真実と事実は違う。誰かが都合よく解釈すればそれはその人の真実になる
毎度、子の手の白書やメディアの記事には、一言申し上げますが、それぞれの解釈としての真実はどうでもよいが、客観的な事実を自分の都合が悪いからといってないものにするのはいい加減やめた方がいい。
真実と事実は違う。真実はそれこそ人の数だけ、人の解釈の数だけあっていい。その人が真実だと思うことはその人の真実だから。しかし、事実は違う。事実は解釈ではない。
まず、この白書の前提である日本の少子化についての要因分析だが、
①女性人口の減少
②非婚化の進行
③夫婦の出生率の低下
となっているが、①②はいいとして、③は事実と違う。
白書で出しているのは日本総研だかなんだかのわけのわからない奴が試算したデータを引用しているわけだが、
有配偶出生率要因が2020年にマイナスなっている。これは有配偶出生率が2015年と比べて減少したからなのだろうが、減少したとはいえ、2020年は73.0‰であり、まだ皆婚時代だった1985年の73.3‰とたいして違いはない。むしろ、1980年代と同等に結婚した夫婦は子どもを産んでいるのであり、何をもってマイナス要因といってるのかさっぱり理解できない。
事実として、有配偶出生率は子どもが今の倍近い年間143万人以上産まれていた1985年と大差ない。じゃなぜ、1985年と比較して少子化なのかといえば、それは婚姻数が減少しているからに他ならない。
1985年と2020年の出生数を比較すると▲41%である。一方、同期間の妻の初婚数を比較すると▲46%である。ほぼ同程度であるし、なんなら初婚の数の方が減っているのに出生数はそれよりもマシなのである。
政府の白書や御用コンサルが、都合のいい真実としてあくまで「夫婦の子が減っている」といいたがるのは、子育て世帯への支援しかできない政府への忖度以外の何物でもない。忖度に際して事実は簡単に捻じ曲げられる。
白書では、こんなことまで書いている。
賃金そのもの低さというのは妥当だが、男女の賃金格差はむしろ非婚化が進む要因ではない。逆である。皆婚時代は、その良し悪しはともかくとして、旦那の一馬力でも子ども二人を育てることができた時代だからこその出生数だった。
その事実がどこかの界隈の人間にとって不快だろうがなんだろうが知ったことではないが、そもそも明治民法から始まった日本の皆婚は、「夫の一馬力で家庭を運営せよ」という大号令から始まったという歴史的事実を消してはいけない。
だから、昔であっても金を稼げない男は未婚のままだったし、金を稼げない男というのは大抵病弱でもあったため、貧困による栄養状態も悪く50歳以前に死亡していた。だから結果として50歳時の未婚率である生涯未婚率は大正時代1%台だったわけで、あれは誰もが結婚できたというよりも、稼げない男は先に死んでいった結果である。
このサイトでも何度か書いているが、確かに江戸時代は男女とも働いていた。農村はいうに及ばず、江戸の町でもほとんどの女性も既婚者であっても働いていていた。夫婦は銘々稼ぎといっていた。夫婦といえども財産は別であり、時代劇によくあるような「借金のカタに女房の着物を質入れする」なんてことは許されなかった。それは窃盗の罪になる。
要するに、江戸時代まで男女とも経済的自立が求められたわけだが、だからこそ離婚は多く、当時多分世界一の離婚大国でもあって、幕府や藩が離婚禁止令を出すほどだった。
もちろん、その時代でも稼ぎのない男は未婚のままである。
はっきりした統計は残っていないが、男女の収入格差というより、職業による収入格差はあった。あって当然だろう。今でいう美容師にあたる髪結いの仕事をしていた女は高給取りだった。今でいう官庁勤めにあたる大奥勤めになればそれもいい給料をもらえた。
で、そうして江戸で何が起きたかというと現代とそっくりの未婚化・非婚化なのである。経済的自立をしている女は結婚をしない、一方で経済的に困窮している男もまた結婚できない。今とそっくりではないか。
生涯無子率というのがあるが、2020年のそれは男性38%、女性27%に達している。女性も3人に一人は生涯子を産まないのである。
これをさも前代未聞空前絶後の出来事のような言う大学教授とかがいるが、まったくもって無知。
1760年の郡山の人別帳によれば、女の生涯無子率は26%であり、令和の今と変わらない。もちろん、平均子ども数が3.03人なので、産んでいる母親は産んでいるが、産まない女性も少なからずいたのである。
子を産むのがいいとかそういう話をしているわけではない。日本人が皆婚で、男女役割分担が明確にされ、夫は外で仕事、妻は家で家事育児なんてことが庶民にも広がったのは明治の1898年以降の話であって、たかだか100年の歴史でしかないという事実の話を言っている。
日経の記事では、年収別の未婚率のグラフを出していろいろ書いているが、これにしたって男女年収別未婚率の「Xの字曲線」といわれているもので、率でみれば確かにそうで、だからこそ「稼げない男と稼ぐ女は結婚できない」などと煽り言葉も出てくるのだが、実際絶対人口でみれば、男女とも300-400万円台の中間層の未婚者がもっとも多いわけで、要はかつての中間層が結婚も出産もできなくなっているという部分にこそ着目すべきです。
白書が少子化の要因としてあげているもののうち、「①女性人口の減少」は確かにその通りで、私が少母化といってるものだが、これはもはやいかんともしがたいものである。「②非婚化の進行」も確かにあるが、これを乱暴に非婚化というのもいかがなものかと思う。
私は、「選択的非婚」と「不本意未婚」とを分けて考えるべきだと何度も言っている。結婚する必要のない人やしたくない人はそうすればいい。何も無理やり結婚させる必要もない。しかし、一方で、本当は結婚したいのにできない「不本意未婚」が男女とも4割以上いる。
そして男に限って言えば、ほとんどが経済的理由だ。といっても無職とか年収100万未満の話ではない。前述した通り年かつては中間層として結婚できた年収300万円台が結婚できなくなっている問題なのである。「②非婚化の進行」云々というのであれば、賃上げの話をきちんとすべきだし、賃上げなんかしなくても、税金や社会保険料などで天引きされているものを少なくとも昭和レベルに戻しただけでも随分と手取りは増える。白書として切り込むならそういうところなのに、政治家が怖くてそこはだんまりなんだな。
繰り返すが、「③夫婦の出生率の低下」などというものはない。なぜならすでにもはや中間層は結婚できなくなっているからだ。今子供のいる世帯というのは世帯年収900万以上であって、かつてのボリューム層の300-600万世帯はそもそも結婚すらできなくなっている。
子育て支援は無用だとは言わない。それはそれでやるべきだが、出生数ということを考えるならば、そんなものはどれだけやっても効果はない。あるのは、選挙対策として耳触りのいい言葉をいうくらいの役しかたたない。が、政治家にとってはそれだけでいいのだろう。
与党も野党も同類である。
結局、政治が何を目指しているかといえば、もはや日本人の出生は諦めて移民政策に舵を切ろうとしている。果たしてそれにも効果があるかね?
というのも、日本はもはや外国人が出稼ぎにくるような魅力的な国じゃないからだ。
まあ、所詮政治家にしても官僚にしてもせいぜい自分が現役の間だけ持てばいいと思っているのだろう。