米長期金利3%の読み方

記事中コメントさせて頂いていると同時に、今回のヴェリタス企画で実施された為替座談会の紙面にも参加させて頂いております。面と向かって他の方のご意見を拝聴するのは稀有な機会でもあり、大変勉強になりました(座談会と言いつつ、本当にface to faceで実施されるのは珍しいと思います)。

さて、記事のヘッドラインにもあるように、米10年金利の3%乗せが実現して以降、日米金利差拡大とドル円相場上昇の順相関を持て囃す向きが再び勢いづいています。たかが1週間程度の動きを捉えて「相関が復活した」というのは早計だと思いますが、円金利の悲惨な運用環境を踏まえれば、日米金利差が開いていけばどこかでドル円が上昇する臨界点は訪れるでしょう。そこに異論はありません。問題は米国内物価が大して勢いづいているわけでもない中で名目金利が勢いづいていることをどう評価すべきか、です。

もちろん、今の FRB の正常化プロセスが 実は完全にビハインドザカーブであり、ここ から先、物価が急騰するのであれば米 10 年金利の3%は通過点に過ぎないでしょう。その場 合、米 10 年金利は 3%と言わず、3.5%や 4%を目指すかもしれません。しかし、今の債 券市場が懸念しているのは真逆の現実ではないでしょうか。昨年来見られている米イールドカーブのフラット化傾向は今年に入ってからも続いており、2 月の金利上昇局面で持ち直しが見られたように見えましたが、結局、フラット化の度合いは 3 月に入り 強まってしまいました。要するに、債券市場が FRB について心配しているのはビハインドザカーブでは なくオーバーキルということではないでしょうか。

地区連銀総裁もよく口にするように、過去、米経済の減速ないし後退をイールドカーブのフラット化(究極 的には逆イールド化)以上に正確に予見してきた計数はありません。世界で最も多様かつ多額の資金が 集まる米国債市場が発するアラームに基づけば、先行きに関しては米経済の失速に伴う正常化路線の頓挫、結果としての米金利低下やこれに付随するドル安(そして円高)に身構えておきたいところです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30014120R00C18A5K10100/

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