「最近の若者はプライベート重視?」などという嘘はやめて
タイミーやシェアフルなどスキマバイト系のCMをよく目にする。ちょっとした空き時間に働きたい、または副業として活用したいという需要と人手不足で働き手がほしいという企業側のニーズが合致して、時代にマッチした良いビジネスのように思えるが、私の見立てでは多分この市場は衰退するだろう。
その理由はいちいち書かないが(そうした企業がどうなろうと知ったことではないので)、こうしたスポットワーク市場の拡大にあわせて、大体こんな記事が必ず出るものである。
"「あえて非正規」若者で拡大"というタイトルと「仕事への価値観が変化している」とかいう寝ぼけた教授の言葉を使って、さも現代特有の新しい価値観や働き方かのように印象操作しているが、こういうのは感心しない。
とか書いてあるんだが、いい加減なことをいうなよとホントに思う。大学教授って嘘つきしかいないのかよ。
このなんでもかんでも「最近の若者の価値観の変化」といいたがる奴ほど、何も知らない。そういっておけば「最近若者は…」とみんな思ってくれるから誰からも違うと指摘されないから、楽なんだろう。
若者の仕事の価値観がプライベート充実の方向に変わったというのなら、昔は仕事に邁進する価値観じゃないとならないよね?でもね、そんな事実はないのですよ。
以下のグラフは、日本生産性本部が昭和46年から平成31年までの新入社員の意識について長期継続的調査をしたものだ。残念ながら、令和以降は調査自体を周流してしまったが。
これによれば、仕事の意識として「仕事中心か」「私生活中心か」を聞いているが、確かに直近の平成31年は「私生活中心」が多く、それも右肩あがりにのばしているので、「最近の若者は…」と言いたくなるのかもしれないが、よくよく見てほしい。
昭和46年から平成17年まで一度も「仕事中心」が「私生活中心」を上回ったことはない。要するに、若者(新入社員)は昭和の時代からずっと「私生活中心」なのだ。
最近の若者が「プライベート重視」になったのではなく、若者とは昔からそうなのである。そして、これは昭和に限らず、大正も明治も江戸時代だって変わらない。
江戸時代中期に書かれた「葉隠」にもそんな内容が書いてある。
むしろ、仕事中心が逆転しているのは、平成18年、平成22-26年の間だけ。平成18年とはちょうど就職氷河期が終了したあたり、平成22-26年は悪夢の民主党政権時代で、その間に東日本大震災などもあった頃。
もっとも若者が「私生活重視」の時代は平成4年、1992年を頂点とする前後3年の1989-1995年あたりだ。
バブルが崩壊したとはいえ1990年代前半までは、まだ余韻が残っていたし、バブルの象徴として紹介されるジュリアナ東京も開業は1991年で、全盛期は1992年頃(1994年閉店)。
バブル崩壊が本格的に深刻なものとなったのは、北海道拓殖銀行とか山一證券がつぶれた1997年である。
若者が私生活重視であること自体否定ししないが、この1980年代に割合が増えていることと、令和の今また割合が増えていることとは偶然ではない。
令和においてタイミーのようなスポットワーク的なものがメディアでもてはやされたの同様、1980年代もリクルートを中心に「フリーター」なる生き方が喧伝された。
ほぼ40年前の1985年にリクルートが自社の「フロムエー」にて「フリーター」という言葉を流行らせたわけだが、その頃も「フリーターこそ未来を変える新しい働き方」などともてはやしたものだった。
その挙句、そうした当時の若者は以来40年近く年収300万にも満たない生活となり、厚生年金も納めてないから高齢者になってもほぼ年金もなく、「自由な生き方」どころか「金がないことでの一生の不自由」を背負うことになった。よくよく考えた方がいい。
こういうのに惑わされ人生を狂わせた40年前の若者といたという事実を忘れてはいけない。
「若者の価値観が変わった」などと言っている識者がいたらほぼほとんどそれは間違いである。若者の恋愛離れなんててものはないし、いつの時代も恋愛強者は3割。若者の結婚離れなんてものはないし、いつの時代も結婚に前向きな20-34歳は5割程度。変わらないのである。変わったのは価値観ではなく、環境の方である。
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