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米大統領選挙と為替相場~ドル円はまた「蚊帳の外」?~

米大統領選挙(11月3日)まで3か月を切りました。米民主党も党大会を経て、正式にバイデン氏を大統領候補として決定したことが20日、大きく報じられました:


この点、筆者においては金融市場、とりわけ為替市場にとってのリスクをどう考えるべきかという照会を頻繁に受けるようになっています。最近では大統領選挙にまつわる不透明感がドル安相場の主因ではないのかという指摘も散見されるようになっており、実際にそのような報道もありました:

新型コロナウイルスの感染拡大を除けば、米大統領選挙が下半期最大のリスクイベントであることは間違いないでしょう。

この点、8月11~12日にQUICK社と日経ヴェリタスが外為市場関係者を対象に実施した共同調査では米大統領選挙および議会選挙が為替市場に与える影響について参考になる結果が示されています。図に示されるように、「トランプ大統領勝利、上院で共和党勝利」でドル高、「バイデン大統領誕生、上院で民主党勝利」でドル安という意識が大勢です

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しかし、「バイデン大統領誕生、上院で民主党勝利」だったとしても、30%弱がドル高を回答としているのも事実でして、バイデン・民主党シナリオに転んだ場合の不透明感の濃さを感じます。そもそも、これほど民主党の躍進が報じられても金融市場の反応は限定的です。結局、バイデン氏の政策運営について未知数な部分が小さくないため、選挙結果だけからでは何とも言えないというのが市場参加者の胸中なのではないでしょうか

今後、選挙本番が近づくに連れて民主党の政策が具体化し、市場も実感を持って価格形成を始めることが予想されます。とりわけ、中国に対する姿勢が軟化するのか、それとも現状維持なのかという点については関心が高いようです(図)。今後、バイデン氏の中国関連の言動が徐々に市場を動かす材料として意識されてくるものと思われます:

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また、結果がねじれた場合(「バイデン大統領誕生、上院で共和党勝利」、「トランプ大統領勝利、上院で民主党勝利」)については、ドル高よりもドル安を予想する回答の方がはっきり多くなっています。この点、金融市場は不透明な事象をすべからく嫌悪するため、政権運営の停滞を予感させる「ねじれ」の結末からドル安を予想すること自体に違和感はありません。

また、割合こそ多くないですが、「その他」と回答した向きにおいて「ドル売り自体が米大統領選挙までのテーマなので、選挙結果にかかわらずドル高」という回答も見られています。確かに、結果はどうあれ米大統領選挙が終われば「不透明感の解消→ドル買い戻し」という展開になる可能性は相応にありそうですが、その場合、裏を返せば、あと2か月以上、ドル売りが続くという話でもあります。ユーロ相場および円相場の水準感は相当変わることを覚悟せねばなりません。

ドル/円相場はまた「蚊帳の外」?
上述の調査結果からも推定される通り、トランプ大統領再選ならば円安・ドル高、バイデン大統領誕生ならば円高・ドル安というのがドル/円相場にとっての現実的なシナリオと見受けられますが、近年のボラティリティ低下が意識されているせいなのか、「どちらに転んでも大して動かない」という思惑も強いように見えます(図)。

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ドル/円相場の水準感に関し、回答者の平均を見れば、どちらのシナリオを前提にしても「102~110円」というレンジに収まっている印象です。バイデンシナリオにおいて95円という回答者も見られますが、トランプシナリオでも98円という回答者が存在しており、2つのシナリオでドル/円相場を取り巻くムードが変わると考えている節はなさそうです。

実際のところ、7月以降、ドル安相場が加速しても円相場はユーロ相場ほど動いていません。大統領選挙で何らかのトレンドが形成されるとしても、円相場だけ「蚊帳の外」になる可能性は確かに感じるところです。これは昨年来見られている兆候であり、そもそも為替市場でドル/円という通貨ペアの取引量が落ちていることの裏返しではないかとの見方もあります。また、昨年や一昨年は貿易収支が概ね均衡しており、アウトライト取引のボリューム自体がマクロ的に見ても落ち込んでいたという指摘もありました。この点、今年上半期では▲2兆円を超える貿易赤字が出ているため、ドル高相場となれば円安方向のスピードは出やすいという考え方もあるでしょう。その意味でドル/円相場に方向感が出るシナリオがあるとすれば、ドル安優勢のバイデンシナリオよりもドル高優勢のトランプシナリオの方に警戒したいところです。

いずれにせよ、現状で優勢が伝えられるバイデン氏の政策運営について具体的なイメージが未だ抱けないため、市場参加者も「関心は高いが、価格形成には反映できず」というのが現状に近いのだと思います。同氏の政策案が具体化するに伴って、為替市場もビビッドに大統領選挙関連の材料に反応するようになることが予想されます。


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