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世界消費者権利デー特番2021。中国の国内外企業は戦々恐々

日産のインフィニティが中国でバッシングされたとの記事は見ましたか?

今回報道があった3月15日は関係者にとっては特別な日なのですが、皆さんご存知ですか?

日本ではあまり普及しなかったですが、3月15日は世界消費者権利の日です。Wikipediaによると

この記念日は、1962年3月15日にアメリカ合衆国大統領であったジョン・F・ケネディが「消費者の利益の保護に関するアメリカ合衆国連邦議会への特別教書」 を発表したことに由来し 、国際消費者機構が世界の消費者運動を祝福し連帯する記念日とした 。

そして中国の中央テレビ局では1991年から毎年、この日にスペシャル生中継番組を放送しています。消費者の権利を侵害する様々な出来事について調査報道を行ってこの特番で明かすのが恒例。小さい工場から大きいグローバル企業まで幅広く扱っていて、かつ影響力がとても大きいため、毎年3月15日は大手企業の広報や政府の市場管理監督部門までもが特番の放送でヒリヒリしています。

ということで、このnoteでは今年の特番で扱われた消費者権利侵害の事例を共有します。今中国で問題になっていることや管理監督部門が注目している問題を知ることができると思います。

■KOHLERやBMWなどが告知なしに顔認識システムで来店者の情報収集

調査によると、KOHLER(アメリカのバス・キッチン用品)やBMW、Max Maraなどの企業が全国複数の店舗で顔認識機能のある監視カメラで来店者の情報を収集しています。同一人物かも判断されていて、異なる店に入ってもモニターで表示されたIDが同様となります。

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より良いサービスを提供するなどの理由で利用されていると主張するところが多いですが、顔情報や音声情報はパスワードと異なり、簡単に変えられませんので、万が一漏えいがあったら悪用の度合いが高いとも危惧されています。

以前のnoteでこの話題について紹介しました。

今回報道されたサービス提供者の情報では、僕がよく食後の散歩で通う文房具店や雑貨屋、ドリンク屋まで利用していて驚きました。

ネットユーザーからも「同じシステムだから、情報共有をしているでしょう」と判断されています。もしもドリンク屋でお店とトラブルがあって(たとえ少額でも)お店の店員にシステム内で「ケチでクレーマー」とタグ付けされるとします。すると、別の機会に4Sのお店で車を買おうとすれば、店員のモニターでその情報が表示される、良いサービスが期待できない恐れがあります。(逆に良い人は得するかも、それすらも悪用されるかも..)

報道されたKOHLERは3月16日にお詫びの文章をWeiboで公開し、開店前に報道されたカメラを撤去、すぐに撤去できないものは電源オフにしました。また、サービス提供者と一緒に積極的に管理部門の調査に協力すると発表しています。

サービス提供者のウェブに掲載されたお得意先である人気ドリンク屋の「喜茶」も、あくまで防犯上の理由で使っているとしており、データについてはそれ以上の利用は行っていないとコメントしています。

■リクルート大手の智联招聘、前程无忧、猎聘网による履歴書の流出

智联招聘、前程无忧、猎聘网は中国リクルートの三大サイトです。企業側がお金を払えば、指定条件を満たした人材の履歴書を閲覧とダウンロードできます。

その情報を闇業者と悪用していると指摘がありました。架空の会社で企業ユーザーになりお金を払って履歴書データを購入。それをQQのグループチャットで販売し、販売された個人情報満載の履歴書があまたの詐欺など犯罪に利用されるという悪循環ができていると報道されたのです。恐ろしい..

QQのグループチャットによるビジネスは以前のnoteをご参考ください。

その後、三社とも315特番で報道された問題についてお詫びをし、タスクフォースを設立して一緒に効果のある対応策でリクルート業界の情報保護に力を入れると発表しました。

■アンドロイドのスマホOSを軽くするアプリのはずが実際にはユーザーの個人情報をバンバン盗む悪質アプリ

悪質なアプリが誘導広告を使ってスマホリテラシーの低いお年寄りの携帯を狙っている、と複数のアプリが取り上げられました。報道されたアプリはすでに中国の各アンドロイドストアから姿を消しています。(中国ではグーグルのストアはアクセスできないからそれぞれのOS大手が自分のストアを持ってます)

また、監督管理部門も、報道された一つのIT企業について調査を開始しました。

■UC、360検索エンジンによる嘘の広告

中国の広告法を違反する内容が出てきていることが取り上げられました。中国のブラウザで悪質な広告による被害が以前社会問題にまでなっていて、noteで紹介しました。

百度の不祥事が問題視されてから、検索エンジンから出る広告は厳しくチェックされるようになりましたが、今回の調査では、検索エンジンの「UC」や「360検索」の広告代理社が、様々な手段で違法の事業者(例えば正体不明のダイエットや糖尿病の薬、資質不明の病院など)を合法的に広告を出していることがわかったというもの。

報道に対して、当日の深夜にUCと360が、徹底的に広告代理者を検査し、違法行為のあるところの提携中止などの対応策を発表しました。

■河北の羊生産基地

河北の羊生産基地(年間70万匹程度)で一部の企業は赤身剤を使った羊を出荷していると報道されました。中国の動物薬に関する管理条例に違反しているので、それらのお肉は本来は卸市場に入れることはできない。そのため運送者が車を市場の前に駐車してそのまま販売するという方法がとられていて、この状況は10年くらい前からそうでした。

業者は「当地の市場管理部門による検査はしょっちゅうあるが、事前に情報が流れてくるので対応はできる」と言ってました。

15日の夜、農業農村部(農林水産省のこと)がタスクフォースを派遣し、地方の監督管理不届きや違法販売の取り締まりを行い、調査と処理の結果を今後公開するとのこと。

■自動車企業に対する問題指摘

まずはフォード。フォードのいくつかの車種ではギアボックスに不明の水が発生しサビて機能が悪くなるのだそうです。これに対してフォードの修理スタッフは「消費者の不良使用による問題で自腹で修理するしかない」と主張していましたが、実際は車の設計問題だったとのこと。

この報道に対してフォードは、設計に問題のあるギアボックスの無料修理を提供すると発表しました。

そして日産。インフィニティの不良への対応が問題になってます。

インフィニティQX60で頻繁に発生する問題(変な音やアクセルやブレーキの機能喪失など)に対して、保証内では無料のギアボックス交換、保証外では有料(240万程度)のギアボックス交換しか対応してくれないことが取り上げられました。すでに3回ギアボックス交換をしたがまた同じ症状で故障したと主張する車主もいました。

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↑インフィニティでトラブルがある人たちのグループチャット、記者が把握してるだけでも2000人以上

欠陥のある車だと主張し、きちんと対応してくれると強く権利を主張するお客さんだけに口封じの条件付きの保証延長契約を結ぶ対応が行われていたよう、しかも権利主張が強ければ強いほど延長される期間が長くなるということが、アンフェアで不平等だと批判されました。(契約書などの詳細は下のリンクからどうぞ)

日産は1回目の声明では謝罪をして、2回目の声明では、QX60のギアボックスの保証を一律に8年間か20万キロに延長すると発表しました。

ちなみに日産はこれが初めて315特番で報道されたわけではなく、2015年にも取り上げられました。これには周りの研究員が「逆にトヨタが全く問題がないかPR部門がめちゃいい仕事をしてるか」の議論が白熱しています笑。

315調査報道は賛否ありますが、内容は濃密なものが多く見応えがあって面白いです。需要があれば、過去に315特番で報道された日系企業についてはまた書きたいと思います。期待があればハートとフォローしてください!

(参考資料)



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中国情報局@北京オフィス
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