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感覚刺激のシミュレートと解釈のアウトソース ドライビングシミュレーター・能楽・調理


ドライビングゲームの進化

FORMULA1 VIDEO GAME EVOLUTION(1979-2023)という動画を見ると、懐かしさと共に、乗り物シミュレーター系ゲームの発展に目を見張ります。俯瞰視点から主観視点への切り替えは、何よりも大きな変化でした。

リアルとリアリティ

以前、フェラーリのドライビングシミュレーター等の開発も行っていた某社のゲームクリエイターの方から、次のような話を聞いたことがあります。

「F1ドライバーも使うようなドライビングシミュレーターは、リアルさの追求が大切。しかし、ゲームセンター等に設置するドライビングゲームは、リアルなものでは難しすぎて面白さを提供できない。だから、ゲームは、リアルではなく、リアリティが大切」

感覚刺激のシミュレート

シミュレートするのは、ドライビングそのものではなく、ドライビングによって得られる面白さの方。体感できる感覚のシミュレートなのだと思うのです。

もちろん、ここでいう「ドライビング」という一言には、さまざまな要素が含まれており、一つの要素ではないと思います。車の操作そのもの、流れる景色、操作に対応する音の変化、ドライバーになり切る感覚、等々。

リアルに近い臨場感で有名なドライビングゲームのプレイヤーが、サーキットで実車に乗車した際のコメントが次の通り。

「流れる景色の速さ、ハンドルから伝わる衝撃がゲームとは全然違う。エンジンやタイヤの音もいい」

能楽の構成

以前、能楽を普及するNPO活動に携わっていたことがあります。今から20年ほど前のことです。当時としては世界初の試みとして、テクノミュージックとのコラボレーションや、UAEでの海外公演などにも挑戦していました。

その際に、どこまで削ぎ落とすことができるか、ということで議論を重ねました。

能楽は、シテ(主役)、ワキ、ワキツレ、囃子方(太鼓方、大鼓方、小鼓方、笛方)、地謡(6〜12人)がフルセットです。これだけの人数での公演となると、大所帯となってしまいます。その構成を、どこまで絞り込んでいけるか。能楽のエッセンスを残しつつ、最少人数でフレキシブルに実験的な活動を行えないか。

エンターテインメントが提供する価値を実現するための最小パッケージ。そのために削ぎ落としていく行為。能楽自体も削ぎ落とし研ぎ澄まされた芸能ではありますが、目的によっては、さらに削ぎ落としていくことができるのだと思います。

食べやすく整える

冒頭のドライビングゲームが提供する「ドライビングの楽しさ」の実現が成立するギリギリのラインは、どこなのか。

ゲームは、リアルな世界に存在する様々な感覚刺激をエッセンスとして抽出し、増幅し、誰もが得やすい形で提供してくれるものかもしれません。

それは、食材を調理し、食べやすくしてくれることと似ているようにも思えました。

生肉を食べると、消化にエネルギーが必要になるため、野生動物の多くは食後に長い消化休息時間が必要です。人間は、火を使って調理することで、消化の一部を体外にアウトソースし、食後の消化時間を短く、エネルギー効率を高めて、活動時間を多く確保できるようになりました。

これらには、どこかで通ずるものがあるような気がしました。

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