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令和3年度成長戦略実行計画が閣議決定。働き方関連ではフリーランス政策を含めた「『人』への投資の強化」が明記



こんにちは。弁護士の堀田陽平です。
父の日には1歳5か月の息子からお花をもらいました。

さて、6月18日、令和3年度成長戦略実行計画が閣議決定されました。

成長戦略実行計画は、毎年この時期に閣議決定され(昨年は7月でしたが)、政府全体の政策の方向を示す重要な文書です。
元々は、未来投資会議という会議体で議論されていましたが、今は成長戦略会議という会議体で議論されています。

さて、今回は、令和3年度成長戦略実行計画の総論的な考え方と、働き方に関係する「『人』への投資の強化」についてご紹介します。

付加価値創出による労働生産性の向上

今年の成長戦略においても、昨年度の成長戦略に引き続き「マークアップ率」の議論がなされています。

労働生産性といわれると、これまでは長時間労働是正という観点から、分母であるコストの点に注目されてきたように思います(長時間労働是正は、本来的には多様な働き手の労働参加の目的ではあるのですが)。
しかしながら、昨年度から問題にされているように、日本は米国や欧州に比べるとマークアップ率が低く、これが労働生産性が伸び悩んでいる要因の一つとされています。

「マークアップ率が低い」というのは、要すれば「値付けが低い」ということであり、令和3年度成長戦略実行計画でも「十分な売値が確保できていない」とされています。

そこで、労働生産性の向上のためには、高い値段をとる必要があり、いかにイノベーションを起こし、付加価値をとるかが重要になってきます。

この点の総論的な考え方は、令和2年度成長戦略実行計画に引き続いての議論と言えます。

働き方の関係では「『人』への投資の強化」に注目

さて、次に働き方に関係する記載を見てみましょう。
働き方の関係では、「第5章 『人』への投資の強化」に書かれています。

①フリーランスの保護制度の在り方
ここでは、フリーランスと取引先との取引において、書面等の交付がなされていないことが多いことから、
・「事業者とフリーランスの取引について、書面での契約のルール化など、法制面の措置を検討する。」
・「フリーランスのセーフティーネットについて検討する。」

とされています。

フリーランスとの取引に当たって書面を交付することは、下請法の適用がある場合には、法令上書面交付が義務付けられています。
他方で、独占禁止法上は、書面交付が法令上義務付けられているわけではありません。
その意味で、フリーランスガイドラインでは、書面を交付しないことは「独占禁止法上不適切」としています。

今後、下請法の適用のない取引についても法令上書面の交付を義務付けるか否かが検討されるものと思われます。

なお、フリーランスと労働者性については、以下の私の記事もご覧ください。

②テレワークの定着に向けた取組み
次に、テレワークの定着のため、テレワークガイドラインの周知を図る旨が書かれています。
厚労省は、昨年度末、良質なテレワークの定着のため、テレワークガイドラインを改定しました。

本日から緊急事態宣言が解除され、ワクチン接種も急速に進む中で、テレワークの実施をやめる企業もみられるところかと思います。
しかし、テレワークは、新型コロナウイルス感染症感染拡大とは関係なく、多様な人材の活躍のために恒常的な仕組みとして定着させていくべきでしょう。

③兼業・副業の解禁や短時間正社員の導入促進等新しい働き方の実現
次に、兼業・副業のさらなる推進が掲げられています。
兼業・副業については、昨年の9月にガイドラインの改定が行われています。

私はよく、兼業・副業について相談を受けますが、印象としては、まだ「兼業・副業が原則として従業員の自由である」という法律上の考え方が定着していないように思われます。
しかし、兼業・副業を実施する人は増えており、今後は、「兼業・副業は禁止」というスタンスから転換できるかがポイントとなるでしょう。

④女性・外国人・中途採用者の登用などの多様性の推進
そして、私が本質的に最も重要であると考えているのが、この項目です。
ここでは、次のように書かれています。
「日本企業の成長力を一層強化するため、女性、外国人、中途採用者が活躍できるよう、多様性を包摂する組織への変革を促す。」

この「多様性を包摂する組織への変革」ということには、まず、人口減少局面に入っている日本において、多様な人材の労働参加を促すという「量」の観点があります。
ただ、より重要であるのは、「多様な人材の活躍によるイノベーションの創出」という「質」の意味でしょう。
このことは、冒頭述べた点にも通じてきます。

こうした多様性の推進は、先日公表されたコーポレートガバナンス・コードにも明記されました。

そして、このガバナンスコードの人材に関する記載に強く影響を与えているのが、私がいた経産省産業人材政策課(当時は「室」)の、人材版伊藤レポートです。

この人材版伊藤レポートは、私も経産省産業人材政策室(当時)時代に、策定に関わっています(実は、英語版には私の名前が書いてあります。)。

これまでの施策を実行・定着させるフェーズ

さて、今回の成長戦略実行計画中の働き方の文脈を見てみると、基本的には、昨年度に行われてきた施策を実行・定着していく姿勢が表れているといえるでしょう。

私も、、フリーランスの活躍、テレワーク、兼業・副業、組織の変革等について、色々書いていきますので、今後も是非ご覧いただければと思います。

特に、今後は、ガバナンス・コードの改定もあったので、私も策定に関わった人材版伊藤レポートの問題意識、内容について積極的に書いていきます。


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