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患者エクスペリエンスは向上できるか?

Amazon VS.テック医師 革新の主戦場は医療1995年、厚生白書が「医療はサービス業」と宣言した。医療担当の記者だった私は、病院経営に目覚め、患者の満足度アップやコスwww.nikkei.com

『1995年、厚生白書が「医療はサービス業」と宣言した』とあります。

四半世紀前の宣言から、日本における医療におけるサービス品質は、どの程度向上してきたのでしょうか。

記事の中では「ほとんど変わっていない。医療の本丸での革新は弱い」というコメントが紹介されています。

まず、健康に長生きしたいという願いは、我々の根源的な欲求であり、医療が提供する価値は、比類なく巨大です。

病気を治してもらえるのであれば、たとえ遠く離れた場所であろうと、どれだけの時間が掛かろうと、苦労を乗り越えることを厭わないのが、患者側の心理です。そして、高い専門性を保持し、尊い命を扱っている病院に対して、サービス品質に対して声を上げて要求することは、どうしても憚られます。

また、医療を提供する側にとっても、大きな利益が出ている組織は少なく、余力が限られるため、サービス品質を向上させる必然性が高い状況とは言えません。

一方で、職業には貴賤がないと言われるように、あらゆる仕事が人の役に立つために存在し、競争の中で日々研鑽し、改善を続けているのも事実です。

医療だけが特別扱いされるべきものではなく、昨日よりも今日、今日よりも明日、より便利で快適なエクスペリエンスが提供されるようになっても良いはずです。

海外における先進事例

世界最高の患者向けエクスペリエンスを提供していると言われているのは、米国のメイヨー・クリニックです。

「統合的な医療活動、教育、研究を通じて、毎日、全ての患者に最善の治療を提供する」という使命を掲げながら、「患者のニーズが第一」を価値観として経営がなされています。

また、最近ではインターネット・テクノロジーを活用した新たな挑戦が世界中で開始されています。

その中でも、着目すべきは米国アマゾン・ドット・コムの活動です。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く米国では、医療資源がひっ迫してきており、業務を止めないためには自社で手当てをせざるを得ない状況に追い込まれており、この7月に米5都市に20の医療センターを設け、この地域に住む11万5000人の従業員とその家族を対象に対して、かかりつけ医のような初期診療の提供を開始することを発表しました。

アマゾンはすでに昨年から、従業員向けの医師や看護師がスマートフォンを介して相談にのり、処方箋を出す「アマゾン・ケア」の試験運用を始めていました。

医療分野はデータを蓄積し、AIを活用することで効果および効率を大幅に向上できると言われていますし、アマゾンはAIの分野でも世界の最先端の技術と人材を抱えています。

時価総額が165兆円もある世界最大の企業であるアマゾンは、「全ての産業の顧客志向の水準を高める」と宣言をしていますし、過去にもクラウドサービスなど、自社向けのサービスを外部に展開してきた歴史を持っています。

遠くない未来に、誰でも利用できる最先端のインターネット・テクノロジーを具備した「アマゾン病院」が展開されることは、容易に想像されます。

また、海外ではオンライン診療が加速していて、米国ではコロナ前に23%だったオンライン診療対応の医療機関が、現在は76%にまで増加しているそうです。

中国で最も人気のあるオンライン医療サービスの「平安グッドドクター」は、コロナ禍において、延べ11億人分の利用があったそうです。

各国において、医療を取り巻く環境は異なるため、同列に並べて議論することは難しいのですが、先進的な事例から、我々も学ぶことはできます。

日本の状況とこれから

患者エクスペリエンスを考える出発点として、そもそも病院に行くべきか気軽に相談したいといったニーズがありますし、直接対面しなくても問診だけで十分な状況も少なくありません。

オンライン診療が担える領域は大きいのですが、日本では始まったばかりで、今後の普及は監督官庁や業界団体の胸先三寸にかかっています。

一般論ですが、年齢が高まると新しい事象への適応がしづらくなり、物事に対する保守性が高まることがわかっています。平均年齢の高い日本において、新しい取り組みが敬遠されるのは必然です。

しかし、そんな中でも、挑戦をする若手は常に現れてきます。2015年にオンライン診療が解禁され、日本でも医療ベンチャーが立ち上がってきています。

小児科オンラインでは病院が閉まっている時間帯でも、子どもについて医師に気軽に相談できるサービスを提供し、これまで解決できなかった小さなお子さんを抱える親の不安に正面から向き合っています。

オンライン診療は、一例に過ぎません。AIを含めた技術的な進歩や、エクスペリエンスを向上する考え方や方法論も洗練されてきており、サービス改善に向けてできることは増加しています。

各自が新しい技術や環境に適応するかどうかは自由ですが、最低でも新しい挑戦がつぶされないように、社会全体で応援をしていきたいものです。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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