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わいせつ教員を、教育現場から半永久的にキックアウトできる法案が成立……!日本版DBSの実現に、突破口が開いた


またひとつ、社会が変わりました。

2021年5月28日、参議院本会議で、「教員による児童生徒性暴力防止法案」が全会一致で可決!法案は成立しました……!!!

生徒児童に対してどんな卑劣な性犯罪を犯した教員であっても、たったの3年で復職可能という意味不明の現状が、この法案で、わいせつ教員の復職(免許再交付)を、都道府県教育委員会の判断で拒めるようになりました。

対象は、小中高校や幼稚園、認定こども園、そして、特別支援学校です。

そして、「児童生徒性暴力等」による免許失効者の氏名や処分理由を登録する全国共通のデータベースを整備することも、法案に明記されています。

この法律で、多くの子どもたちが、卑劣な性暴力から守られるようになるはずです。

今国会での成立は難しと言われていましたが、まさかのスピード感で成立。関係議員・スタッフ各位には、感謝してもしきれません。

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ただし、これで「万事めでたしめでたし」というわけにはいきません。

子どもたちを守るため、必要不可欠なことがあります。それは、資格・業界を問わず、すべての子どもに関わる職種に対する、横串をさした規制です。具体的には、子どもと関わるあらゆる仕事に就くのに、過去に性犯罪を犯していないことを証明する「無犯罪証明書」の提出を就業者に義務付けるものです。私たち認定NPO法人フローレンスは、これを「日本版DBS」として、これを実現するよう、政府に対して働きかけてきました。

理由は、2つあります。

まず、今回の法案が対象しているのは、冒頭にご報告した通り、「教育現場」です。しかし、非常に残念ながら、昨年に発生したキッズラインショックをはじめ、子どもに対する性犯罪は教育現場以外でも頻発しています。ここを放置していいわけがありません。最近では、あろうことか、児童相談所の職員が一時保護した少女に対してわいせつ行為を行なったとして、逮捕される事件がありました。虐待を受け、ようやく保護されたと思ったら、そこで性被害を受けるなんて……。地獄というのは、あの世ではなく、この世にあるものだと痛感しました。

もうひとつ。小児性犯罪者は、成人を対象とした性犯罪者と比較して、常習性・再犯性が著しく高いことで知られています。つまり、わいせつ教員を教育現場から完全にキックアウトできたとしても、他の子どもと関わる職場に転職できてしまうのです。実際に、その事例に直面し、愕然としました。

繰り返しになりますが、大切な子どもたちを、卑劣な性犯罪から守るために必要なのは、子どもと関わる職種すべてを対象とした規制です。どこの現場であれ、性犯罪を犯した者は二度と子どもたちと関わる仕事に就けないようにする必要があります。日本版DBSに実現が、絶対に、必要です。

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しかし実は、今回成立した「教員による児童生徒性暴力防止法案」は、日本大学の末冨芳教授がおっしゃる通り、日本版DBSの「突破口法案」ともいうべきものなのです……!!

成立した法案をみてみると、最後に「附則」というのがあります。下画像がそれです。

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要は「この法案を突破口として、日本版DBSを検討せよ」と書いてあります。

この法案を成立させるにあたり、中心的な役割を担ってくださったのが与党わいせつ教員根絶立法検討ワーキングチーム(WT)ですが、関係議員各位、口を揃えて、「これは、はじまりだ」とおっしゃっています。誰も、これで終わりだと考えていません。その先にある、日本版DBSを見据えてくださっています。

実は私、このWTに参加させていただき、日本版DBSの必要性にいついて、講演をさせていただいていました。その内容をしっかり汲み取っていただき、感無量です。

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なお、単に法案の附則に書いてあるから「日本版DBSの突破口法案だ!」なんて騒いでいるわけではありません。この法案(というより、もう成立したので法律ですね!)を実際に現場で運用するにあたり、これから検討を重ねないといけないことは、そっくりそのまま日本版DBSにも当てはまるのです。

例えば、先述の通り、この法律でわいせつ教員の復職(免許再交付)を、都道府県教育委員会の判断で拒めるようになりました。しかし、その「判断」とは、具体的にどのように、何を基準に行われるのか。それは、まさにこれから詰めていくところです。

本来であれば、生徒児童に対してわいせつ行為を行なった加害者は半永久的に子どもと関わる職場では働いてほしくないですし(子どもと関わらない社会復帰は全力で応援したい)、実際にDBSや類似の制度を持つ諸外国ではそのようになっています。

しかし、日本には憲法が保証する「職業選択の自由」の影響が極めて強く、また、禁錮以上の刑を終えて10年たてば刑が消滅する刑法の規定との整合性をどのようにとるのか、まだ議論が整理されきっていません。よって、折衷案として、法律にある通り、教育委員会が個別に判断することになりました。

おそらく、日本版DBSでも同じような法論理が(少なくとも最初は)適用される可能性が高いですし、だとすると、直面する課題も同じです。

つまり、まず教育現場で、この法律が適切に運用され、実績が示されるのであれば、他の職種・業界でやれない理由はありません。じゃあ、他の職種にも広げていこうぜ!となります。

現場の教育委員会の皆様には、是非、子どもたちを守るために、建設的な議論と実践を積み重ねていただきたいです。そして、来るべき日本版DBS実現の際には、そのナレッジがしっかり共有されることを心から望みます。

そして、本稿を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます。日本版DBSの実現は、私たち国民が本件にどれだけ関心を持ち続けるかにかかっています。引き続き、状況を注視していただけると嬉しいです!

私も、微力ながら引き続き全力で行きます🔥


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