なんだこのゲーム?
なになに、『進め!ケンタロウ』…?
なんかずいぶんしょぼいゲームだなあ…まあいいや、STARTっと
お、はじまったぞ
お、これがケンタロウか。
『進め!ケンタロウ』だからとりあえず進むのかな…
お、歩いた!
(しばらく進む)
何も起こんないな…
(さらに進む)
あ、なんかある!
旗か…?
取ればいいのかな…
とりあえず取ってみるか…
お、STAGE1クリア!?
やったぜ!
旗を集めるゲームなのか…?
(もっと進む)
お、また旗があった!今度は赤いぞ!
いけ!
進め!ケンタロウ!
STAGE2クリアーーーー!!!!!
・・・・
って、何が面白いんじゃあああああああ!!!
・・・・え、
…てかこれだけ?他にすることないの…?
進んで旗取るだけ…?何このクソゲー…
いや、なにかあるはず、、、ぐりぐりぐりぐり…
おっ!おおおっ!
道から出れるぞ!
別に道に沿って進まなくてもよかったのか!
ぐりぐりぐりぐり…
でも特になにもないな…
スタートのほうに戻ってみるか…
戻れ!ケンタロウ!!
駆けろ!疾風のように!
(スタート地点到着)
ん・・・!?
あっ!
こっちにも進めるぞっ!そうか!ほんとのゴールはこっちにあるのかも!
・・・・
でも、道に沿って進むとは限らないからな…もう騙されんぞ!
北だ!北へ進むんだケンタロウ!
ぐりぐりぐりぐり
(北へ進む)
ぐりぐり
(北へ北へ進む)
・・・・
何もない…
何…
何なのこのゲーム…
何のゲームなのーーーー!ねえ誰かおしえてーーーー!
「進む」の3段階
お疲れさまです。uni'que若宮です。
今日はちょっと趣向を変えたスタートしてみました。
いやー、どうですかこのゲーム?
…なんというか、なかなかにつまんないですよね…
Scratchというプログラミングのプラットフォームで10分くらいでつくったネタゲームなのですが、子供でも割とすぐに飽きてしまいました…
このゲームには一応、いくつかのステップがあります。
1つ目のステップは、用意された道を進む段階。画面上に用意された「道」らしきものにしたがって一方向に進んでいく。
やがて、旗をクリアしてステージを一つクリアする。そうすると次の旗が出て、またそれを目指して進んでいく。
2つ目のステップは一方向にステージを進むことに飽きて疑問をもち、別のことを試す段階。そこしか通れないと思っていたけど道にはとくに制約がなく、底をはみ出しても進めることがわかってきます。そして、道がなかったところを進むと歩いたあとが道になり、道の分岐が増えてきます。もしかすると、もともとあった道も最初からあったのではなく、誰か先人が通って出来た道だったのかもしれません。
3つ目のステップは制約がなくなる段階です。スタート地点までもどってみると、実はそもそも全くちがう方向に進めたことに気づきます。最初の画面で右向きにケンタロウが立っていたので、なんとなく右に、しかも道に沿って進むのだと思いこんでしまっていたのですが、まったくそんなルールはなかったわけです。
思い込みから解き放たれ、ケンタロウはいまや、どこにいくにも自由です。
しかし、進めど進めどゴールらしきものは用意されていません。どうやらこのゲームには与えられた「ゴール」というもの自体が存在しないのかもしれません。
あなたならどうするでしょうか?どこへ向かい、何をしますか?(ゲームをやめる以外で笑)
人生の「守破離」
雑につくったゲームだったのですが、これが結構人生にも似ているな、と思ってこの記事をかいています。
日本では3歳くらいからほとんどが保育園or幼稚園→小学校というみんな決まった道を進みます。ケンタロウのようになんとなく目の前にある道をみんなが通る道と信じて進み、用意された旗(受験や就職)を目標にしながら進んでいきます。道がそもそも誰かがつくった「前例」だとすると、この段階は「前例を辿る」段階だということができます。
しかし、ある時ふと、この「誰かに用意された道」を進むことに意味があるのか、と疑問が湧くことがあります。道が決まっていることは窮屈ですし、そもそも、みんながすでに通っている道を通っても、世界にはほとんど変化がありません。
そこで一部の人は、まだ誰もやっていないことを試すようになります。道から踏み出して進む人がいると、進んだ人のあとに、新しい道ができます。つまり、行動によって「前例をつくり出す」段階です。
新しいことにチャレンジし、新しい道をつくることはそれ自体楽しいのですが、それを繰り返しているとやがてそれ自体も空虚なものに感じられてくるかもしれません。色々とやってみたけど、そもそもこのゲームに何の意味があるのだ?とそもそもの疑問が湧いてきたりします。
制約はすでになく、何をするにも自由です。しかし、先ほどのクソゲーでみなさんが感じたように、この「自由」は「無意味」や「虚無感」と表裏です。
自由度がもっとも高く、何をしてもよい。しかし逆に何をしたらいいかわからない。
この段階では「与えられたゴール」ではなく、自ら「目的をつくり出す」ことが必要です。元の道に戻って旗を集めまくるのでもよいでしょう。あるいは自分だけの広い立派な道をつくることもできます。ナスカのような地上絵を描くことだって可能です。「進め!」に反して一歩も動かない、ということだって自由です。
これら3つの段階は、芸事の「守破離」にも似ています。「守」で型を学び、それをやがて「破」り、最後にはその人ならではの「自分」だけのあり方、その自在の境地に達します。
「守破離」に例えると分かる通り、最初に誰かが通った道=前例をたどり、「守」をすることに意味がないわけではありません。むしろそれはその後の「破」そして「離」のために、とても大事なことです。
しかし、同時にここで注意しなければならないのは、「守」はあくまで「離」のための手段に過ぎない、ということを思い出すことです。しばしば多くの人が、「守」を目的化してしまい、「前例」や「型」の中にとどまってしまいがちですが、道の中だけを進んで旗を取り続けることは、世界を知る可能性をとても狭めることでしょう。いつかは用意された道やゴールを「離」れて、自分らしいゴールと自分らしい道をつくりだすことが必要なのです。
人生はクソゲー。
多くのひとが、冒頭のゲームをクソゲーだと思ったでしょう。
なぜなら、そこにはクエストやミッションがまったくなく、なんのためにプレイするかという理由が与えられていないからです。自由には動けるが目的がないゲームはゲームデザインとしては絶対にアウトで、クソゲーそのものでしょう。
しかし実は、人の人生というのは、このクソゲーのようなものなのです。
勿論、実際の人生ではこのゲームほどなにも起こらないわけではありません。道も旗ももっと沢山の種類が用意されていますし、今回のコロナのように「敵」のようなものにエンカウントしたり、他のプレイヤーもいるので「競争」のようなこともあります。
しかし、そういった小さなクエストがいくらあったとしても、ゲーム全体の目的(ゴール)は用意されてはいません。
いいえ、実際には人生というゲームのゴールは全員に用意されています。「死」です。普通のゲームのように、特定の「最後のボス」がいて、達成感の絶頂でエンディングを迎える、というものではなく、エンディングは人生で最も弱った時におとずれるのです。「死」がゲームのエンディングだとしたら、僕らはできるだけ早くエンディングが見れるように頑張っているのでしょうか?
そうではないとすると、「死」という終わり方とは別にゲームの中で「目的」を自ら生み出す必要があります。目的をつくり出すことでゲーム自体を楽しくするのは、人生においてはゲームデザイナーではなく、プレイヤーの仕事なのです。
あるいは見方を変えれば、人生こそ究極の「オープンワールド」ゲームだという事もできます。自由度はそれこそ無限です。先日こちらの記事でも書きましたが、世界は答えのない不良設定問題であり、だからこそ可能性が無限なのです。
「離」の境地にいる人はこの自由の無制限さ、無意味さをこそ楽しむでしょう。冒頭のゲームをみて、「面白そう…ほしい…」と思った奇特な方がいたら、あなたこそ「離」の境地に達した人生の達人かもしれません笑。一方、誰かに用意された道や旗を追いかけて来た人にとっては目的をつくることはとても難しいことに思えるでしょう。
あなたの人生を『進め!ケンタロウ』に例えると、今あなたはどういうゲームの仕方をしているでしょうか?誰かがつくった道を進み、誰かが立てた旗を追いかけているでしょうか?それともその道から踏み出して、藪にはいり、細い獣道をつくりはじめているでしょうか。さらにその先で、自分だけのゴールを自分で設定できるようになっていますか?(「離」の段階に一度行った人もまた、気づくと自分が新しくつくった道=前例にとらわれてしまうこともあるので注意が必要です)
さきほど「守破離」の例でいったように、3つの段階にはどれも意味がありますから、いま第一段階だとしても焦る必要は全くありません。大事なのはしかし、その先に待っているのはゴールの与えられない、無限の可能性がある人生であり、いつかそれを楽しめるようになることです。
そしてこれからの時代には、「破」「離」の段階がますます重要になるでしょう。こちらの記事にあるように、「慣性の法則」から抜け、「忠実な運用者」よりも「仕組みづくりができる人」が求められます。
とはいえ、こういったマニュアルを読んで「8つの人材像」に合うように生きるのではそれもまた「守」に陥ってしまいます。参考にしつつも、あなたはあなたの目的やルールをつくるのです。
そして「離」の状態になった時、あなたはこう思えるかもしれません。
人生はクソゲーだ。だから面白い。