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お疲れさまです。メタバースクリエイターズ若宮です。

今日は、メタバースが徐々に現実に逆流し始めたよ、という話を書きます。


『ゆるゆる書道バトル』のリアル開催

ちょうど先週、8月4日5日の土日に、VRChatというメタバース空間で『ゆるゆる書道バトル』というイベントが開催されました。

「ゆるゆる書道バトル」とは?
VRChatのゆるゆる書道バトル専用ワールドで繰り広げられる、文化系ゆるーい自由詩の手書きバトル。

サイコロを振ってお題を決め、そのテーマで各参加者がお題に対する一言をVR空間内でバーチャルな毛筆で書きます。観覧者がその中でぐっと来たものを投票し、トーナメント方式で勝ち抜いていくバトルです。


もともとVRChat内でだけ開催されていたものですが、今回新たな試みとして、リアル会場も設けられました。上野の東京都立美術館の一角に『ゆるゆる書道バトル』コーナーがつくられ、VRChat内の様子をスクリーンで投影。

VRChatの中のスクリーンでは、リアル会場の様子がライブ中継され、バーチャル側、リアル側で同じお題で参加者による書道バトルが行われました。(リアル会場の投影に当たってはクローズな環境下でうつり込みの注意事項などプライバシー配慮もされていました(のでリアル側投影の写真がなくすみません))


僕はVRChat側に参加したのですが、この体験の面白かったのはVR側が主体であること。もともとVRで行われていたイベントなのもあり、VRChat側の方が参加者が多くメイン進行もVR側。メタバース側のイベントが現実世界に染み出してつながり、双方でインタラクティブに同時進行していく体験が面白かったです。(バーチャル-リアルでお互いに姿を見ながら一緒にバトルするのは新しい取り組みですがこれから増えていく気がする)

このように、バーチャル側で始まった事象が現実世界に逆流していく事例が増えてきています。僕は、これがメタバースが本格化する際の一つの面白い動きではないかと感じています。


VketRealとAkyo

7月末には、「VketReal」という興味深い試みが行われました。「Vket」とはHIKKYさんがバーチャル上で開催する「バーチャルマーケット」のことで、クリエイターや企業がブースを出展する一大お祭りイベントです。

今年は日清さんをはじめ初めての企業も参加していたり年々規模が大きくなっていて、VRChatterにとっては一大イベントなわけですが、今回初の試みとして、バーチャルマーケットのリアル拠点が秋葉原で開設されました。

VketRealには、これまでバーチャル側で楽しんでいた多くの人が参加し、大いに盛り上がっていました。これもまた、バーチャル→リアルの逆流現象です。(そしてVketRealでも、バーチャル側とリアル側で水鉄砲で打ち合いゲームなど、現実とVRの連動企画が色々ありました)


そのVketRealにもガチャポンが設置されていたのですが、Akyo現象もバーチャル→リアルの一例でしょう。
AkyoというのはVRChatの中で生み出されたなんとも言えない佇まいの不思議生物なのですが、

https://vr-lifemagazine.com/akyo-gacha/

これがミーム化し、色々なバージョンが生まれ、人気になりました。


そして人気の出たAkyoは徐々にリアルに進出。「あきょぬい」というぬいぐるみになったり、ガチャポンで展開される事態に。

このように、メタバースから現実世界への逆流の事例が増えています。


リアルが主、からバーチャルが主への地殻変動

こうしたバーチャル→リアルの事例が増えてきたことは、メタバースが一過性の盛り上がりではなく着実に文化創出の場になってきた証左であり、またここからさまざまな事業可能性が開いていく予兆だと思うんですよね。

現実を補完・拡張する方向から、主流・起点へと逆転する方向が出はじめている。

これまで、メタバースはどうしても現実世界に対しては補助的存在というイメージがありました。たとえばバーチャル空間内に現実の街の再現がされたとしても、それはある意味で「現実」の劣化版でしかなかった。

あるいは、「現実とバーチャルの融合」であるARやMRでも、バーチャル要素は現実を彩る追加物として重ねられていたと言えます。そして基本的に重ねられるバーチャル側の世界は「つくられたもの」で、ポケモンGOなどでも決まったキャラクターが出るだけでした。


しかしたとえば今回の『ゆるゆる書道バトル』では、バーチャルはリアルに対して「従」の関係にはありません。単につくられたものでもなく、メタバース内には実際に人(や動物)がいて、生きられているもう一つの世界があります。現実にただバーチャルを重ねているのではなく、2つの空間はそれぞれに存在し対等の関係でつながっていて、それどころかむしろバーチャルが主導的になっています。


新しい情報メディアは最初は補助的なツールとして始まります。しかしそこに住む人が生まれ徐々に居場所になると、文化の創出の起点として重心の移動が起こります

インターネットも当初は現実の補助ツールとしか思われていなかったかもしれませんが、やがて人々の生活のメインになりました。今やソーシャルやコミュニケーション、そして消費のほとんどはインターネット上でされています。オンラインが主流になったことで現実が「オフ会」になり、2chから『電車男』が生まれ小説や映画になりました。かつては文化をつくっていたマスメディアは、SNSで話題になったものを後追いで取り上げています。


原価の低下から生まれる創造機会

基本的に、テクノロジーというものは原価を下げます。

リアルイベントを企画し場所を借りて集客して実施するのに比べるとバーチャルなイベントはコストが安いですし、モノづくりにおいてもロットや在庫の問題がありますが、デジタルデータは基本的に原価はかかりません。だからこそ先にバーチャルでミーム化が起こり「あきょぬい」が生まれました。

このように、これからはメタバースで生まれた企画や需要が、現実世界において後から展開されるような事例が増えていくのではないでしょうか。何しろ新しいことを試すのにはメタバースの方がコストが低いので、プロトタイプやテストマーケ的にでもまずはメタバースで試してみるケースが増えるでしょう。

のみならず、これからメタバースの人口が増えていき、メタバースでの生活時間があがればAkyoの例のようにメタバースの中で愛着やニーズ、そしてトレンドが生まれます。今はリアルの街を再現するデジタルツインが主ですが、今後はバーチャルで人気になったワールドがリアルに建築されるようなケースも出てくるでしょう。


これまでは「リアルファースト」でバーチャルは補助的でした。しかし、これから「バーチャルファースト」になり、消費行動はメタバースで先に起こりそれが現実に逆流してくる。今起こり始めているメタバース側への重心のシフト、ここから事業としてのメタバース活用は本格化していくのではと思っています。



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