宇宙飛行士に、転職だっ!
こんにちは。新規事業家の守屋実です。
自分は、じつはJAXAの職員だったりもします。(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の招聘職員として新事業促進部事業開発グループ上席の雇用契約をまいている)
ので、今回は「仲間募集っ!」という観点も含みつつ、以下の日経新聞の記事について、補足をさせてもらいたいと思います。
求む。国際宇宙センターへの単身赴任、月面基地への長期出張の可能性あり。
この人材募集のメッセージ、なんか、1900年の南極探検隊の求人募集みたいですよね。(笑)
「探検担任を求む。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い月日。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る」
でも、ホント、同じくらい魅力的で、夢に溢れるものであると同時に、やはり同じくらい「至難でもある」ので、それも踏まえて上で、この最高にチャレンジな任務に、本気の興味を持っていただけたら嬉しいです。
募集内容。
今回の募集の背景なのですが、「JAXA宇宙飛行士は現状7名、平均52歳。このままでは、月探査が活発化する2030年には定年退職などで2人となってしまう」というものがあります。
これ、もしかしたら、人によっては、想像と違う現状なのではないでしょうか?じつは守屋も52歳。自分と同じ年齢が平均年齢というのは、意外でした。自分の肉体的、精神的な力量を考えたら、ホント、飛行士の方々はスゴイなぁ、と。
ちなみに、今回の応募者のうちの合格者は、2023年4月にJAXAに入社して訓練を受け、2025年3月ごろ宇宙飛行士に認定される予定とのこと。人生を変える2年。人生を賭けるだけの価値があるのではないかと。
応募、ぜひ。
守屋の職務。
冒頭の記載通り「新事業促進部事業開発グループ」に所属しています。この部署は、何の部署なのか?はい、その名の通り、JAXAの新規事業開発を担っているのです。
新規事業って、普通、前提が地球じゃないですか。でも、それがJAXAだと、地球外になる。しかも、地球外のなかでも、地球を脱出する技術(≒ロケット、衛星など)だけでなく、月や火星に到達した後の技術(≒宇宙での生活、日常的な衣食住など)についても、考えていたりするのです。
2040年には月に1,000人が移住しているというのが世界的に抱かれている宇宙の未来構想です。今は国の威信をかけて、強靱な心身の宇宙飛行士を送り出しているので、フリーズドライの形状となっている宇宙食でも任務に耐えることができるし、「おいしい」や「まずい」ではなく、体を維持するためにモノを食べるという意識でいられます。
ただし、民間人1,000人が月に移住する時代では、そうはいきません。一般人が「ふつうの暮らし」に近い食品を求めはじめ、そうなると「ステーキが食べたい」とか「寿司が食べたい」といった食欲に対応していかなければならないのです。
でも、当たり前ですが、月では牛は飼えないし、海もありません。では、どうするか?その制約条件の塊のなかでの解を、みなで知恵を絞っていくのです。
地球ビジネスの宇宙転用。宇宙ビジネスの地球転用。
「みなで知恵を絞る」を、実際にやっているものとして、以下の2つを、ご紹介です。
ひとつは、SPACE FOODSPHEREです。SPACE FOODSPHEREでは、月面1,000人の居住を可能とする月面基地を構想し、宇宙という極限環境における暮らしの課題を抽出、究極の食のソリューションを共創することを目標としています。
もうひとつは、Think Space Lifeです。Think Space Lifeでは、宇宙飛行士による座談会を開き、「宇宙での暮らしの困りごと」について、大いに語っていただきました。そのナマの声をまとめたのが、Space Life Story Book です。
こうして「地球ビジネスの宇宙転用」と「宇宙ビジネスの地球転用」の両方を、日々考えているのです。もちろん、検討の対象は、明るく楽しい夢物語だけではありません。地球で起きることは、宇宙でも起きる可能性があるのです。つまり、病気も、事故も、犯罪も。とくに犯罪は、逃げ場のない極限環境下で、人と人の疑心暗鬼が集団で燃え上がってしまったら致命傷になります。良好なコミュニティをどう構築し、維持するのか。リスクマネジメントの視点は、最大級に重要な点であったりします。
そう言ったことも含めて、それでも宇宙は魅力的で、人類は必ず残されたフロンティアを切り拓いていくのだと思います。