ブレグジットって本当にできるのだろうか?
ブレグジットが決まってから、EUからの離脱に向けたタイムラインが固まった。それによると、今のところ、2019年3月29日に英国はEU から離脱することになっている。合意なしの離脱に向けた準備は整っていない。議会の大半もそれを望んでいない。EU条約下の諸機関にとって代わる新機関の設立、税関職員の新規雇用、新制度の導入など行われていない。なのに、残すところ半年を切ってしまった。
ではどうするか。
3月29日を更に先送りすることも考えられなくはない。しかし、ブレグジットは法的手続きであり、正式な離脱日の変更には、①リスボン条約第50条の延長、②同条約の打ち切り、③離脱協定が他の日を指定すること、が必要で、ハードルはそれなりに高い。北アイルランド国境問題はまだ解決しておらず、10月中の離脱協定合意は難しいであろう。期日を決めない移行期間を設けるなどのソフトブレグジットが模索されるが、合意なき離脱の可能性もゼロではない。
合意なき離脱となった場合、思わぬ問題が膨れることも見ておきたい。想定元本ベースで最大6000兆円のデリバティブが不安定な状態に置かれ、巨額金融リスクが浮上することが懸念事項として指摘されているが、それも問題の一つ。英国政府はEU在住の決済機関が提供する決済サービスを英国の顧客が利用し続けることが可能なように法制化を進めており、離脱より前に議会が承認する必要がある。一方EU法においては、2019年3月以降にEU在住の決済参加者が英国の中央決済機関の決済サービスを用いると違法とみなされる。こうしたことから、EUの決済参加者が既存の契約について、現行の義務を遂行し続けるかどうか法的に不透明になる、というわけだ。EU当局が既存の契約を維持するようなスキームで合意しないのであれば、既存契約を解消するか、移管するかが必要で、いずれにせよ、コストがかかることになる。
ブレグジットまで日程が乏しく、求心力のないメイ首相では難しい交渉を合意に持っていくのは至難の業だが、そんなことはずっとわかっていたこと。いよいよ秒読み段階に入ってきて、ブレグジットの行方が混とんとしてきた。最後は、実務間合意に落ち着くなど、軟着陸がメインシナリオとなるという大方の期待が裏切られないことを願うのみ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36318600Q8A011C1FF1000/
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