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インド人ビジネスパーソンに学ぶ仕事の向上心と年収の高め方

 企業と社員との信頼関係を指数で示した「従業員エンゲージメント」を意識した職場改革を進めることは、日本企業にとっても重要な課題になっている。IBMが世界28ヶ国で100人以上のスタッフで構成される企業を対象に行った調査では、自分がその組織で働くことの「プライド」「満足感」「アドボカシー(支持)」「コミットメント(信頼)」という4項目から、従業員エンゲージメント率を国別に測定しているが、その結果で、日本は最下位となっている。

一方、日本の企業には、年功序列・学歴重視・生え抜き主義の風潮が色濃く残っており、高卒の若手社員、中途採用、非正社員の立場で努力をしても報われない組織構造になっているのが、その理由とみられている。

一方、従業員エンゲージメント率がトップのインドでは、企業と従業員の関係にも、良い意味で「家族第一主義」の文化があり、会社は、従業員の家族に対しても手厚いサポートを約束する一方で、従業員は会社の業績を上げることにコミットする信頼関係が形成されている。

仕事に対する評価と、報酬(給与)の条件についても、対等に話し合うことが認められる企業風土があり、従業員は、スキルを高める努力や投資を惜しまない代わりに、説得力のある報酬や昇進を求めている。そのためインドには、サラリーマンの立場でも、年齢に関係無く成功できるチャンスが豊富にあり、自分が働いている環境(職場)や、仕事に対して、やり甲斐や高いプライドを持っている。

【日本と異なるインド・オフィス内の習慣】

インドの大手企業で働く人材は、英語が堪能なことと、ITのスキルに長けているのが特徴。インドの教育制度では、日本の大学新卒(22~23歳)にあたる年齢で、既にMBAを取得している若者が多いため、日本人にとって「インドの同僚」は、自分よりも年下でありながら、高学歴者であることを意識しておくことが、彼らへ敬意を示すことになる。

インドの会社は金銭の報酬だけではなく、それ以外の待遇が充実している。オフィスでは、朝食から夕食までが無料で支給されるし、中堅以上の企業になれば、シャワー付きの仮眠室までが完備されている。そのため上昇志向が強い社員は、深夜まで残業をしてスキルアップに励んでいる。

また、役員や管理職だけでなく、一般の社員にも“お手伝いさん(雑用係)”が付くのがインドの特徴で、たとえば、コピーを取るとか、コーヒーを入れる、といった雑用を社員自らがやることはない。インドで中流以上の家庭は、子どもの頃からお手伝いさんを使うことに慣れているため、それが“当たり前”のことであり、彼らに指示を出すときの態度も、威圧的であったり、逆に申し訳ないという気持ちでもなく、じつにスマートな対応をしている。

こうした背景には、いまでもインド社会にカースト制度が根付いていることがあり、職場においても、身分制度は普通に定着している。これが良い悪いということではなく、古くからの習慣であることだと理解しておくことで、インドの職場で起こる様々な状況に納得がいくようになる。ちなみに、企業で働く雑用係の月給は数千円~1万円だが、10億人以上がいるインドでは、こうした仕事が大多数の生活を支えているのだ。

【インド人ビジネスパーソンの向上心】

同僚や取引相手との付き合い方について、日本で常識的に行われている「飲み会」は、インドではほとんど見られない。インドには、もともと飲酒の習慣が無く、宗教上の理由から肉も食べないため、飲食の席を設けてビジネスの話をすることは少ないのだ。

その代わりに、仕事の時間内で徹底的に話し合う機会を持つことが大切なのだが、相手にとって「お前の話は得にならない」と判断されると、時間を作ってもらえないほどドライな面を持っている。それでも諦めずに、積極的なアプローチをしていくことが、インド流の商談といえる。

社内の人間関係にしても、「自分のキャリアをアップさせる=(年収を上げること)」にストレートであり、数年後にはもっと大きな会社に転職し、先進国に赴任させてもらって、そこで移住することが、有能なインド人ビジネスパーソンが目指すキャリアラインになっている。

そのため、いまのチームで手掛けているプロジェクトに打ち込んでいるように見えていた同僚が、ライバル会社にヘッドハンティングされて、退社していくことは日常茶飯事に起きている。その意味では、上司が「彼はずっと働いてくれるだろう」と期待することは禁物で、社内のノウハウや機密情報の漏洩対策も周到にしておく必要がある。現状よりも良いオファーに飛びつくのは普通のことで、部下を従えている上司の立場でも、米国で好条件の仕事が見つかったので辞めるという話は珍しくない。

インド人には、米国信仰の強い者が多いが、同時に「アメリカ人は話すのが好きだけれど、中身が無い」と、米国の特徴を指摘する厳しさもある。一方、日本人に対しては、「しっかり考えてから話す」と評されており、それを活かして、日本語だと曖昧になりがちな話の結末を、意識して「結論」から話すようにすると、彼らからの支持を受けやすくなる。

いまの日本人が身につけている常識やマナーは、日本国内では通用するものの、すべての世界において標準となっているわけでない。上司や取引先との人間関係でも、何が正しくて、何が間違っているのかは、国によって解釈や価値観が様々だ。日本の職場に、どこか違和感やストレスを抱いている人は、国内の枠を一度外れたところから自分を見つめ直すことで、埋もれていた個性や可能性を発見することができるかもしれない。

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