に立ち戻るべきです。
注意喚起は必要ですが「手遅れになる」「油断をしてはいけない」などという書きぶりは「煽り」と言わざるを得ないでしょう。基本的な感染対策は多くの国民が学んだことです。屋外でマスクをするなどは上記に示した通り別の健康被害を引き起こす本末転倒な対応です。
⑦後遺症で苦しんでいる方が少なくないことは事実ですが、早期の治療薬投与によりその発症や症状を軽減させるような良いデータが出始めています。国民に新たな不安を与えないような建設的なコメントをすることも有識者の役割ではないでしょうか。
決して「もう感染対策をしなくても良い」と言っているわけではありません(どうしてもゼロ(しない)か100(する)かという議論になり真ん中がないのですよね・・・)。感染症はCOVIDだけではありませんので、せめて「咳エチケット」「手指衛生」という基本的な感染対策は必要な場面で実施すべきと考えます。高熱で体調不良、かぜ症状でせき込んでいる時などには他の人へのエチケットとしてのマスク着用を、トイレに入った後や体液が付着した後などには手を洗うなど、コロナ前におそらくしていたであろう衛生概念としての「当たり前のこと」は励行していただきたいと思います。感染対策は受験のように高得点を取る必要はなく、資格試験のように一定の水準が満たされていれば合格なのです。
*ちなみに「マスク」は和訳すれば「仮面」であり、本件はいまだに賛否両論として騒がれていることから、見出しでいろいろクレームされないようにややぼかした次第です。
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