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「#複業でよかったこと」「#複業で困ったこと」

お疲れ様です、uni'que若宮です。お久しぶりの日経COMEMOです。お待たせしました、いや、お待たせし過ぎたかもしれません(定型文)。


実はちょっと本の執筆をしており、なかなか時間が取れずにいるのですが、今回はCOMEMO事務局さんから「複業」というお題をいただき、テーマ的に一家言あるので書きたいと思います。


弊社uni'queは「全員複業」というのをルールにしているスタートアップです。「フルコミット」「スピード勝負」といわれるスタートアップ業界ではかなり異例の経営スタイルを取っています。

それは↓のように弊社は女性がもっと自然に活躍できる社会にしていくことをミッションにしているからなのですが、

要は、「一つの会社にたくさんの時間を捧げた人がえらい」という固定概念をひっくり返そうとしていて、それができるとみんなもっと自然に働いたり、活躍できるようになると考えているのです。


とはいえ、会社として複業を「ルール」にまでしてしまったので、なかなか難しいことも起こります。自身も複業社員として働きつつ、複業企業を経営している立場として、「よかったこと」「困ったこと」を①働く側、②雇う側双方の視点からし書きたいと思います。


#複業してよかったこと

まず、良かったことです。

①働く側として

複業してよかったことはいくつかありますが、働く側としては

1)一つの仕事ではできない経験や出会いができる
2)収入面でリスク分散が図れる
3)広報効果が得られる

などです。

1)一つの仕事ではできない経験や出会いができる
たとえば昨年、複業でこんなプロジェクトに参加していました。

ある焼酎製品のリブランディングを異種混合の複業チームでやる、というお仕事なのですが鹿児島に何度か赴きながら、企画を立てました。プロジェクトを通じて美味しい焼酎や異業種の人との出会い、鹿児島につながりもできました。

そのほかにもアートプロジェクトの企画制作をしてみたり、いろいろと領域を超えたことをやっているのですが、一つの仕事だけでは絶対にできない経験ができ、これまでの自分のスキルを異業種に適用することでスキルの棚卸しにもなりますし、異業種から新たな気づきを得ることもできます。

また一風変わった人脈ができるというのもメリットです。いわゆる「弱い紐帯」とも呼ばれますが、ビジネスの利害関係なく知り合って意気投合する人とは逆に心理的安全性が高く、すぐに仕事につながらなくても一旦なにか一緒にやろうといういう話になればものすごいスピードで話が進みます。

たとえば個人的に大丸松坂屋百貨店やパルコを運営するJ フロントリテイリングさんに社員向けの研修をお願いされたことがあるのですが、

ここで知り合った方をきっかけに自社事業であるYourNailとの提携の案件もたくさん進みました。ビジネスベースでベンチャーが大企業に提携を持ちかけてもなかなか話が進まないものですが、このように別の機会をきっかけに関係値ができていることにはすごくメリットがあります。

2)収入面でリスク分散が図れる
複業といってもプロボノでお手伝いをすることもあるので、必ずしも「年収上がります!」というわけではありません。
なので収入の絶対量があがる、というよりはリスク分散できる、という方がメリットなのです。たとえば僕の場合でいうと、創業期のベンチャーというのは役員報酬は低めに設定するため生活の不安とも戦わないといけません。子供や配偶者がいない若いうちはいいのですが、家庭があると新しいことにチャレンジするのが難しくなります。その時複数の収入源があると綱渡り感がだいぶ軽減されます。あるいは終身雇用が崩れはじめ、いつリストラされるかわからない現代では逆に、一社からしか収入源がないほうが依存度が高く危険、ということもできるかもしれません。

3)広報効果が得られる
やや一時的な効果ですが、いまだ複業は珍しいので変わった働き方をしていると注目されやすくなります。実際僕も、雑誌や新聞、テレビまでたくさんのメディアやイベントなど機会をいただきました。複業はまだまだ注目されるメリットがあります。(将来的には「複業」が注目されなくなるくらい当たり前になるといいな、と思います)


②雇う側として

反対に、経営者として複業人材を活用して経営してみるメリットもたくさんあります。

1)優秀な人材がジョインしてくれる
2)他の仕事とのシナジーが生まれる
3)柔軟に人件費をコントロールできる

1)優秀な人材がジョインしてくれる
これが複業活用の最大のメリットです。
弊社でも小さなベンチャーながら上場企業でプロマネを務めるような優秀なメンバーに入ってもらえています。通常、こういう人材にベンチャーに転職してきてもらうには、待遇面でもそうですし、タイミング的にもかなり時間をかけて口説き続けないと難しいのですが、複業であればジョインの難易度が圧倒的にさがります。当然時間は部分的なわけですが、その能力をすぐに活かしてもらえるのであればむしろ効率的ですし、採用としてもいきなり結婚するのではなくお試し的にはじめられるのでアンマッチも少ないです。

2)他の仕事とのシナジーが生まれる
すでに書いたこととも関連しますが、メンバーが別でやっている仕事で知り合ったつながりから提携や広報露出につながることがあります。(もちろん競合する場合ファイヤーウォールや守秘義務がある前提ですが)それぞれの仕事に双方向的なシナジーが生まれるケースはかなり多いです。
弊社ではママ業と複業をしているメンバーもいますが、ターゲットユーザーとしてサービスに関して実生活に即したアイディアをもらえたり、ママ友に広めてくれたり、といったことも複業のシナジーだと考えています。

3)柔軟に人件費をコントロールできる
複業の場合、時間的にはフルコミットにならないため、ひとりひとりの人件費が抑えられ、いろいろな才能を集められる、というメリットがあります。また(もちろん業務ボリュームによっては雇用関係となる場合もありますが)業務委託契約であれば事業の成長や状況の変化に応じて人的リソースを柔軟に増減できるのもメリットです。(そもそも複業が前提でメンバーに他の収入源があることもこういった柔軟な増減を下支えします)


#複業して困ったこと

一方でもちろん、なかなか難しいことも起こります。

①働く側として

複業の難しさは以下の3点に集約される気がします。

1)時間のコントロールが難しい
2)コミュニケーションがとりづらい
3)周囲からの不満や勘ぐりや妬み

1)時間のコントロールが難しい
やはりなんといってもこれが複業の一番の課題でしょう。
単純に時間が埋まる、というのもあるのですが、実は平常時はある程度マルチタスクにさえ慣れていればいずれできるようになります。
問題は、どれかの仕事で突発的なトラブルが発生した場合です。特に複業を始めた頃は隙間があると仕事をどんどん受けてしまったりするので、「遊び」がなくなっていることが多いのです。そういう状態では一つの仕事がトラブルでスタックすると玉突き的に他の仕事にも影響が出てしまい、死にます。仕事に限らず家庭で問題が起きた時も同様です。複業だからこそ不確実性が上がるためパツパツに仕事を詰めず15%くらいの余裕はもつべきです。


2)コミュニケーションがとりづらい
弊社は全員が複業なので特にですが、仕事の時間が合わないことも多いです。特に大企業との複業の場合、日勤帯に自由に抜けられないことも多く、働く側も雇う側もストレスが溜まりやすくなります。複業を始める際には、本業(という言い方を弊社では極力しないようにしていますが)で会議を詰めすぎず自分の時間をとれるようにするなど、時間が融通が利くようにしておく工夫も大事です。

3)周囲からの不満や勘繰りや妬み
複業はまだ一般的ではないため、複業していない人からみるとよくわからず、周りから不満や妬みが出ることもあります。自分はひとつの仕事を我慢してやってるのにゆるく仕事しやがって、とか他でもうけやがって、とか楽しそうにしやがって、というやつです。単なるやっかみであればそこまで気にする必要はないのですが、「複業で何をやっていてどれくらい忙しいのか」が見えないと余計疑心暗鬼になるため、しっかり自分の成果を伝えるだけでなく、複業でどういういうことをやっているか、複業がどんなメリットを生んでいるか、など複業側の状況をちゃんと共有していくことも大事だと思います。


②雇う側として

一方雇う側からするとマネジメントに難しさがあります。

1)コミュニケーションミスやロスが増える
2)マインドシェアと心理的安全性の確保が難しい
3)バリューがはっきりしていないとお互いつらくなる

1)コミュニケーションミスやロスが増える
複業の場合、コミュニケーションにかけられる時間はどうしても短くなりがちです。チャットなどを駆使すればある程度非同期でもコミュニケーションができますが、どうしてもコミュニケーションのミスやロスが増えます。
弊社では「バンドスタイル」という形をとっていますが、特定の人に決裁権限が集中するピラミッド型や合議制だとコミュニケーションコストが高く、意思決定が遅くなりますから、やりとりを最小限にしつつスピード感をもって仕事が進められるような権限委譲は必須だと考えます。また、その際個々の判断がバラバラにならないように判断基準となる根っこの価値をしっかり共有することも大事です。

2)マインドシェアと心理的安全性の確保が難しい
弊社は全員が複業なので特に難しいのですが、複業では他の仕事が忙しくなったりするとどうしてもマインドシェアが下がったり、メンバー間の心の距離が遠くなってしまい、心理的安全性が下がる、ということが起こります。
個人的にはいまこれがもっとも難しいと思っている点です。slackなどのチャットツールで業務は進むのですが、そういった目的的なコミュニケーションだけのやりとりになるとどうしてもコミュニケーションがビジネスライクになり、仕事以外のことを話す割合が減ります。普通の会社では顔をあわせるので必然的に、ゆるいコミュニケーションが一定程度あるのですが、これが難しいのです。

ソニックガーデンの倉貫さんが雑談こそが心理的安全性のために重要という本を書かれていますが、

まさにそれを実感していており、週に一回議題がなくても「ただ全員がビデオ会議でつながる時間」をつくったり、絶賛実験中です。

3)バリューがはっきりしていないとお互い辛くなる
最後に、これは複業に対する適合度という意味で、バリューがある程度明確な人でないと成果が出ず、本人としても企業の側もつらくなってしまいます。
複業というのは短い時間でバリューを出す必要があるため、経験やバリューは特にないけど頑張ってみます!という人だと成果が出ず必ず辛くなります。ジョインしてもらうことを検討する際には、その人がどういうバリューを出せて会社にどう貢献できるのかをよくよくすり合わせた方がよいです。


複業のリスクは幻想?

また、よく雇う側でデメリットに出されがちな、「労務管理リスク」「セキュリティリスク」「離職リスク」というのは実はさして問題ではないと思っています。

「労務管理リスク」の話を聞くといつも思うのですが、「働くママ」はこれまでもママ業と複業してきたわけで、その労務管理は企業は今まで放置してきたわけです。もちろんセルフマネジメントがより重要にはなりますし、周囲のサポートも大事です。しかしここはちゃんと想像力をもってケアをする気持ちがマネージャーにあれば絶対大丈夫なはずです。(労務管理できないから絶対だめ!という企業はママ業をやるなというのでしょうか)

「セキュリティリスク」については守秘を課すこともできますし、正社員からだって漏れる時には漏れます。辞めたら前職のことをべらべら喋る人もいます。そうならないためには縛るよりもむしろ良好な関係をつくる方が重要でしょう。

「離職リスク」は、むしろ複業を解禁した方が下がります。なぜならやりたいことを他でもやれるのに、わざわざ辞める理由がなくなるからです。むしろ人が転職したり退職したりするのは、「やりたいことができないから」二択を迫られるのです。よく、複業を許さない会社は嫉妬深い彼氏と一緒だ、と言うのですが、他の男とご飯食べにいくのも許さない、と束縛をされればされるほど息苦しくて別れたくなってしまいますよね。


まとめ:複業で心がけること

以上、複業はメリットことばかりではありませんしなかなか難しい点もあります。しかし個人的にはデメリットに見えることも工夫と考え方を転換するとクリアできると実感しています。

まとめとして複業をうまくいかせるためのコツというかポイントをあげたいと思います。

1)個々人のバリューをこれまで以上に意識する。
2)複業を隠さず、むしろ自慢し合う。
3)境界を溶かし、時間に遊びをつくる

1)個々人のバリューをこれまで以上に意識する。
これは働く側も雇う側もですが、その人にどんなバリューがあるのか、というのをこれまで以上にしっかり意識しないといけません。マーケやったことあります、とか〇〇業やってました、とかではなくその人にしか出せないバリューとはなにか、というのをしっかり意識して適材適所組み合わせ、活用していくことが大事です。

2)複業を隠さず、むしろ自慢し合う。
また、働く側でも雇う側でも、複業の一番のメリットは「シナジー」ということにつきます。そしてシナジーは当たり前ですが、見える化されているものの間でしか働きません。会社に内緒で複業している、というケースはかなりありますが、それでは掛け算は生まれませんし、本人としても会社の中で自分らしいバリューを増やす機会を失っていることになります。

弊社はエン・ファクトリーさんをお手本にしているのですが、エンファクさんではむしろ「複業を自慢し合う場」を作っています。そうすると社員がお互いにお互いの複業を知り、また新しい事業のきっかけが生まれるのです。


3)境界を溶かし、時間に遊びをつくる
最後に、やはりなんといっても時間のマネジメントは重要です。
先ほど書いたように、複業では不測の事態が起こる可能性も多いので(小さい爆弾がいっぱいある)、そういった不測の事態を吸収できるよう、そもそも仕事を詰め込みすぎず、時間に余裕をもっておくことが大事です。

いくつも仕事を持っているのにそんな余裕なんかつくれないじゃん、と思う方には「境界を溶かす」という働き方をおすすめします。

Aという仕事とBという仕事を別々に分けていると、すぐにスケジュールのスロットがテトリス状態でパツパツになります。これを徐々に溶かしていくのです。

例えば僕の場合でいうと個人的に受ける講演などは自社の事業の機会にも繋がっていますし、会食やイベントもuni'queのためなのかランサーズのためなのか個人のためなのか、明確に分けることはできません。そんな風に一石三鳥みたいな時間の作り方をすると、1時間で3つの仕事がひとつに圧縮できます。そしてさらに、仕事とプライベートの境界も溶かすこともできるのです。


僕はよく「生きるって複業」といっています。

「複業」をわざわざ始めると考えると大変そうに思えますが、そもそも人はママ業や彼氏業やたくさんの業をパラレルにこなしているのです。そう考えると「複業」の方が「自然」で、一社で一つの仕事しかしない方が「不自然」な働き方のように思えてきませんか。


あ、そうそう。

複業といえば、uni'queという会社が、事業アイディアを持つ女性が複業で起業できる、Yourというインキュベーション事業を開始したらしいですよ。

奥田浩美さん、藤本あゆみさんをお招きしてキックオフイベントもあるらしいです。

新しいことに一歩踏み出す勇気をもらえる時間になると思いますので、複業や起業に興味ある女性はぜひ!


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