生産性よりも需要回復が重要な日本経済
そもそも生産性というのは、供給側の問題です。
今回のコロナ・ショックで何が起きたかというと、供給能力が下がったわけではなく需要が消失してしまったわけです。このため、経済成長を維持するのに最も重要なことは、いかに需要を戻すかということです。そのために不可欠なのは感染リスクを下げることですから、やはりワクチンや特効薬の普及がカギとなるでしょう。
また、日本経済全体で考えた場合、経済成長率が需要側、全要素生産性を生産性の伸びと考えると、需要側のほうが先に動いているのがわかります。需要が下がると供給側である全要素生産性が遅れて下がり、需要が盛り上がると全要素生産性が遅れて上がっています。
つまり、経済成長率が先行して動き、生産性が遅れて動いているわけです。これは単純な話で、資本ストックというのは設備投資の蓄積ですので、景気がよくならないと設備投資は増えません。つまり、需要が戻ってこないと、生産性を高めるのは難しいということになります。
設備投資だけではなく、労働についてもやはり景気が戻ってこないと人々の働く意欲が湧かないため、供給面のところで労働力化する意欲を削いでしまいます。需要が戻ってくれば、働く意欲が増して労働供給も増えることになります。当然、資本と労働が増えれば生産性も上がってきます。
例えば、供給能力が高い最高技術の駐車場をつくっても、クルマが入ってこなければ生産性は上がりません。このように、経済が正常化するまでは需要が重要なのです。生産性が重要になってくるのは、もっと経済が過熱してきた時です。そういう時に生産性を上げればいいのです。
今は、半ば強制的にリモートワーク等が進んでいます。そこだけを考えれば、移動しなくても仕事ができるということで効率化が進んでいますが、それによって飲食や交通(輸送)・不動産等、さまざまな需要が失われているわけです。
景気が過熱している時に、これらのことが起こるのであれば経済全体にとって望ましくなります。しかし、需要が喪失してしまった今のような状況でリモートによる効率化が進んでしまうと、むしろデフレ圧力を増幅させることにもなりかねないのです。
そういうことを考えると、コロナ・ショックに対していかにニューノーマルな需要刺激策を打ち出せるかが、今後の日本経済の生産性を大きく左右すると思います。
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