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Yahoo!とアスクルの件からの学び〜契約書で抑えきれないリスクをカバーするために〜

 みなさま、こんにちは!エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。初の著書「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」(1万部突破)に続き、8月9日には二冊目の著書となる「日常が学びに変わる!経済学の本」が発売されます。これも、皆様の支えのおかげです。また、今年の6月に就任させて頂いた、東証一部シーボンでの社外取締役業務も励まさせて頂いてます。こうして、様々なことに取り組めるのも皆様のおかげです。いつもありがとうございます!

 今回は、何かと話題のYahoo!とアスクルに関する経済ニュースに焦点をあてます。日経記事にもあるように、アスクル株の約45%を持つ、Yahoo!がアスクルの岩田社長の再任に反対しています。その原因の一つは、Yahoo!とアスクルが構築してきた「LOHACO」事業の譲渡をYahoo!がアスクルに要求し、アスクルが断ったことがあるとも報道されています。

また、NewsPicksの記事ではYahoo!はアスクルの業績不振も理由に挙げているものの、アスクル側は論理に反しているとして訴訟しても戦うとしています。こちらの記事には、アスクルの岩田社長が興味深いことを言及しています。

2012年に契約を交わした時から、イコールパートナーシップを明記して、独立した上場企業としてお互いを守ろうと、かなり言ってきました。
2015年の再契約の際には、アスクルとしては(資本上の)リスクが高まったので、ヤフーによる新たなTOB、株式の買い増しができない条項も加えました。
ヤフーに資本の論理があるとすれば、アスクルにはそうした契約があります。

記事の引用部分を見る限り、事前に口頭なり契約書なりでお互いを尊重し合う経営を明示していたことが伺えます。でも、なぜこのような事態に陥ってしまったのか? それは、契約書に全てのリスクを盛り込むことは不可能だからです

組織の経済学という学術視点から考えると、Grossman and Hart(1986) や、Dewartripont and Tirol (1994)では、こんなことを指摘しています。契約書に全てのリスクや想定事象を盛り込むことはほぼ不可能であり、さらにはその事象がどう起きたのかを立証するのにも莫大なコストがかかりうる。だからこそ、何かが起きた際には出資側と出資される側では所有権の比率が重要である。つまり、所有権は契約に盛り込めないような状況に備えるものであると言っているんですね。

出資側と出資受け入れ側には、この手のはつきものであり、契約は常に不完備なものということを、この経済ニュースから抑えたいところです。だから資本構成は有事の時に大事なんですね‥。契約書とは確率を文字にしただけであり、全ての未来の確率を把握するのはできませんからね‥ 

ここまで読んでくださりありがとうございます!

書籍への応援もありがとうございます!こうした事象や重要トピック満載です!

崔真淑(さいますみ )



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