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「地方在住、年収1千万超、レジャー楽しみ放題」という夢のある働き方

ニトリが札幌でデジタル人材を増強

北海道の雄として知られるニトリが、創業の地である札幌でのデジタル人材の採用に積極的な姿勢をみせている。同社は、地方発大企業によくみられる創業の地と東京の二都市に本社と本部を持つ組織構造、俗にいう日本社制を採用している。ヒト・モノ・カネといった経営資源の調達が容易な東京を本部として本社機能(経営企画、商品開発、人事などのバックオフィス関連)のほとんどを集約している。
一般的に、東京に本社機能を移転すると、創業の地である本社は本社工場でもない限り規模を縮小していくことが多い。ニトリもメーカー機能は持っているが、商品の9割以上をインドネシアやベトナムといった海外工場から調達している。しかし、ここ数年、ニトリは札幌本社をデジタル拠点とするべく規模の拡大をしている。

テレワークで見直される地方で働くライフスタイル

2015年頃から働き方改革が日本全体で推進され始めるようになり、オフィスに来なくてもいつでもどこでも働ける勤務形態が広まってきた。2017年には、日本航空が休暇利用中に仕事を行うテレワークを可とする「休暇型」のワーケーションを導入し、働くうえで東京に必ずしもいる必要がないという考え方も出てきた。そして、2020年から生じたコロナ禍によってテレワークが進み、いつでもどこでも働けるというライフスタイルは急速に広まった。
日本航空でもワーケーション導入直後の利用者は11人しかいなかったが、2020年度には述べ人数で400人を超す社員がワーケーションを利用するようになった。

東京から、地方に本社を移転する会社も出ている。パソナは2020年秋に本社機能の一部を兵庫県の淡路島に移した。経団連が2020年11月に行った調査では、東京からの移転に肯定的な反応を示した企業は22.6%だ。2015年の調査では7.5%だったことを考えると飛躍的に伸びている。

地方の企業が東京に本社機能を移す大きな理由の1つが人材獲得だ。しかし、どこでも働くことができるテレワークやワーケーションが推進すると、東京に住んだまま地方拠点でも働ける。逆に、地方に住んでいても東京と同程度の労働条件を得ることも可能だ。前者では、AIG損保の転居を伴う異動の廃止が挙げられる。後者では、アクセンチュアが在宅勤務を前提に居住地を自由に選ぶことができる制度の導入を発表している。
そして、ニトリのデジタル人材増強も後者のパターンだ。規模の拡大にあたって、入社時の年収が1200万円を超えることも可能となっている。地方の人件費は安く、東京が高いという図式が崩れる。
家賃などの物価を考えると、同程度の収入を得ているのであれば地方の方が生活水準が高まる。また、札幌の様に観光資源が豊富な地方都市であれば、東京では気軽に楽しむことができないスキーなどのレジャーも満喫しやすい。筆者の住む大分県で言うと、温泉は毎日でも入りたい放題だ。仕事帰りに満点の星空の下で露天風呂を楽しめる。

テクノロジーの進化とコロナ禍によって、私たちの働き方の自由度は飛躍的に高まった。当然、急な変化には歪みが生まれやすいために、それによるデメリットやリスクは存在する。個人的には、テレワーク下での新入社員のOJTには懐疑的だ。それでも、土地による働き方の制約がなくなることのメリットは大きい。ニトリの札幌でのデジタル人材増強の取り組みが、日本の働き方と地方経済の在り方を変える切っ掛けの1つとなることを期待する。

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