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増えない日本企業の女性取締役

日本の女性活躍推進が世界最低レベルだとメディアで報じられるのは、悲しいことに珍しいものではなくなっている。女性の就業者数は改善されたものの、男女の賃金格差は依然として大きく、組織内の重要なポジションに女性が就いているケースも少ない。

日系xwomanの調査によると、上場企業の半数以上で女性取締役がゼロだという。業種によって開きはあるものの、女性活躍の文脈において日本企業の多くが世界的に遅れているという事実は確かなものだろう。

女性活躍の推進、とりわけ管理職や役員クラスの責任あるポジションに女性がいないという問題は、まったくもって新しい話題ではない。多くの企業でも自社の課題として認識されている。しかし、なぜ状況は改善しないのか。

担当者の方と話をする中で感じることは、責任あるポジションに女性を増やすことの合理性が見いだせていない企業が多いということだ。日本経済や日系企業の取り巻く環境が厳しい状況にあると言いつつも、それでも劇的に状況が悪化しているということはない。競争力が落ちているといっても、世界第3位のGDPを誇る経済大国である事実に変わりなく、企業の国際競争力も欧州各国と比べると優れている。企業の平均寿命も長く、安定している。つまり、厳しい状況にあるものの、大きな組織転換をしないといけない状況に陥っている企業は少なく、無理にでも女性の管理職や役員比率を高めないといけないインセンティブに乏しい。

現在の組織体制の延長線上で、女性管理職や役員が生まれてくれれば良いが、もちろんそう簡単な話でもない。既存の組織体制が、男性社員向けに最適化されている中で、マイノリティである女性が上のポジションを目指すことは容易ではない。女性活躍推進の議論では、「女性社員に下駄をはかせるのは、果たして本当に良いことなのか」という話題が必ずと言っても良いほどに上がるが、既存のシステムが「男性社員に下駄をはかせてる」状態からスタートであるという前提を忘れていることも多い。そのため、女性従業員の目線からは、キャリアの見えない天井が存在するように感じてしまう。結果として、「出世したくない既存女性社員」と「現状の延長線上で解決したい経営者側」から、女性管理職や役員を増やすことの合理性が失われてしまう。

同じような問題は、80年代や90年代の欧米でもみられた。米国では、企業の新陳代謝によってこの問題の打開策とした。IT系をはじめとした新興企業では男性優位な組織体制を築く必要がない。それどころか、組織拡大において優秀な女性層を取り込まないことはデメリットでしかない。欧州では政府による影響力が強く、政策によるリーダーシップで打開策を講じてきた。フランスでは、女性役員比率を一定数満たさない上場企業では罰則が与えられた。

組織体制を変えることは容易ではない。女性活躍推進が重要な経営課題であることは誰もが認識している。しかし、本業があるなかで、どれだけそこにリソースを注ぐことができるかというと難しいという企業が多いのが現状だろう。しかし、裏を返すとベンチャーや中小企業には、そこに機会が眠っているともいえる。

能力面でいえば、男女の間に有意な差は存在しない。であれば、キャリアの見通しが厳しい大企業ではなく、ベンチャーや中小企業が積極的に女性が活躍しやすい環境を整備することで、企業成長の原動力とすることができる。現に米国の多くのベンチャーやスタートアップが同様の方法で優秀な女性を活かして成長を遂げてきた。

日本の女性活躍推進が遅れているという事実は、これから組織体制を作っていこうというベンチャーやスタートアップ、中小企業にとって追い風となるポテンシャルを秘めている。

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