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転勤が過去のものになる日まで

「転勤」という言葉は、とても寂しく切ない響きがある。

私は、とある町のプロジェクトで、その地域に引っ越してきたばかりである女性と一緒に働くことになった。彼女は笑顔がとても素敵で、頭も切れて仕事が早い。彼女のような優秀な人が、なぜこんなにも小さな町のプロジェクトに多くの時間を割いてくれているのか気になって話を聞いてみた。

彼女はいわゆる転勤族の妻だった。旦那さんは3年毎にいろいろな土地を転々としているという。とっても素敵な笑顔で話すので、彼女自身がそのような暮らし方に満足しているのかと思ったら、本当は、数年前にやめた学校教員の仕事をやりたいのだという。

しかし、3年に一回の転勤がある今は教員としての復職は難しい。だから、その土地の色々な地域のプロジェクトに関わることで、少しでも社会貢献をしたいのだと話してくれた。

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「転勤」は「安定」とトレードオフにあるもの**

多くの女性のキャリアを断絶させる「転勤」。この制度は、(転勤についていくため)女性が専業主婦になることを前提に運用されている。

会社が定年まで社員を雇用しつづける条件と引き換えに、社員は在勤期間中の転勤をほぼ無条件に受け入れる。つまり、クビにならない代わりに、自分の住む場所や期間の「決定権」を企業に差し出しているのだ。

多くの場合、男性が転勤がある会社で勤めてしまうと、先述の女性のように女性が一定の地で働き続けることは困難になる。とある調査によると旦那さんの「転勤」についていくため退職する女性は年間10万もいるという。

また、家族や子供と離れ離れになるケースも多く男性にとってもストレスが大きい。実際に私の知人(男性)は、東京から地方出張になった結果、転勤から半年後には、うつ病になってしまった。

送別会をしてから1年後、やつれた姿で家族と一緒に東京に戻ってきた彼を見ながら、自分の暮らす場所の決定権は自身が持つべきだ。そう強く思ったことがあった。


終身雇用の終焉と転勤制度の機能不全

2019年、トヨタ社長から飛び出した「終身雇用の継続は難しい」という言葉。その言葉を聞くまでもなく、多くの人が気づいている通り、日本企業のほぼ全ては、従業員を生涯、雇い続けることはできない。しかし、それでもなおこの「転勤制度」は多くの企業の中で現在も運用されている。

豊かに生きるために必要なもの

「転勤」と聞くと、私は思い出す映画がある「マイレージ・マイライフ」という2010年の作品だ。主人公ライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、1年の9割以上をリストラ担当として企業の言われた土地に出張する。

キャリア(マイル)を追い求めて生きていくことに生きがいを感じている主人公が、ある2人の女性との出会いや自身のキャリアを脅かされることによって本当の幸せとは何かを気づいていくストーリーである。

主人公がマイルを積み上げてステイタスを手にしていく旅路と、転勤族が色々な辞令を受け入れてキャリアアップしていく過程は、どちらもゲームをクリアしていく達成感があるのかもしれないと思いながら見たことがある。

人生を生涯支えてくれるのは近くにいる友人たち

個人の幸せは身近な人間関係に寄与する。古より言われていた事実であり、私たちが忘れがちな真実である。

先の見えない時代に、自分の人生を生涯支えてくれるのは、企業ではなく、友人であり知人だ。

何かあったときに助けたい仲間が近くにいること、また自身を助けて貰える人が周りにいることが、これからの時代、一番のセーフティーネットになる。

多くの企業の担当者も従業員も気づき始めている。だからこそ、「転勤は過去のもの」そうなる日も遠くはないと思う。

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