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Glossierから学ぶブランドマーケティング

ブランドのケーススタディとしてのGlossierの「失敗」はかなり興味深い。大きなリブランディングもせず、長い間同じ美的世界観を維持しながらも、ビジネスを拡大しなければならないプレッシャーから最人気商品の原材料を変えたり、消費者の意向を取り入れない動きが客層離れにつながっている。

上の動画のdon’t fix it if ain’t broke(壊れていなければ直すな)の通り、balm dotcomというプロダクト自体にに信頼を置いて長年購入していた人からしたら、気づいたら製品の効能が劣化していて、顧客のニーズに応えないブランドの姿勢も問われている。TikTokという、投稿者と視聴者の信頼関係が強く、共感性も高い媒体において商品のネガティブな評価が広まると、すぐにインフルエンスの反対、つまりDeinfluenceされてしまう。

balm dotcomにフォーカスしたマーケティングの視点での動画。結局は投資ファンド的な理由でどんどん拡大しなければならず、より大きなブランド展開とともに原材料を安いものに変えても、ファンだった客が納得いかない理由を使ってあとから説明したことが指摘されている。

カイリー・ジェンナーや美容ユーチューバーがカラフルで手の込んだメイクを披露し、それがインスタグラムの初期と相まって爆発的な人気を得たカウンターとして、Glossierは登場した。さらにはミレニアルピンクの世界観を全面的に取り入れ、Glossierの商品を持っていること、使っていることはある意味「自己ブランディング」にも直結するようなブランドパワーを持っていた。しかしいわゆる「ガールボス」のムーブメントも飽きられ、むしろ批判されるようになり、コロナによるロックダウン後の人々の心と美容にかける余裕の無さやGlossier社内の倫理的な問題が暴露されるようになり、「クリーンでエンパワメントに繋がる」ようなブランドイメージが崩れた。そもそも非常に忠誠的なファンをメインの客層に持っていたブランドだったからこそ、「アイデンティティ」の中核的な部分が流れてしまうと、顧客もまた別のブランドに移行してしまう。

企業家やベンチャー資本などにおける「女性企業家」が置かれている過度な期待値や清廉潔白でなければならないハードルなど、様々なことが記事やTikTokでも議論されている。社員を大切にしなかったり、労働環境が人道的でないことなど、社員の不満も問題の一つとして挙げられる。

今となってはZ世代の間でも定番的な知名度を得ているし、まだ根強いファンも残るGlossierだが、美容業界の戦国時代と言われている中で、今後はどのようなブランディングや商品展開でサバイブしていくのか、大きく注目されている。



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