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社内恋愛の支援は福利厚生? 人的資本経営の浸透が後押しする個人の幸福感向上

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

人的資本経営が大きなテーマとなり久しいですが、経営者にとって社員のエンゲージメント(働きがい)の向上は重要なテーマです。特に昨今の人材不足の影響で、必要な人材をタイムリーに採用することが難しくなってきていることも関係しています。いま活躍している人材に、より長く、より大きく能力を自社で発揮してもらうか。そのためにはキャリアの支援ややりがいのある仕事のアサイン、場合によってはプライベートな領域まで踏み込む覚悟のようです。

最近ではオープンに社内恋愛を推奨する企業もあります。ノジマでは社内婚活イベント「NOJIKON(ノジコン)」が開催されており、実際に恋愛から結婚へと発展した例も。NTTグループやりそなホールディングスなどの大手企業も、従業員向けマッチングアプリの導入を進めています。

大和総研の鈴木裕主席研究員は「米国企業は(私的な関係に対する)規定導入でリスクヘッジしている。日本企業でも導入が進む可能性がある」と指摘する。

リスクを承知で日本の企業が恋愛支援を拡充する理由の一つに、「エンゲージメント(働きがい)の向上」がある。エールの豊嶋千奈最高経営責任者(CEO)は「従業員の良縁はキャリア(仕事)とライフ(生活)の両立につながる」と説明する。

信頼できるパートナーと支え合う生活が根っこにあるからこそ、出産や育児などのライフイベントがあっても早期に職場復帰できる。「企業によるウェルビーイング(心身の健康と幸福)の実現が従業員が働ける時間の創出につながり、結果として企業価値が向上する」(豊嶋氏)という。

日本では女性就業率が上昇傾向にある。仕事を通じた恋愛は自然に増えるだろう。恋愛は私事だが、企業がオープンに支えれば組織が生きる一助になる。

日経電子版

かつて昭和の時代は長時間労働をその後の「飲みニケーション」が盛んに行われ、自然と従業員同士が恋愛に発展することが日常的にありました。終身雇用がベースですので、就職は一生に一回。家族もろとも企業に属する意識がありました。

名経営者と言われる京セラの稲盛和夫氏は、独自の経営メソッドを持つことで有名です。それは、アメーバ経営とフィロソフィ経営の二本柱で構成されており、アメーバ経営は組織を小さなグループにわけ、それごとに採算管理をするやり方。これにより多くの社員に「経営者マインド」を醸成することができ、働いてやっているというようなサラリーマン根性を打破することができるというものです。

これを精神面で支えるのが、フィロソフィ経営です。「利他の心を持ちなさい」といった、人生をより良く生きるために大切な道徳的価値観をみんなで共有することで、組織運営が一枚岩になるという考え方です。これを浸透させるために夜な夜な開かれる「コンパ」(飲み会)を通じて、人間はどう生きるべきかという哲学的な問答を繰り返していました。

冒頭の事例はこのような企業運営とは異なる、従業員のプライベートな領域に大胆に踏み込むような施策です。しかしながら、終身雇用が終わり人材流動性が増していくと同時に労働人口が急速に減る人材市場においては、いかにして自社につなぎとめるかは至上命題なのでしょう。おもしろいことに、2年前には以下のような記事が出ていました。

「職場での恋愛って、ちょっとやっかいじゃないですか」。目下「彼氏を募集中」という昨年春に社会人になった兵庫県在住の23歳女性は「なるべく職場以外で彼氏を見つけたい」と打ち明ける。

給与など勤務先の待遇があまりよくないといった経済的な理由が第一。「同僚の男性と結婚しても豊かな生活は保証されないと、冷めた目でみてしまう」

2002年に月2万8100円だった25〜29歳の男女の賃金格差は22年に1万8500円に縮小。日本経済が低迷するなか、男女の賃金格差の縮小は「職場で将来の夫を見つける」という意識の低下を招いた。

この女性の場合はさらに「プライベートで仕事のことは考えたくない」という理由も加わる。

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同僚の給与相場を知っているからこそ、職場の外で出会いを見つけたいというなかなかシビアな現実ですが、賃上げムードがこのまま続けば違う世界が見えてくるのかもしれません。

ちなみに、外資系企業の場合は社内恋愛については就業規程で定めがある場合が多いです。私の経験では米国企業になりますが、禁止されてはいないけど社内恋愛をする場合は会社に報告が義務付けされていたり、評価のレポートラインが同じ場合はダメ等々、OK/NGラインが明示されている場合もありました。

日本企業に比べて勤務評価や雇用契約がシビアで、マネージャーの権限も大きい外資系企業では、企業ガバナンスの観点で利益相反につながるリスクについては厳密に管理されています。上司と部下といった評価レポート間での恋愛関係は、潜在的なセクハラリスクもありますし、評価についても公正さが疑われる恐れがあるため、あらかじめ定義しておくことが重要という考え方です。

社員エンゲージメントの向上に特効薬はありませんが、各企業の試行錯誤がわかる記事でした。


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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

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