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5Gで激変する職場環境と躍進する人材の特徴は?

 2020年からの実用化が計画されている「5G(第5世代移動通信システム)」では、4Gよりも100倍近く高速な10Gbpsを超える通信が可能になる。それに伴い、様々な機械を遠隔から操作したり、人工知能とIoTを連携させた無人システムも現実的なものになってくる。そこに向けては、日本の企業も5G関連の新規事業を計画する動きが慌ただしくなっている。

5Gは一般消費者向けサービスに加えて、遠隔医療や自動運転など様々な産業分野への応用が期待されている。新たな分野のサービスを開発するには、企業や自治体などとの協業が欠かせない。ドコモは18年から企業や自治体などと共同で5Gを使った新サービス開発の取り組みを本格的に開始。現在は約2300社の企業や自治体が参画するまで広がっている。

5Gの普及は、工場やオフィスなど職場の環境も大きく変革することが予測されている。たとえば、5Gは通信の遅延時間が大幅に改善されるため、製造業の設備もリモートで管理することが可能になり、工場内に常時勤務している必要性は薄れて、「在宅勤務」のような柔軟性の高い働き方も選択できるようになりそうだ。

その一方で、労働者は職場を離れていてもオンラインで連絡が取りやすくなるため、今よりも大きなデジタルストレスを抱えたり、新テクノロジーに対応できない人材が増える問題も指摘されている。ドイツの連邦労働社会省では、これからの労働市場を4.0化していく上で課題となるテーマを「Arbeiten 4.0(英語:Work4.0)」として、2016年に200ページを超える白書を公開している。

Work4.0の中では、デジタル化される製造業の現場でも、良質な労働環境を維持するためのポイントが指摘されている。まず前提となるのは、労働者は職務内容の大幅な変化に対応していくための「生涯学習」が重要になることである。これは、「社内研修」の枠組みだけでは対応できないため、社員の自発的な学習意欲を高められる教育プログラムや、トレーニング方法の開発が求められる。

ネットワーク化された製造現場では、他社との情報共有も加速するため、期間を限定したプロジェクト単位の仕事も増える。それに伴い、エンジニアの世界でも“社員”の立場から離れたフリーランス化が進むとみられている。彼らにとっても、不利にならない労働法規の改正や、社会保障の整備は、国が主導して行うべき課題といえる。そして最後は、新しい技術に追いつけずに職を失う人に向けて、保険制度を充実させることも、必要な政策として指摘されている。

【ロボット社会と女性の社会進出】

その一方で、5G、IoT、ロボットなどによる変革で、新たな脚光を浴びる労働力もある。それは、これまで職場で男性と対等な立場で扱われてこなかった女性層である。ロボット社会の到来は、女性にとって活躍の機会が増える好機とみられている。

世界経済フォーラム(WEF)が、第4次産業革命が雇用に与える影響を分析したレポート「The Future of Jobs」の中でも、未来の労働力として、女性の社会進出が増えることが予測されている。これには、大きく二つの要因がある。

一つは、家庭用ロボットが普及することで、主婦の家事負担が軽減されて「働ける時間」が増えることである。二つ目は、リモートで在宅勤務ができる仕事が増えたり、体力的に厳しい作業はロボットに任せられるため、男性が主体だった職域でも、女性が働きやすくなることによるものだ。製造業や建設業は、その典型といえる職場で、日本の産業別就業状況をみても、男女比では大きな偏りがある。

企業が、消費者のニーズにマッチした製品やサービスを提供していくためにも、従業員の男女比を均等にしていくことが重要で、それが職場でのジェンダー差別を解消することにも繋がる。女性の管理職比率も、日本では10%未満と低いが、今後は特にSTEM(科学・技術・工学・数学)に強い女性が、社内の重要なポジションに抜擢されることが予測できる。

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